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188 推しとドラゴン達の話
しおりを挟む俺が不思議そうにしていると、ゼンドラルが続ける。
「今現在のドラゴンは、エルフ族の様に一族で子を育てております。人と共に共存するドラゴンは、大抵後から子育てが終わった番がやって来るか、一匹を好むドラゴンが殆どです。ジャメル領のドラゴンの様に、番でしかも子連れとは中々珍しいですが、竜の一族との生活ではそれが当然だったのでしょう」
ドラゴンの文献って結構少ないんだよね。
もしかしたら竜の一族の保護の為に、公開されてなかったのかもしれない。
「モモルルも、来年頃に子育てを終えたお嫁さんが、こちらに来ると聞いています。ドラゴンは人間には分からない方法で、遠くのドラゴンと連絡をしているそうなんです」
カグラもそう言うので、やはりうちのドラゴンはレアなんだな。
まぁ、駆け落ちで飛び出して来たドラゴンだから仕方ないってのもあるのかもだけど。
「子育てと言っても、ドラゴンは放任していますね。子は殆ど父と共に過ごしておりますし。夫夫のドラゴンは兄とも仲良くしております」
「やはりドラゴンは、ご家族も管理者と考えているのかもしれませんね。やはり竜の一族と捉えてもおかしくは無いでしょう」
なるぼどねぇ。
父様や兄様に懐きすぎって思ってたけど、皆が管理者なら納得だ。
…まぁ、父様達みたいに一緒に訓練とかしてないから、仕方ないけどさ。
「それにしても、記憶持ち全てがドラゴンの管理者になるとは限らないのだな。サンジカラと繋がりのある者も、記憶持ちだと名乗っていなかったか?」
テオがそう言うと、確かにと俺も思い出す。
うちの国のエパとか。
ラッカルに送られたと聞いたけど。
「ええ。私はドラゴンとは会話は出来ませんからね。カグラ殿に聞いて頂いたところ、記憶持ちかどうかはドラゴンも分かっていないそうなんです。ただ、悪い者は気配で分かるそうなので、避ける事は出来るとか」
そこで皇妃サルパンドラが会話に入る。
そっか~と聞いていたけれど、今大事な事を言いませんでした!?
「ふふふ。驚かせてしまいましたね」
イタズラっぽく笑う皇妃の美しい事…。
いや違う違う。
「紹介が遅れたな。妻のサルパンドラは、我が国の記憶持ちだ。前世は魔術を得意とする世界だったそうで、そこで治癒院を開いていたそうだ。ドラゴンは存在せず、魔物とも仲良く暮らしていたと言う。カグラの母も同じ世界と聞いている。ギル殿の世界はどの様な所だったのだ?」
皇帝の説明に、どうやら俺とは世界が違うなと思いつつ、口を開く。
「私には、前世の人物の記憶は無いのです。知識しかありません。その世界に魔術やドラゴン、魔物は存在しませんでした」
俺の説明に、皆興味深そうに聞き入っている。
「明かりも魔術では無く、始めはロウソクや、油にこよりにした紙を使用して火をつけておりました。その後は銅やすず等を使用した電池と言うモノ等が、長い年月をかけて様々な開発で人工的に作られ発展したのです。私が住んでいた所は殆ど明かりに不自由はしませんでしたね。移動手段も遥か昔は馬や馬車が主流でしたが、現在は自動車と言う自ら運転する乗り物や、船。そして空を飛ぶ乗り物もありました」
皇帝も皇妃も、周りの人達もとても楽しそうに話を聞いてくれて、空を飛ぶと言う言葉に興奮していた。
「空を飛べるのか!すごい技術だな。何人程がどれほど移動できるのだ?」
「はい。多い時はいっぺんに八百人程。距離は一万五千キロ…。そうですねトーレからスノラリアを超えて戻ってくるよりも遠くへ行けたはずです」
「八百!?凄まじい技術だ…。争いが起きれば恐ろしいですね」
そこに、皇太子であるサンカールも会話に参加してくる。
「魔力や武力が無くとも、そう言ったもので戦えそうですものね…」
隣にはゴージャスな金髪美女の皇太子妃シャーラもいるが、二人ともに剣術に優れているそうだから、体付きも良くとても強そうな夫婦だ。
「ええ。私の暮らしていた国も、昔は大きな戦争がありましたし、記憶がある限り多くの紛争がありました…。子供の犠牲者も数多くおりましたし。私のいた世界では、同性同士で子供を作る事が出来ませんでした。その為、結婚も反対されている所が多かったですね。もちろん結婚が許されている所もありましたよ」
あ、同性婚について誤解されないよね?
そう思って皇帝達を見ると、とても驚いた顔をしていた。
「…テオドール」
「ご安心ください兄上。ギルからはきちんと話を聞いております。その上で私を選んでくれたのです」
「ふむ。それなら良いのだ」
そうですそうです!!
俺は笑顔でテオを見て頷いておく。
その様子を見て、それなら大丈夫だろうと皇帝達は胸を撫で下ろしていた。
「それにしても、知識はあるのに個人の記憶が無いとは、私は初めて聞きましたね。他の国の方々も昔の記憶がある方ばかりですから…。もし何か不安な事があったり、いきなり記憶が戻ったりしても心配せずに、どうぞ私や周りに相談なさってくださいね」
皇妃の言葉に、周りも頷いてくれる。
「ありがとうございます」
取り敢えずドラゴンの報告と記憶持ちの話が済むと、明日以降の話し合いになる。
外に出されていた人達も集まり、護衛魔術やチョントの裏の繋がりについて話し合いが始まる。
父様とホセ兄様も、もしもの時に備えてドラゴンと共に共闘すると言うと、周りは引き攣りながらも快諾していた。
取り敢えずテオと父様とシェル様、セルジオ様、ホセ兄様はそのまま皇帝達との話し合いに残る。
俺は一旦、サーディン達の所へ向かう事にした。
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