転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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198 推しと管理者の発表に向けて

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大きな窓からの朝日で、心地良く目覚めると、俺を胸に抱いたテオが、俺の額にキスをする。

「おはようギル。昼前にはカグラの発表を済ませるそうだ」

なんて幸せな朝なんだろうと噛み締めつつ、俺もテオの頬にキスを返す。

「ふふ。おはようテオ。それなら早く朝食を済ませて、カグラに声を掛けに行こうか。不安もあるだろうし」

「ああ、既に軽いモノなら準備をしてある。そうだな、カグラも不安だろう」

手早く朝の準備を終え、軽いにしては豪勢な朝食を摂る事にする。

既にジャムの塗られたパンに、野菜サラダに、ハムに卵にチーズに、搾りたてのジュースも数種類ある。

「ん!このパンに塗ってあるジャムって何?」

薄いパンの上に塗られた赤いジャムは、光の加減で虹色に光り、味も酸味と甘味のバランスが素晴らしい。

粒々も口に残るかと思いきや、パチパチとすぐに弾けてその感覚も面白い。

「ああ、これは帝国で栽培されているグリーンドラゴンベリーだな。グリーンドラゴンリーフの近くに出来るとされるモノで、中々見かけないだろう?」

「そんなモノがあるんだ…」

「レッドドラゴンリーフの近くにも何か新しいモノがあるかも知れないな」

おお、コレは良い商売の匂いがするぞぉ~!

食事を楽しみ支度を終えると、俺とテオはカグラの元へ案内してもらう。

広間近くの控え室で、カグラはキレイに飾り立てられ緊張した面持ちで座っていた。

部屋に入る前にチラリと広間に目をやると、慌ただしく準備をしていた。

「コレはあちらへ。席はこことここに…」

「かしこまりました」

ゼンドラル公爵が、テキパキと指示を出している。

「カグラ殿。おはようございます」

「お、おはようございます。テオドール殿下。ギル様」

俺達を見てホッとした表情をしたカグラに、大変だなと同情する。

ドラゴンの管理者であるカグラを悪く言う貴族が悪いのだが、今回ジャメル家が話が出来ると聞いて、平民上がりのカグラ不要論を言い出す貴族が出て来るのは目に見えてた。

ドラゴンと言う魅力的な力を、平民上がりが管理している事に不満を持つ貴族にしてみれば、今がチャンスだし、貴族と言うだけで、偉そうな奴ってどこにでも居るからね!

しかし、ドラゴンの意思を無視した考えは余りにも驕りだよねぇ。

次に消されるのは誰なんだか。

「大丈夫ですか?顔色が…」

「少し、緊張してしまって。今回の件でモモルルが静かに激怒しているので、落ち着かせるのに苦労しました…。どうやら、私を悪く言う方々を既に特定している様でして…。ギル様のお兄様達も立ち会って下さったのですが、助けて頂きました。大変感謝しております」

困ったものですと溜息をつくカグラに、俺とテオは顔を見合わせる。

どうやら俺とテオをゆっくり過ごさせる為に、ホセ兄様とジェレミー兄様がカグラに同行したみたい。

ドラゴンの愚痴も、一緒に沢山聞いてくれたみたいで、カグラもホッとしている。

「ふむ。ホセ殿達が一緒だったのなら、不届者達の事もしっかり把握してくれているだろう。発表の場でもしっかり釘を刺しておかねばならない。帝都がドラゴンの怒りで消えたら問題だからな」

いや、大問題でしょう。

カグラの発表の時は、そこら辺も追及されるんだろうね。

下手したら帝国が吹っ飛ぶんだから。

大変でしたねと労っていると、ドアがノックされる。

「失礼します。本日、エスコートを務めさせて頂く事になりました」

「…ハンク様!」

そこに、ゼンドラル公爵の甥であるシャタラ伯爵家のハンクが現れる。

昨日より髪をバッチリ後ろ手に撫で付けて、中々男前じゃない?

カグラもゼンドラル公爵の甥だけど、ハンクはゼンドラル公爵夫人の弟の子供だから、二人に血縁関係は無いんだよね。

ふぅ~ん?

ゼンドラル公爵ったら、やっぱりカグラのお相手として既に目星を付けてるんだ。

「顔色が優れませんが…」

「え、いえ。緊張しているだけです」

「そうですか…。大丈夫です。どうぞ胸を張って下さい。私が側にいますので」

「ハンク様…」

ふぉっふぉっ!

この、初々しい恋が芽生えて育ってる感じが良いねぇ!!

心の中でフンスフンスしながら微笑ましく思おつつ、俺達はこの後の段取りに入る。

今日は主要な貴族の当主と長子だけ呼ばれており、下の令嬢令息は特に集まらない。

俺とテオは先に入って、皇族の席に座る事になっている。

ドラゴンの話を聞いた俺の家族も同席し、ドラゴンの話を説明する事も決まっている。

「テオドール殿下、ギル様、朝早くからありがとうございます」

カグラの顔色も良くなって来たので、安心だ。

「ふふ。ハンク殿がいらっしゃるのなら安心ですね」

「え、ええと」

ちょっと神楽を揶揄うと、カグラは顔を赤くしてしまう。

ヤダァー!

可愛いね!!

顔には出さず心でニマニマしながら、上品に微笑んでテオを促すと、テオも俺に微笑んでくれる。

「ああ、そうだな。我々は先に広間へ行こう。ハンクなら安心だ。後は頼む」

「恐れ入ります」

ハンクは顔色も変えずに頭を下げる。

うんうん。

これ位余裕のある男の方が、カグラには合ってると思うね。

包容力もありそうだし。

勝手な事を考えながら、俺とテオは広間へ向かう。

「…ね、やっぱりハンク殿って」

「うむ。そうだろうな。ゼンドラルはやり手だからな」

「ふふ。それでも二人の事を考えた上での感じだね」

「ああ。昔とは考え方も違うからな。良い縁があって良かった」

さて、カグラの発表が終われば襲撃も近い。

今回カグラの発表を早め貴族を集めたのも、実は襲撃に合わせた作戦だったりする。

もちろんお馬鹿さん達も集まってはいるけど、丁度良い機会だしね。

グッと腹に力を込めて、俺は自分のやるべき事を反芻していた。












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