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210 推しとまさかの事実
しおりを挟む「トーレと帝国の考え方に齟齬は無いよ。基本的に成人していれば婚約後は許されているし…。ギルは何て聞いていたの?」
結局、俺はジェレミー兄様とフロル様に、こっそり聞く事にした。
だって、ほら、俺と同じ抱かれる方のはずだから。
「ええと。結婚するまではその…。本番はダメって」
俺が照れながら言うと、ジェレミー兄様とフロル様は顔を見合わせた。
「ああ。そうだね。婚約の形と言うか、深さの違いについて勘違いしていたのかもしれないね」
「後は、相手の立場の違いかな?」
ジェレミー兄様とフロル様の言葉に、頭にハテナが飛ぶ。
「形?深さ?」
何だそれ聞いた様な、聞いてない様な…。
「正式に婚約をしても、相手が子供だったらもちろんダメだよ。あと、学生だった場合も問題視される傾向にあるね。それでも許されるのは…そうだね。お相手が命の危険のある戦争や討伐に向かう事が決まっていて、戻ってこれないかもしれないって時は、お許しが出ると聞いたよ。それでも幼すぎたらダメだろうけどね」
ふんふんと俺はジェレミー兄様の話を聞く。
「後は、早くお世継ぎが欲しいけれど、国や家の関係で結婚の時期をずらさなければならない時だね。そんな時は、子供を先に作ってしまっても問題は無いとされているね。…ええと。その。大抵は学園を卒業したら、その…。お許しが出ている様なもので…」
フロル様が最後言葉に詰まる様子を見て、ホセ兄様絶対に手を出してたなと確信する。
「ギルの場合は、お相手がお相手だったから、念には念を入れてと、父様が厳しく考えていたのかもしれないね。正式に婚約を発表したのだし、結婚の話も進んでいるのだから、そう言った行為は問題無いよ。むしろ喜しい事だと受け入れられるんじゃ無いかな」
「ヨロコバシイ…」
「もしかして、家の図書室の本で勉強したの?」
ギクリとしつつも頷くと、ジェレミー兄様は呆れた顔をした。
だって、父様はとりあえず本を読んでおきなさいって言ったんだもん!!
「もう。父様もギルも…。あれはその…。お祖父様達の趣味の本も多いから、鵜呑みにしたらダメだって話だったでしょう?…そうだね、ギルは私の為に休みの日は薬草探しに奔走していたから、伽の授業はしっかり受けていなかったんだったね。今からでも…」
「それなら、テオドール殿下が手ほどきなさいますよ。きっと」
うううううう。
先祖の性癖と、俺の無知さが現れる結果になってしまった…!
前世でも童貞処女だった気がするから、妄想力しか持ってないんだもん!!
「タニア嬢の事があったから、婚約発表後だけど何もしていないのだろうと思っていたけれど…。ギル。今日はしっかりテオドール殿下のお相手をするんだよ?クリームは持ってきているね?」
「ううう…はい」
「大丈夫だよギル。私も初めての時は緊張しましたけど、ホセ様がしっかりとリードしてくださったので…」
「はい…」
うおおおおおお!!
推しとの猥談が、こんなにも小っ恥ずかしいなんて知らなかったよおおおおおお!!
本を読んでいるから、それなりに知識のあるつもりだったけど…。
それにしても、皆ヤる事はヤっているんだな…。
テオは俺に遠慮してくれてたんだと、深く反省した。
今日こそはしっかりとテオと話し合って、初エッチを!!
心の中で拳を握り締めておいた。
「明日には私達は帰国するけれど、ギルはそのままレモルトへ帰るんだろう?結婚式の準備も大変だろうし、何か手伝えることがあったら言って欲しい」
「ええ。私も協力しますよ」
「ありがとうございます…」
そうだ、エッチの後は結婚式の段取りや準備が待っている。
大変だろうけど、やっと夫夫になれるんだから、頑張らなくちゃ。
その後、ちゃっかりしっかり俺の事とはバレない様に、ホセ兄様達に話を聞いたらしいテオは、微笑ましい目で俺を見て来た。
ううう恥ずかしい…。
うん、そうだな、ここは一つ開き直ろう。
エッチな知識が豊富だけど、経験値の無いウブで可愛らしい若奥様で行こう!
テオも喜んでくれるはず!!
変な気合を入れて、俺は夕食へ挑む。
その後、夕食を頂いて、部屋に戻ろうとしていた時、テオの元にパタパタと騎士が駆けて来た。
「失礼致します。テオドール殿下…」
「ふむ。早急だな…。良いだろうすぐに向かう」
何だ何だと思っていたら、テオがこちらを見る。
「ギル。ラッカルのサルマ殿が、早急に帰国する事になったそうで、明け方には出発したいそうなんだ。その前に急ぎではあるが叔父上が話がしたいと。大丈夫か?」
あらら、それは急だね。
「もちろん。今から?このままの格好で問題は無いよね?」
シャツとスラックスだけだけど、上着とか要らないよね?
俺がそう聞くと、テオは羽織っていたストールで、俺の体を優しく包む。
「ああ、問題無い。このまま談話室へ行こう」
「ふふ。ありがとう」
テオの匂いに包まれながら、俺はついつい笑みが溢れる。
テオは、俺の期待と不安をちゃんと分かってくれてる。
期待が大き過ぎるのも、きっと分かってるよね。
でも、こうやって大丈夫だよって示してくれてるんだから、俺も真剣に向き合わなくちゃだね。
仲良く寄り添いながら談話室へ向かう俺達を、周りは微笑ましく見ていた。
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