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191 推しと客人達
しおりを挟む「こちらでございます」
案内された部屋へ通されると、これまた豪華な控え室だった。
ソファもテーブルも多く用意されており、軽食も準備されていた。
それぞれの客人達には部屋が用意されているのだが、ここは談笑を楽しむスペースなんだとか。
「あら!お久しぶりね。大変だったわね」
セフ夫人がこちらに気付き、話し掛けてくる。
「お久しぶりですセフ夫人。今回はありがとうございます。この様な事態になりまして、ご迷惑をお掛けします」
俺がそう言うと、そんな事無いわよと笑顔で俺達をソファーへ案内してくれる。
ホストでも無いけど、この手際の良さは見習いたいな。
そこに座っていた銀髪と黒い瞳の、品の良いご年配の紳士が、和かに立ち上がる。
「おお、テオドール殿下。ギル殿。今回はご婚約おめでとうございます」
「ジャクリ公爵。ありがとうございます」
お、この方がセフ夫人の旦那様だね。
ジャクリ公爵と言ったら、ラッカルの三大公爵家の一つだ。
宗教大国だから、ジャクリ公爵も神父の立場だ。
貴族らの相談事やらも多く聞いている様で、周りには多くの人がいた。
夫婦揃って会話が上手いんだろうな。
これはお勉強のチャンス!
それに、一気に挨拶する良い機会だね。
「この度は私とギルの婚約パーティーにお越し頂き、感謝している。この様な事態になり、申し訳無い」
「ギル・ジャメルです。この度はテオドール殿下と私の婚約パーティーにお越し頂き、誠にありがとうございます。今回はこの様な事になり、ご迷惑をお掛けしております」
テオと二人で改めて挨拶をすると、以外にも皆好意的だった。
「大変でしたわね。それにしても、サンジカラ繋がりとは…。我が国でも問題になっておりますから」
「ええ、本当にしぶといです。今回こうやって発見できた事は幸いでした。サンジカラの手の内が分かれば、周りも対応できますからね。新しい情報を国に持って帰れるのでしたら、喜ばれます」
おお、そう言う事ね。
本当にサンジカラって色々やらかしてるんだね。
「バランモス公爵。爵位返上を考えているとお聞きしましたけれど、貴殿のご活躍や、周りへの奉仕は国内外で高く評価されておりますよ。令嬢の行いは褒められたものではありませんけど、成人なさっているのなら、本人が責任を取らなくては」
「そうですぞ。恥ずかしながら我が国でも、出来の悪い貴族が悪事を働く事がありました。子供なら親の責任ですが、成人なら本人の責任。しっかり罰を受けるべき者が受けなくては」
おお、ジャクリ夫妻ズバズバ言うね!
周りもうんうんと頷いている。
そこに、とても体格の良い、短く切り揃えられた金髪と黒い瞳の美丈夫と、黒髪黒目の美しい青年がやって来る。
似てる!!
バランモス公爵の若い頃って感じ!!
「父上」
「ああ、カルパ。ジンギ殿」
やはり彼がカルパか。
本当に良くバランモス公爵に似ている。
そして隣がジュレス公爵だね。
二人はラッカルの公爵家だが、今はその隣のパラット共和国に住んでいる。
外交官みたいな感じだね。
もう少ししたら、本格的にラッカルに住むらしいけど、パラット共和国は比較的歴史が浅く、開発に協力してる感じみたい。
距離的には、エルフ国のセイレート、その隣にあるパラット共和国、ラッカル、マラサッタ帝国と言った感じで、スノラリアはもっと遠いのだ。
「テオドール殿下、ギル様。この度はご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
まずは俺とテオに挨拶をして、ジュレス公爵はバランモス公爵に向き直る。
「義父上。どうぞお考え直しください。ジャクリ公爵夫妻がおっしゃる様に、タニア嬢の行いと義父上、カルパの行いは別です。私はカパルを愛しておりますし、義父上も大変尊敬しております。我が国での私やカルパの立場をお考えの上でしょうが、どうぞご心配なさらず」
おお、婿殿は公爵や妻にはかなり好意的と見られるね。
タニアを義姉とは言わない所を見ると、タニアの事は嫌悪してる様だ。
「それに、お預かりしているテアについて、少し気掛かりな事がございまして。…テオドール殿下。失礼ながら貴殿や他の方との子供で無いと判明した診断の際、テアとタニア嬢との診断はされたのでしょうか?」
おっと、こちらにも話が飛んできたな。
「…いや。私やその他との親子関係が無いとの診断しかしなかったが。まさか」
んん?
それってつまり、そーゆー事?
「ええ。もしかしたら、テアはタニア嬢の子供では無いのではと」
ジュレス公爵の言葉に、周りは騒つく。
エルフ色の強くでた子だと聞いていたけれど、何かあったのだろうか。
「どう言う事か?」
戸惑いながら聞くバランモス公爵に、ジュレス公爵は説明を始める。
「先日、セイレート国から使いがまいりまして、テアの診断を行いました。その時に、テアは人間とエルフの子供では無いと言われたのです。純粋なエルフの子供だと」
「何と言う事だ…!まさか、誘拐か!?」
バランモス公爵は目眩を起こした様で、ぐらりとし、テオがサッと受け止める。
「父上…!」
手早くソファに座らせると、カルパも父親を心配そうに寄り添う。
「実は、私がテアを気に入っていないとの情報を流し、水面下でセイレートとやり取りをしておりました。パラット共和国でやり取りをしている者の中にエルフ族の者がおり、テアは人の血が混ざっているとは思えないと教えられた事がきっかけです」
なるほど。
それにしても、なぜエルフの子を誘拐したんだろう。
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