転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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204 推しと終わりの時※残酷な表現を含みます

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「…サンジカラの禁忌の一つだな。薬で魔力を大幅に増殖するが、命を削る」

ダイナレートの言葉に、周りはなるほどと頷いている。

皆でやり込めば何とかなる感じだけど…。

「く、ここに来て動かぬか馬鹿者が!」

「ワーク、どうすれば」

「ご安心ください!外にもおります!!」

「!!」

ワークが外と言うと、外が騒がしくなる。

「ご報告します!!外で数人が怪物に!!」

バタバタと護衛が走って来て、周りが騒がしくなる。

「外の対応の者は外へ!!」

ダイナレートの声に、騎士と魔術師がサッと動く。

動きの速さから、ここまで予測してたんだろうなと。

父様が外に出たから、父様は外を担うんだろう。

「く!チョント!!しっかりなさい!あなたは私の為に動くんでしょう!?」

いやいやいや。

この状況で何言ってんの。

タニアに呆れつつも、チョントの動きからは目が離せない。

チョントは間違いなくタニアを襲うだろう。

こちらには目もくれず、タニアを恨めしそうに睨みつけている。

…まぁ、被害がタニアだけなら良いけど、他にも及んだら大変だしなぁ。

そんな事を考えつつも、周りを確認すると、ザラムゼフ伯爵はちゃっかりバランモス公爵の護衛に混じってる。

皇帝はしっかり護衛がついてるし、ドムジンも青い顔をしながらもしっかり魔術で防護壁を作ってる。

ビャールは…。

思った以上に大人しく捕らえられてるな。

動くのか動かないのか。

ビャールは読めないから要注意だなと思っていると、ブワッとチョントが魔力を放出した。

「来るぞ!」

その瞬間、チョントはものすごい勢いでタニアに襲い掛かる。

『ゆ゛る゛ざな゛い゛!!』

「ぎゃああああああ!!」

大きな黒い塊から、鋭い爪が付いた腕が振り下ろされ、タニアの左頬から肩を斬り付ける。

のたうち回るタニアを助ける者は居ない。

放出された魔力に、チョントの思考が載っている。

(なるほどね…)

チョントは、父親に大きなコンプレックスを抱いていた。

帝国皇室の騎士として名高く、活躍もしていたザラムゼフの息子なのに、チョントは剣の才能は全く無かったみたい。

ザラムゼフは早々に、息子には剣ではなく魔術の道を進ませた。

見捨てた訳でなく、自分に合った方向を伸ばす為だったのだが、周りは落ちこぼれと嘲笑う。

それでも魔術を鍛え、皇室魔術師となったが、上には上が居る。

それでもと進んでいた中、タニアに出会った。

『あら、あなたの魔力は素晴らしいわ。ぜひ私の為に働いて欲しいくらいよ』

タニアに褒められてから。

認められてから、チョントの世界は大きく変わっていったんだろう。

タニアにとっては、サンジカラの禁忌を使うに十分の魔力と、ザラムゼフ伯爵の息子と言う好都合な立場が好都合だっただけだろうけど。

「痛い…!いやぁっ!!たす、助けて…!!」

タニアは痛みで動けず、ワークが急いで近付くと、チョントはワークに飛び掛かる。

「ひ、ひぃっ!!ぎゃああああああ!!」

近くにいたワークは、首を大きく斬り付けられ、倒れ込む。

暫くビクビク動いていたが、動かなくなった。

「ひいっ!ひっひっ」

タニアは恐怖で体が震えていた。

『ゔ…あ』

チョントがぐるりとこちらに体を向ける。

『だ、だれか…』

体が言う事を聞かないのか、泣きそうな顔をしている。

もはやこうなったらただの殺人鬼になるのだろうか。

「気を付けろ」

テオの言葉に、俺は気を引き締めて剣を構える。

バッとチョントは皇帝達の方へ飛び掛かる。

「ぐっ!」

ドムジンが防御壁を作っていたので免れるが、チョントの力が思った以上に強かったみたいで、ドムジンがよろける。

『!!』

あ、ヤバい。

もうチョントは周りが見えていない。

グラついたドムジンが次のターゲットだ!!

俺が飛び出そうとしたら、それより先にドムジンとチョントの間に飛び出した人がいた。

チョントが再び爪を振り下ろす。

ザシュッ!!

「!!」

「グッ!!」

「ビャール!!!」

ドムジンとチョントの間に飛び出したのは、後ろ手に腕を縛られたままのビャールだった。

「う、うぅ…」

チョントに胸から腹を切りつけられ、ビャールはそのまま倒れ込む。

どくどくと血が流れ、床に広がって行く。

「ビャール!ビャール!!」

皇帝への防護壁を解く訳にも行かず、ドムジンは悲痛な声をあげている。

『あ、あ、あ。ち、ぢがうんだ…』

チョントは誰かを傷付けたい訳では無いと、必死で体を動かすが、もはや自分の意思でも体が動かせなくなっていた。

『ど、とうさま…』

絞り出す様に出た声は、小さな子供が泣いている様な声だった。

その声を聞いたザラムゼフ伯爵は、両目を大きく見開いて、そして強く目を瞑る。

そして、再び開かれた目には、覚悟が見えた。

「…ああ。今、楽にしてやろうチャント」

ザラムゼフ伯爵は、再び剣を構える。

『う、う、うぁ、と、さま』

またも飛び掛かろうとするチョントが体を屈めた瞬間、ザラムゼフ伯爵は歳を感じさせない速さで動いた。

剣が大きく振り下ろされる。

『グワァァァァァアアアアアア!!!』

ザンッ!!

チョントの体が、左肩から斜めに真っ二つになり、そのまま崩れ落ちて行く。

塊がモゾモゾと集まり、人の形に戻った時には、チョントは大きく体を切り付けられていた。

「…チョント…!」

ザラムゼフ伯爵はすぐに剣を鞘に収めると、息子の体を抱き上げた。

「あ…あ…。コレ…で。おわ…る?」

「…ああ。終わりだ」

「…あぁ…」

ザラムゼフ伯爵に髪を撫でられながらチョントは、安心した様に息を吐き、そのまま動かなくなった。





















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