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217 推しと帝国での別れの挨拶
しおりを挟む「さて、そろそろレモルトへ向かおうか」
「うん!長らくお世話になったね。準備もそろそろ終わりそうかな」
お世話をしてくれたメイド達にも礼を告げている間に、俺の執事であるサーディンもテキパキと荷造りを終えていた。
結局、サーディンが父様達の養子になる話は無くなった。
それでも、レモルトで俺に仕える事は続けてくれる。
父親であるオレント伯爵は長男のアルバスに爵位を譲り、こちらもレモルトに来てくれるそうだ。
ゆっくりと静養し、サーディンの近くで暮らすそうで、サーディンが喜んでいた。
魔力も高いから、落ち着いたらレモルトで開こうと考えている民間用の学校の魔術師の先生にならないかと誘ったら、良いリハビリになりそうだと周りも賛成してくれた。
ちなみに、冒険者のドンガルバにも騎士の指導を頼んである。
息子のゲールもレモルトに拠点を移すみたいだし、サーディンとの仲がグッと近付いてくれたらと期待している。
サーディンが兄弟になる夢は消えたけど、能力の高い人間がレモルトに来てくれるなら、ラッキーだもんね。
「テオドール殿下。ご出発前にお茶でもとバランモス公爵が申しております」
後は何かと考えていたら、一人の従者がやって来る。
「ああ、叔父上にも挨拶をしておきたかったんだ。ギル、良いだろうか?」
「ええ、もちろん」
笑顔で答え、サーディン達に荷物の運び出しを頼んでから、テオと共に従者について行くと、立ち入った事の無い場所へ案内される。
城自体が広いし、立ち入り禁止エリアもあるけど、こちらは皇族関係者のみが利用できる場所らしい。
「わぁ…。とても素敵な庭だね」
美しい細工の施された扉が開かれると、そこは庭に面した長い廊下で、これまた庭が美しい。
魔術で咲かせているのだろうか、色とりどりの花が美しく咲き乱れていた。
「ああ、こちらも私の母が気に入っていた場所だ。数十種類の花々が咲いている。…後でゆっくり見て回ろうか」
「うん。あの大きな花弁の花は初めて見たなぁ」
帝国だもの、色んな種類があって良いなと、テオと話しながら草花を美しく絡ませたパーゴラを進み、これまた美しいガゼボが現れる。
大きな公園にある、あの休憩所みたいなモノだね。
真っ白で柱にも細工が施されており、大きさから中にテーブルが四つは置けそうだ。
今日は真ん中に白いテーブルが設置され、白を基調とした椅子が三つ準備されていた。
その一つに、バランモス公爵が腰掛けている。
「叔父上、お待たせいたしました」
「ああ、良く来てくれたね」
挨拶を済ませ、席に着くと、昨日はありがとうと礼を言われる。
「この立場になると、二人きりでの会話と言うのも難しくてな」
さらりと流されるが、結構な極秘会談でしたよねとは言えない。
テオと俺を信用してくれているから同席を頼んだ訳で、それを裏切る訳にはいかないしな。
「君達のレモルトでの挙式だが、私とカルパ達も出席したいと考えているのだが」
「本当ですか?参加して頂けるなら嬉しいです」
おお、これまた凄い方々が参加してくれるな。
俺も喜んでと返事を返しておく。
失礼な話だけど、参加者によって結婚式に箔が付くのはいつの時代もあるからね。
現皇帝と、前皇帝弟の参加はそれはそれは凄い事だもの。
「私達だけでなく、皇帝が向かうのだからそれなりの者達の参加も決まるだろう。ゼンドラル公爵も参加するだろうが、宿泊施設は大丈夫なのだろうか」
「ご安心ください。温泉をメインにした宿の建設も既に終えております。貴族向けと平民向けに分けておりますから、安全面でも問題はありません。私達の結婚式を皮切りに、貴族へのアピールにも利用できると考えております」
「そうか。噂で聞いていたが、ギル殿の提案なのだろう?平民向けは既に動いていると聞いている。とても好評だと耳に入っているよ」
おお、流石に公爵様。
今日のお茶会は、昨日の釘刺しと帝国を離れる甥っ子への激励って感じなのかな。
帝国を離れるとは言え、テオの立場は皇子だものね。
下手に評判を下げる行為は、許されないのだろう。
「ありがとうございます。元々は領民が楽しんでいた場所を開拓いたしましたので、宿泊用と普段使い用と用途を別にして準備した所、とても好評を頂きました。今までの旅行の殆どが、遊びや観光といったモノが目玉でしたが、レモルトは平民にも静養といった形の旅行の流行を作りたいと考えております」
「ほう、静養…」
花見や海水浴、湖水浴など平民が楽しむ旅行は、その場所で遊んだり体験したりが多い。
遊び疲れて、近くの雑魚寝の様な施設か安い宿屋で仮眠をとって、帰路に着くって言うのが殆どなんだ。
お金に余裕があったら、宿屋に泊まる感じ。
行き来は殆どが乗合馬車で、安いと狭いし揺れが酷い。
余裕があると馬車を借りてって感じ。
往来だけで疲れるんだよね。
「もちろん遊技場や小さいですが、劇場も準備しました。あまり歩き回らずに楽しめて、宿でゆったり温泉を楽しむスタイルを広げようと思いまして。非日常的な所でゆったり体を癒す旅も良いのではと」
前世の記憶だとレジャー施設やアクテビティが主な旅行もそれはそれで人気だったけど、お金に余裕が出て来たら、ゆったり休みたいって旅行も人気だったんだよね。
「トーレ側には余裕のある乗合馬車を用意しておりますので、後々帝国側にも乗合馬車を出せたらと考えております」
もちろん交通手段も考えておりますよ、とアピールすると、バランモス公爵は大変驚いて褒めてくれる。
「テオドール。君は結婚をしないと決めていたのかと思ったが…。素晴らしい方と出会えたな」
「ありがとうございます」
うふふふ~。
出来るお嫁さんですわよ!!
美味しいお茶とお菓子を堪能しながら、バランモス公爵は、実はと話し始める。
おっと、ここからが本題だろうか?
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