転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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221 推しと訪問の理由

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「なるほど。まずはラッカルヘ向かうのですね。それからスノラリアと。スノラリアでしたら我が母の故郷ですので、そちらの伝手も頼りたいと」

テオに頼まれて周りに結界を張ると、そこまで言って良いのかと不安になる程、テオはゼラン伯爵達に話をした。

バランモス公爵家の長子の事もね。

テオの従者であるケンとユウリ、俺の執事であるサーディンも、中で待機して貰っている。

彼らに聞かれて困る話では無いとの判断だ。

「そう言う訳だ。私自身、あちらからの輿入れを断っている手前、中々行き辛さもある」

「それについて殿下に非は無いでしょうに。そうですね、そちらについてもこちらの伝手を使いましょう」

取り敢えず聞き役に徹していて分かった事は、ゼラン伯爵はかなりやり手っぽいなと言う事だ。

元々寂れていたゼランを冒険者の街にした前当主から継いで、冒険者用の休憩所を増やしたりと更に手を広めたのだから、やり手ではあったのだろうけど。

聞けば、母親はスノラリアの前の代の王女が降下した公爵家出身なんだとか。

つまり、前王の兄弟って事は、ゼラン伯爵は今の王太子達のはとこって事だ。

なぜ田舎の伯爵家にと思ったら、どうやら前当主はテオの様に冒険者をしており、その時に出会って恋に落ちたと。

スノラリアではその時の話がロマンチックに語られているそうで、もしやテオに懸想した王女様も、その話に憧れてたのではと想像してしまう。

「母の生家は前国王、現国王、次期国王共に深く付き合いがありますし、私の両親は引退後はあちらへ行き来しています。周りとも良い関係を築いておりますから、そちらの伝手を使ってお二人が居心地の悪い思いをしない様に、釘を刺しておきましょう。ラッカルについてはムークを通せば融通は効くでしょうし…」

「そうですね。そもそも皇帝からの手紙もあるでしょうから、悪い扱いはされないと思いますが、念には念を入れた方が良さそうですね。マド公爵と我が兄達へ手紙を書きましょう。…そうですね、贈り物も準備しておきますので、一緒にお願いしてもよろしいですか?」

「ああ、よろしく頼む」

ラッカルにもスノラリアにも、しっかり根回しと準備をして、万全の体制で乗り込むって事だね。

ムークはマド公爵がお忍びで帝都に来る度、手配を手伝っていた事もあり、マド公爵とも強い繋がりがあると言うから驚いた。

それにしても、連携の取れ方が鮮やかでビビる。

何でも三人は昔馴染みで仲が良く、ゼラン伯爵なんてテオより歳上なんだって。

実は次男なんだけど、長男が父親以上に活躍しているS級の冒険者で、領主を次男に頼んだんだって。

長男の所には既に大きな息子がいて、大変優秀で次期当主はその息子が継ぐそうだ。

そのゼラン伯爵も身分を隠して冒険者をしていたそうで、戦友みたいなモノだとテオが説明してくれた。

俺の事はちょーっと置いてきぼりだけど、その都度説明してくれるから安心して事の成り行きを任しておく。

やっぱりテオくらいの立場になると、周りとの協力とか伝手の大切さを良く知っているから、領主になる俺も凄く勉強になるな。

ラッカルでのバランモス公爵の話も理解している様で、本人が害は無いなら好きにさせておけといった状態が今らしい。

ムークはそこらへんも考慮して、俺達が上手く立ち回れるように手配してくれるそうだ。

スノラリアでは、テオに振られた王女様は人気のある方だそうで、今だに独身な事もあり、テオや俺に変に絡んでくる貴族もいるだろうと予想された。

「私の両親にも説明し、殿下達がスノラリアに入る前にあちらで支度をして置いて貰いましょう。ご宿泊するところは、祖父であるツバキ公爵家へ依頼しても?」

「ああ、ツバキ公爵家なら心強い」

ゼラン伯爵はメモにスラスラと予定を立てて行く。

「スノラリアの王家にも進言して貰い、お二人や同行される方々が過ごしやすい所をお願いしておきます。…そうですね。その頃でしたら私にも時間的に余裕があります。お二人や皇室から許可が出ましたら、私も同行致しましょうか?」

「本当か?それならありがたい。許可なら私が出そう。反対される事は無いだろう」

「そろそろあちらにも顔を出しておきたかったので、丁度良かったです」

ううん、この人仕事が出来るぅ。

サーディンも熱心に話を聞いていて、勉強になったら良いなと感じていた。

一通り話が終わると結界を解いて良いと許可が出る。

コンコンとドアがノックされ、ママルが入って来る。

「話は終わったかしら?先程の従者さんは無事に帰ったわ。お茶のおかわりはいかが?」

「ああ、ありがとうママル。頂くよ」

サッとお茶を出して、ママルはまた受付に戻る。

野次馬も多かったし、冒険者も増えた様だから、忙しそうだ。

さて、と一息ついたところで、ムークが俺を見ている事に気が付く。

「何か?」

「いえ、やはり貴族の方でしたね」

「ええ。いやはや。私は十分隠せていると思い上がっていました。恥ずかしいです」

俺が苦笑しながら言うと、とんでもないとムークは笑う。

この豪快な男が、ラッカルの高位貴族出身とは気付きもしなかったからね…。

「それにしても。ギル様。幼い貴方が必死になって探していたモノが見つかり、素晴らしい発見へと繋がったとこちらも耳にしております。まずは、おめでとうございます」

ああ、レッドドラゴンリーフの事か。

俺が薬草ばかり依頼をこなしていた事を、ムークは良く知っているからね。

「そして、ありがとうございます」

その後続けて少し影のある笑顔で、ムークはそう言ったのだった。



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