転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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220 推しと久しぶりの場所へ

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ギルドの前に馬車を停め、テオの従者であるケンとユウリが先に降りる。

そしてテオが降りると、周りから歓声が上がる。

『あの方が?素敵…』

『まさかS級が皇帝の弟君とは…。多くの功績もあると聞くぞ』

『危険な任務も多くこなしてくれていたからな』

ザワザワと集まる野次馬の声を聞きながら、俺はテオの差し出した手を取って馬車から降りる。

『『!!!』』

ふわりと周りに微笑むと、歓声が起きた。

ふっふっふ~。

帰るだけだけど、バチバチに決め込んでおいて良かったぜ。

『美しい…。あの方が、ジャメルの末のご子息?』

『彼もお忍びで冒険者をしていたんだよ。周りとは連まずに、一人で薬草を探していたんだ』

『まぁ、もしかしてレッドドラゴンリーフの事じゃない?他にも沢山の発明をなさってるんでしょ?』

よしよし。

俺の功績をしっかり根回ししてあるから、評判も上々だ。

久しぶりに会うムークは変わらず筋肉隆々で益々渋みが増しており、ママルは相変わらず真っ赤な口紅の似合う迫力美人だ。

「騒がしてすまないな」

「構いませんよ。お久しぶりですテオドール殿下、ギル様。改めまして、ゼラン領ギルド長のムークと、こちらはであるママルです。中で領主がお待ちですので、どうぞ」

妻って言った!?

ママル、遂にムークを落としてた!!

ママルに目を向けると、バチンと音がしそうなくらいキレイなウインクをくれて、ママルは頭を下げる。

「ご案内いたしますわ」

うーんこの感じ懐かしいなと感動しながら、俺とテオはママル達の後について行く。

領主に会うのは初めてかも…。

少し緊張しながら中に入ると、他の冒険者達も暖かく迎えてくれる。

『いやぁ、まさかS級が殿下とは…。あれだけ立場が上だと言うのに、偉ぶりもせず立派な方だよ。』

『どちらも身分を隠していたんだとか。偉そうなだけの貴族様とは大違いだな』

こちらも好意的でホッとしていると、ギルド長室から何やら大きな声が聞こえてくる。

「だーかーらー!!ココとココは冒険者の重要な休憩所なんだって何度言えば良いんだ!?魔物も多く出ると言うのに、貴族の避暑地にって何を考えているんだ!!」

「…ですよね。しかし、あの」

「まーたあのボンボ伯爵んとこのバカ息子だろ!?」

何やら白熱しているな…。

『ゼラン伯爵も大変だな。また休憩所を貴族に差し出せと言って来たんだろう?』

『冒険者の大事な休憩所なのになぁ。それに、休憩所って事はどう言う場所かくらい分からないもんかねぇ?』

おお、このバトルしている方が伯爵なのか。

そう思っていると、ムークは部屋の扉をノックする。

「伯爵!お客様ですよ!!」

そう言って、ムークは返事も聞かずにガチャリとドアを開ける。

んんん乱暴すぎる。

本当にラッカルの公爵家ご出身ですか!?

いや、ギルド長ならこれくらい強くないとダメだろうけど…。

焦りながら中を見ると、クルクルの金髪に大きなメガネを掛けたちんまりとした可愛らしい青年が立ち上がって、椅子に座る青年を詰めていた。

椅子に座っているのは大きな体ながら気が弱そうに恐縮した男性で、こちらを見て驚いている。

「ん?て、テオドール殿下!出迎えもせずに申し訳ございません!!」

こちらに気が付いたゼラン伯爵っぽい青年が、サッと頭を下げ、座っていた男性も慌てて立ち上がり頭を下げた。

「ああ、良い。気にしないでくれ。久しぶりだなゼラン伯爵。何やら揉めていた様だが?」

テオの言葉に、やはりこの可愛らしい青年が伯爵かと、顔には出さず驚く。

俺が冒険者の時も、彼が伯爵だっただろうから年上なのだろうけれど、とても幼く見えて可愛らしい。

「ええ、そうなんです。隣の隣のボンボ伯爵家から、冒険者用の休憩所を貴族の避暑地に出来ないかと要請が来ておりまして…」

「休憩所をか?避暑地に利用出来るような立地でも無いだろう?うむ。私からもボンボ伯爵に苦言を呈しておこう。ユウリ、この者に私からの手紙を持たせてくれ」

テオにそう言われ、ユウリはすぐに手配を始める。

こう言う時の文書作成も、大抵は従者がやってくれるんだよね。

「ありがとうございます!ほら、今日はその手紙を持って帰って伯爵に伝えておいてくれ」

「こちらでお待ちください」

「は、はい…失礼致しました」

ゼラン伯爵に促され、ケンに誘導されて、ボンボ伯爵家の使者らしき男性は部屋から出ていく。

多分彼も、無理難題を言っているのは自分の雇い主だと分かっているのだろう。

終始申し訳なさそうにしていた。

「ふう。ああ、失礼しました。汚い所ですがどうぞお掛けください」

「汚いは無いでしょうよ」

「ママル殿がキレイにしてくれなければ十分汚いだろうが!」

ゼラン伯爵とムークのやり取りを見ながら、俺とテオは苦笑しつつ席に座る。

ムークってラッカルの公爵家だから、ゼラン伯爵より立場は上なんだろうけれど、ココではそんな事気にしていないみたいだね。

「騒がしくてごめんなさいね。粗茶ですけど」

「ママルの入れるお茶はいつも美味しいですよ」

「あら、嬉しいですわ」

お茶を出したママルはそのまま受付に呼ばれ、俺達は改めて一息付いた。

「さて、テオドール殿下。お隣の方のご紹介をお願い致します」

そう言って、ゼラン伯爵が切り出してくれる。

「ああ、そうだ。私の婚約者であり、時期レモルト公爵のギルだ」

「初めましてゼラン伯爵。ギル・ジャメルです」

「初めまして。タム・ゼランです。こちらでは領主を務めております」

義務的な簡単な挨拶を済ませると、それでは本題ですねとゼランが切り出す。

「それで、今回はどういった要件で?」

おお、話が早い。

そう思い感動していると、テオは苦笑しながらも話を始めた。




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