転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
196 / 247

189 推しと親子の絆

しおりを挟む

サーディンの所へ行く事にしたのだが、俺とジェレミー兄様、フロル様の三人なら、そんなに邪魔にならないよね…?

そう思いつつ、三人でサーディン達が話し合いをしている部屋へ案内されているんだけど、ジャメル騎士団のロンとベルガーが護衛についてくれている。

「ロンの剣術は見事だったよ。今後が楽しみだ」

「ええ。本当に。ホセ様も良く褒めていますよ。ベルガー殿の指導も上手だと」

ジェレミー兄様とフロル様に褒められて、護衛の二人は嬉しそうに頭を下げる。

「ありがとうございます。ロンは伸び代が大きくて、我々も楽しみです」

「ありがとうございます」

うんうん。

チャラ男のベルガーも随分としっかりして来たし、そろそろカイトとの結婚も叶いそうだと聞いている。

その時はベルガーは王都の騎士に戻る予定だったんだけど、カイトもベルガーもジャメルに移住を希望してくれてるみたい。

カイトはジャメルでレッドドラゴンリーフの職員として働きつつ、王都のリーナイト商会でも働いてくれる予定だから、ありがたい。

「こちらでございます」

「ありがとう」

案内人がノックをすると、中からサーディンの兄のレンの使いをしていた、ザックが出て来た。

「あ、ど、どうぞお入りください」

「ありがとう」

にっこり笑顔を向けると、ビクッとするんだけど失礼じゃない?

俺達が部屋に入ると、サーディンの父親はソファに横になっており、俺に気が付いたサーディンがこちらにやって来た。

「ギル様、ありがとうございます。父も落ち着いた様です。少し記憶の混乱が見られますが…」

「そう。今、お父上と話は出来る状態かな?」

「はい」

俺達が近付くと、オレント伯爵が立ちあがろうとしたのでそのままでと促す。

ヤンダークも来ていた様で、皆で腰掛けて話をする事になった。

「ギル様、婿を助けていただき誠にありがとうございます。恥ずかしながら、私は婿の掛けられていた魔術に気が付きませんでした」

「私もです…」

ヤンダークとレンは情けなさそうな顔をするが、俺はそんな事は無いとフォローする。

「私もを見るまでは半信半疑でした。あの宝石は、オレント伯爵に頭痛を引き起こし、宝石を手にした時に再び強い魔術を掛けていたのではと推測しています。そして、それが繰り返される事により、さらに強力になったのでは無いかと。我が国でもサンジカラの魔術師が似た様な魔術を使い、問題になりましたからね」

俺はニルケス殿下の事を思い出す。

あの魔術師、そんなに強い感じでは無かったんだけど、持ち主の力を使って更に縛り付けていく感じの魔術だったんだよね。

サンジカラの得意とするものなのかもしれない。

オレント伯爵は今は騎士の家系だけど、ヤンダークの時は魔術師の家系だったはず。

だから、現在のオレント伯爵は剣術だけで無く魔術も使えるはず。

その魔力を利用されたのだろう。

「…情けない話です。妻は、あの様な宝石を好んだりしていなかったと言うのに…。それに、サーディンにはとても辛い思いをさせてしまって」

そう言って悲痛な顔をするオレント伯爵からは、以前の様な嫌な感じは受けない。

穏やかで、優しそうな雰囲気に、ああこれが彼の本質だろうと俺は思った。

「どうやら、あの宝石を与えたガンタレ伯爵とザラムゼフ伯爵にはそれぞれ思惑があって婿を嵌めようとしたのでしょう。ガンタレは領地の経営悪化に苦しみ、悪事に手を出していたので、妻を亡くし傷心の婿に付け入るつもりだったのでしょう。ザラムゼフ伯爵は、タニア嬢をテオドール殿下と婚姻させようと躍起になっていましたから。少しでも操る駒が必要だったのではと…」

うーん。

それぞれが営利目的で近付いて来てたんだね。

「それならば、他に被害がある方もいらっしゃるかもしれませんね」

「ええ。何人か既に別室に集められております。あの宝石の所持も数名判明しました。皇城魔術師達が対応しております」

レンの説明になるほどと頷く。

魔物戦争で弱った時に、付け込んだんだな。

今回発覚して良かったけど、根が深そうだ。

「皇帝閣下も不審に思い、多くのトラップを仕掛けており今までは平気でしたが、やはり内部に敵が紛れ込んでいる様子ですね」

「その様ですね。…オレント伯爵。我が国でもサンジカラの魔術師により、似た様な状態にされていた者がおりました。恐ろしい魔術です。どうぞご自分を責めないで下さい。サーディン。ご家族との話もあるだろう。ゲール殿と共にこちらでゆっくりしておいで。私達はまたテオドール殿下達と話があるから。その前に、兄様、フロル様。オレント伯爵に治癒魔術をお願いしたいのですが…」

そう言って、取り敢えずジェレミー兄様とフロル様にオレント伯爵の治癒をお願いする。

「おお…!素晴らしい魔術ですな」

ヤンダークが感嘆する程、二人の癒しの魔術は素晴らしく、オレント伯爵の顔色も良くなっていく。

長く魔術を掛けられていた体の疲労回復だ。

それを眺めるオレント兄弟達の顔は、どことなく穏やかで、ここからまた新しく家族の絆を紡いでいければと思うばかりだ。

「ギル様…。ありがとうございます」

頭を下げるサーディンの肩を優しく叩き、顔を上げさせる。

「良いんだよ。ゲール殿。サーディンを頼みます」

そう言ってゲールの肩も叩く。

「もちろんです」

ちょっぴり寂しい気もするけど、これが正しい道だと分かってる。

と言いつつも、心配だからサーディンとゲールに先程の紙を貼った事は黙っておこう。

こちらに来た理由は、オレント伯爵の治癒もあったけど、サーディンへの守りの強化もある。

タニアやらが接触する時に、俺の執事であるサーディンに接触する可能性があるからね。

「さて、皆さんの所へ戻りましょうか」


















しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...