201 / 247
194 推しとロマンスの香り
しおりを挟む「ギル殿。カルパの異変に気付いて頂き、誠にありがとうございます」
皇帝達の部屋へ向かう廊下で、バランモス公爵が俺に礼を言う。
その言葉に合わせ、一緒に部屋に向かうジュレス公爵夫夫も俺に頭を下げた。
うーん、やっぱりバランモス公爵とカルパって生き写しってくらいに似てるね。
儚げで色気があるが、芯の強そうな美人!
俺好きだよ!
ジュレス公爵も騎士として学校を出ているし、教師もしていたそうだからか、体付きも立派でイケメンだし、本当今日は目の保養が多くて困っちゃうなぁ。
そんな事を考えつつも、俺はにこやかに笑顔で謙遜しておく。
「兄に助言して頂いたから気が付いたのです。カルパ様、お身体の具合はどうですか?」
それとなく、ジェレミー兄様の凄さをアピールしつつ、カルパの具合を尋ねると、ジュレス公爵に優しく腰を抱かれながらカルパは微笑む。
「ええ。ジェレミー殿とフロル殿に治癒をして頂き、体が軽く感じています。今まで体が重かったり、意味もなく不安だと感じる事が多かったので…。ジンギ様にも大変心配をお掛けしました」
「君が元気になったのなら、それで十分だよ。ギル殿。本当にありがとうございます」
うう~んラブラブぅ。
俺の好みのカップルのラブラブって、大好物なんだよね。
俺も早くテオとラブラブアピールしたい!!
そんな事を考えつつ、長い廊下を歩いていると、前からタダならぬ気配を感じる。
チラリとテオに視線を向けると、テオは苦笑する。
「…ああ、大丈夫だ」
テオがそう言うなら大丈夫なんだろうけど、本当にタダならぬ気配なんですけど…。
ジュレス公爵夫夫にも緊張が走るが、ふと見たバランモス公爵は落ち着いている。
「テオドール殿下。どうやら皇帝により呼び出されたザラムゼフ伯爵がいらっしゃる様です。一旦別室へ入られますか?」
護衛がテオに声を掛けるが、テオは大丈夫だと断る。
「…その様だな。こちらに害を成す事は無いであろうから、このまま対面しても問題は無い」
「かしこまりました」
ええ!?
ザラムゼフ伯爵って、チョントの父親だよね?
悪い奴の父親なのに、害は無いって判断したテオに、俺は驚きつつも従う事にした。
先程覗き見した感じでは、チョントは魔術師っぽかった。
明るい茶髪と濁った碧眼で、顔立ちは上品ではあるがパッとしない感じの、体型も至って普通の男性だったな。
そんな事を思い出していると、四人の騎士に前後左右を囲まれた状態の男が前から歩いてくる。
え、アレがザラムゼフ伯爵!?
四人の騎士に囲まれても、一際目立つ逞しさで、腰の剣を見る限り彼は騎士の出だろう。
息子と同じ茶髪と碧眼なのに、目鼻立ちはクッキリしており、顎髭も綺麗に整えられ、少しウェーブの掛かった肩までの長さの髪は、無造作だがセクシーさを演出している。
おいおいおいおいおい爆イケオジじゃねーか!!
髪と眼の色以外、息子に遺伝子渡さなかったのって位、チョントとは似ても似つかないイケオジの出現に、俺は顔には出さずに驚く。
「…テオドール殿下。婚約者様。並びにバランモス公爵、ご子息夫妻。この度は我が愚息が大変ご迷惑をお掛けしました」
おお、声もイケオジボイス…。
そんな事を考えつつ、取り敢えず対応はテオに任せておく。
「子息の行動は許し難いが、裏にサンジカラが関わっているとなると、操られている可能性も高い。今後の対応は皇帝から指示がある。声が掛かるまで控え室で待つ様に」
「かしこまりました」
それ以上の会話は無いまま、ザラムゼフ伯爵は俺達の横を静かに通り過ぎて行く。
行ったけど。
俺はしっかりはっきり見ましたヨォおおおおおお!!
本当に一瞬だったけど、ザラムゼフ伯爵はバランモス公爵を見ていた。
とっても熱い視線でね!
それだけじゃない。
バランモス公爵も、一瞬ザラムゼフ伯爵を見ていたんだよね。
切なそうな顔で!!
どちらも見たタイミングが違うから、二人の視線は交わってはいないけど、何かあるよね?
これで無かったらおかしいくらいの、一瞬の情熱を俺の敏感なセンサーがビンビン感じ取ったからね!!
確か、バランモス公爵の結婚は、国同士の大きな繋がりを作る為のものだったはず。
亡くなった夫人は、ラッカル三大公爵家であるマド公爵家の出身だし、バランモス公爵も前皇帝の弟だし。
和平を強くする為に、マド公爵家の子息との婚姻の申し出があった時、既に前皇帝は結婚済みだったし歳が離れすぎていたので、年の近いバランモス公爵に白羽の矢が立ったらしい。
夫人は体は弱かったが容姿も性格も良く、バランモス公爵ともすぐに打ち解けて、子供を二人授かった仲睦まじい夫夫だったと聞いているけど…。
悶々と様々な妄想を頭の中で走らせながら、俺達は再び皇帝達と合流する。
バランモス公爵やカルパに起きた事などを説明しながら、俺は先程のチョント達の会話を思い出す。
あいつらは必ず動き出すだろう。
それに、チョントやタニアにとってザラムゼフ伯爵は脅威だと言っていた。
ちょっと使えそうだよね。
そう思いつつ、俺はテオにこっそりと先程の話を伝える事にした。
上手く行けば良いんだけど。
411
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる