転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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215 推しと帝国でのデート

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「わぁっ!テオ、この布キレイだね」

「最近開発された帝国の布で、暗闇では光るんだ。帝都では店先の日除に使用しているな。夜になると光る為、安全面でも安心だ」

「魔力の必要の無い灯りって事か。トーレにも持ち込みたいな」

淡い色なのにほんのりと光る布はこの世界では斬新で、これは流行りそうだと目を輝かせる。

昨日、昼過ぎに起きた俺とテオは、兄様達とお茶を楽しんだ後にお見送りをした。

カーリンもウキウキでやって来て、モモルルに挨拶をして帰っていった。

今日は、テオと一緒に帝都をデートしている。

もちろん数人の護衛も居るんだけど。

隠れてお忍びデートも良かったんだけど、テオと結婚するのは俺だとアピールする為にも、護衛を引き連れてのデートなのだ。

「この布と、この布を。十反づつ頂けるかな?」

「畏まりました。どちらへお届け致しましょう」

恰幅の良い店主が、ニコニコと聞いてくる。

こちらはガルドル伯爵の経営する店の一つだから、接客も丁寧だし商品の質も良い。

「一旦は城で良いだろう。私宛にしてくれ」

俺がどこへ届けようかと迷っていると、テオがそう言い、店主はすぐに手配を始めた。

「ありがとう」

「次はどこを見てみたい?露天での買い食いは…。ダメだが、すぐに入れるカフェもある」

買い食いはと周りの護衛をチラリと見ると、皆ブンブンと首を振っていた。

そりゃ護衛も難しくなるからダメだよねえ。

そう思っていると、護衛の一人がスッと前に出る。

テオに長年片思いしていた、ニムラス伯爵の弟のハレだ。

「テオドール殿下、ギル様。近くの焼き菓子とフルーツのカフェか、焼き菓子と砂糖菓子、冷菓が評判のカフェでしたら、事前に許可を頂いております」

事前に候補をいくつか用意してくれているようだ。

いきなり行ったら、お店も大変だからね。

「ふむ。ギル、どちらが良い?」

「砂糖菓子と冷菓のお店に興味があるな。キャンディーはトーレでも人気があるし、お土産にも良さそうだから」

帝都は砂糖の生産も盛んで、質が良いことで有名だ。

しかも、この世界の砂糖は体に優しい成分で構成されていて、太りにくいと言うチート食材になっているのだ。

「分かった。そちらへ行こう」

テオがそう言うと、護衛の一人がサッと動く。

行き先一つも自由に動けないのも、大変だよねぇ。

「それでは向かいましょうか」

数分で許可を取って来た様で、俺達は店を後にする。

「お邪魔しました。素敵な商品ばかりで楽しかったです」

「…!こちらこそ、ありがとうございました」

店主や店員に深々と頭を下げられながら、俺はテオにエスコートされ外へ出る。

よしよし、好印象でいられたよね?

俺とテオのデートは周りにも知られている様なので、貴族街しか許可は降りなかったのだが、野次馬の姿がチラホラある。

『テオドール殿下よ…!』

『ああ、素敵。本当に婚約なさったのね…』

うっとりとテオを眺める羨望の眼差しが凄いね。

今日は二人ともカジュアルな格好…、と言っても、白いシャツに黒のスラックス、黒のウエストコートでそれぞれ銀の刺繍が入っているものを揃いで着ている。

『あちらがギル様?美しい方ね…お若くて』

『ええ、お若いわね。クスクス』

『あら、お若いだけみたいな言い方ですわぁ』

数人の令嬢が集まって、ヒソヒソ話している。

テオには聞こえていない様だが、俺は魔術で聞いてんだからな!!

俺より十くらい上であろう令嬢達は、ふんわりとしたプリンセスラインのドレスがなんとも言えない方達だ。

もう少し上品なふんわり感って無かったんだろうか…?

ええ、あなた方よりはお若いですけど何か?

お若くて、美しくて、テオにピッタリな婚約者様ですけど何か?

そう思って少し可哀想なモノを見る目を向けて、クスリと笑い返してやる。

『『『!!!』』』

令嬢達は笑われたのに気付いた様で、ブワッと怒りを露わにして睨み付けていて、面白い。

「…?どうしたギル」

「いえ、帝国ではああいったデザインがまた流行っているのかと…」

少し困った様に言うと、テオはサッと令嬢達を見る。

こちらを睨み付けていたモノだから、慌てていて面白い。

「…いや、何と言うか」

テオが返答に困るくらいの中々なセンスだからな。

ボワっとしすぎて通行の邪魔になるんじゃないかってくらい広がったスカートに、肩幅どうしましたかってくらいに膨らんだ袖。

そして、色が悪い。

仮装パーティーや、何かをテーマにしたパーティーでは良い賑やかしになりそうな配色だけど…。

これが少女だったらそれなりに可愛い…いや、それでも酷いな。

前世の記憶でロリータファッションは知っているが、あれはもっと洗練されていたし、種類が違うな。

「僭越ながら。最近の流行は、こちらのようなエンパイアラインや、Aライン。スレンダーラインやマーメイドラインと呼ばれるドレスでございます。昨今は女性の社会進出も進みまして、パンツラインも好評でございますよ」

布屋の店主が、チラリと令嬢達を見て一瞬顔を顰め、すぐに笑顔で店員を並べて説明してくれる。

「こちらのパンツラインは、トーレではあまり拝見しませんが、素敵ですね。勉強になります」

「トーレ王国ジャメル領の花柄の布も大変好評でございますよ。花柄と言うと子供のイメージがございましたが、洗練されており大人にぴったりだと、紳士淑女の方々がこぞって仕立てております」

「そうなんですね…!嬉しいです」

うふふ、ジャメルが褒められて嬉しい。

「レモルトでも人前で働く女性が多くなるから、こう言ったスタイルは良いな」

「うん。洗練されていて素敵。制服として仕立てるのも良いね。その時はまたこちらで布を購入したいな」

「ありがとうございます」

にこやかに店主と話しながら、先程の令嬢達をチラリと見ると、キーッて顔をしている。

うーん。

どこの国も嫉妬は心地良いねぇ。






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