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216 推しと帝国でのデート②
しおりを挟む「わ、このキャンディー、面白いね!」
「こちらも最新のモノだそうだ」
テオと入店したカフェは、上客用に用意された個室がいくつもあり、貴族御用達と言った感じた。
質の良いソファとテーブルが用意されていて、護衛達が待機するスペースまで設けられている。
ハレは断ったが、テオが皆に休憩を取る様にとそちらにもお茶やお菓子を用意させていた。
まぁ、俺とテオなら、護衛なんていらないんだけど、建前上は必要だもんねぇ。
美味しいお茶と共に出された焼き菓子は香ばしく、キャンディーは小粒で虹色に輝いており、口に含んだらパチパチと弾ける。
「失礼致します。こちらのキャンディーは様々な色がございまして、今回はストロベリーになっております。口の中で弾ける為人気です。そして、こちらは当店開店時から人気のミルクアイスです。テオドール殿下のお気に入りなんですよ」
「…昔からこちらの冷菓が献上されていたからな」
店主がにこやかにアイスを持って来て、説明をしてくれると、テオは少し照れている。
「うん。ミルクの味が濃厚で美味しい。…こちらのキャンディーを砕いて混ぜたら面白そうだね。こちらの焼き菓子を混ぜたり、濃い目に入れたお茶を温かいまま掛けても美味しそう」
キャンディーは某アイスクリーム屋さんの大人気商品になるね~。
軽い気持ちでニコニコ言うと、店主もテオも驚いた顔をしていた。
「…ふむ。それは面白いな」
テオがそう言ってチラリと店主を見ると、店主は興奮した感じで顔を赤らめていた。
「す、素晴らしいアイデアです!そうですね、アイスにキャンディーや焼き菓子を混ぜるとは…。少しお時間を下さいませ」
「え、えぇ」
え、アイスにキャンディーとかの混ぜ物って無かったかな?
そう思いながら記憶を探るが、確かにバニラ、ストロベリー、ショコラみたいにフレーバー毎に分かれてて、チョコや果物の混ぜ物があるるくらいだな…。
しまった、前世の記憶を出しちゃったと反省していたら、テオが話を変えようと先程の事について聞いてきた。
「そう言えば先程、令嬢達に何か嫌な事でも言われたのか?」
「…ちょっと」
あ、やっぱりバレてました?
「実は…。私の事を若いだけだと…」
「何だって?」
ちょーっとテオにチクってやると、テオはムッとした顔をした。
「…私が若さだけでギルを選んだと思っているのか。心外だな」
ねぇ?
若さと美しさと可愛さと強さと、賢さと魔力の高さと溢れんばかりの愛らしさと色気だよね!?
シュンとした表情を見せると、テオに優しく頬を撫でられた。
「確かに私より若いが…。私がギルを意識し始めたのは初めて会った時からだしな」
「ええと、私が逃げてしまったあの時?」
「そうだ」
護衛達や給仕が聞き耳を立てているのも分かっているから、俺もテオも敢えてこの話をしてる。
噂として広げて貰わないとだからね!!
「君はあの時、十数匹の魔物を倒し、飄々としていたからな。素晴らしい魔術と剣術の持ち主だと感動したよ。その後素顔を見て、こんなに美しい青年がと驚いたがね。何度誘っても答えてくれない姿にも、振り回されて新鮮だった」
「ふふ。あの頃はレッドドラゴンリーフを探す事だけを考えていたからね」
「贈り物も必要無いと突っぱねるからな。喜ぶのは新しい薬草やレッドドラゴンリーフの情報だけと言う」
「だって、あの頃は欲しいモノは自分で手に入れて入れたかったんだもの…」
俺が金や地位目当てでは無かったんだとアピールしておく。
まぁ、実際あの頃はレッドドラゴンリーフやジェレミー兄様の病気の進行を遅らせる薬草以外に、興味なんて無かったからね。
「それにしても、やはり魔鳥を一刀で仕留めたのには感動した。さすがジャメル騎士団だ」
「父や兄から徹底的に剣術を仕込まれたからね。魔鳥を五匹倒して来なければ、帝国に行く事は禁止されていたから…」
うふふと照れながら話してはいるが、護衛が引いているのが分かる。
いや、ここは引かないで!!
引くのも分かるけど!
『魔鳥を五匹…』
『城で一刀だったと言うのは、本当だったのだな』
ヒソヒソと話しているけど、聞こえてますからね。
ハレは少し遠い目をしていて、ハレの兄であるニムラス伯爵からこっそり教えてもらった話を思い出す。
『ギル様の剣術を見て、ハレは護衛だけは続けたいって言っていたけど諦めたんですよ。強すぎるって』
強すぎてごめんよ…。
でも、ジャメル騎士団はこんなもんなんだよ。
レモルトへの移住も考えてくれていたみたいだけど、やっぱりテオを長年想っていた美人騎士には、側にいて欲しく無い。
テオが何か間違いを起こすって事は無いだろうけど、俺はテオといっちゃいちゃラブラブしていきたいから、それを見せつけるのもどうかと思うし、ハレはまぁモテるって聞いてる。
今がチャンスとばかりに張り切っている、騎士の方々のやる気を削ぐのも申し訳無いのだ。
「テオドール殿下、ギル様、失礼致します…!」
そんな時、興奮した様に店主がやって来て、新しいレシピだとアイスを出して来た。
あ、アレだ。
「砕いたキャンディーをミルクアイスに混ぜて、ストロベリーアイスも混ぜてみました。とても感動的な味に仕上がりましたよ。是非召し上がってください」
そう言って周りにも試食を進める。
「…!これは斬新で、面白い。味も申し分無いな」
「うん。美味しいね」
まさしくアレだー!!
パチパチしたキャンディーの入ったアイス!!
うーん。
同じ世界の転生者にはバレてしまいそう…。
「こちら、是非当店で販売させて頂きたいのですが…」
あ、俺が考案だから許可が必要だと思ってる?
こちらが開発したキャンディー混ぜただけなのに…。
「ギルの考案となるが、どうする?こう言った場合は開発に関して取り決めも出て来るが…」
流石にこれでお金は頂けない。
「是非販売して下さい。私が考案と言っても、素晴らしいキャンディーとアイスがあったからですので、私の許可や開発料など必要ありません。またこちらに伺った際は、少しサービスして下さいね」
そんな感じでイタズラっぽくお願いしておいたら、テオも感心して店主は感動していた。
後に、アイスの名前がギルアイスになっている事を知った時は驚いたけど…ね。
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