転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
194 / 247

187 推しと帝国の記憶持ち

しおりを挟む

「記憶持ち…」

チラリとカグラを見ると、カグラは苦笑していた。

ええ!!

帝国の記憶持ちってカグラだったのか!?

カグラって神楽から取ったのか?

いや、名前を付けるのは親だから違うか…?

顔には出さず頭の中でグルグルしていると、ゼンドラルは話し始める。

「いえ、記憶持ちはカグラでは無く、カグラの母親なのです」

なーるーほーどーねー!

つまり、ドラゴンの前の管理者は親御さんで、カグラは後を継いだ感じかな?

あれ?

でも農家の三男って聞いたよね…。

「…カグラの母親は、ルル・ゼンドラル。私の年の離れた末の妹でした」

ゼンドラル公爵の妹!?

え、じゃあカグラって普通に貴族の出身じゃないの?

「ルルは体がとても弱く、帝都から離れた場所で静養しながら暮らしていました。その時にカグラの父親と出会いました。相手は平民ではありましたが、大きな農場の息子の末息子で、優秀な青年でした。ルルが苦労する事も無いだろうと結婚を許可したのです」

ルルは体の弱さから、貴族に嫁がずに平民となって、穏やかに暮らして行く方が良いだろうと判断されたんだとか。

その中でモモルルに出会い、ルルはその時に記憶を思い出したと言う。

「前世は九つの頃に亡くなったとの事で、こちらでの記憶の方が長かった事もあり、ルルは対応できたのです。しかし、ドラゴンの存在は帝国にとっても大変貴重なもの。色々な話し合いの末、ルルは平民として説明され、ドラゴンリーフの栽培は帝都の隣で行いましたが、ドラゴンと共に田舎でひっそりと暮らしておりました」

相手の家族である農場経営者のビーマ家以外には素性を隠し、田舎でももっと外れの長閑な所で生活をしていたそうだ。

カグラもスクスクと育ち、家族の愛情をたっぷりと受けて、ドラゴンとも仲良く暮らしていたそうだ。

「その当時、カグラは十五歳でした。この子は産まれた時からドラゴンと会話が出来ました。ルルはドラゴンとも会話が出来た事から、カグラも記憶持ちだと思ったそうですが、カグラはルルの血を継いだだけでした。その後は我が家も援助をし、平穏に暮らしていけると信じておりました…」

管理者は極秘情報ではあったのだが、やはり金で動く者はいる。

ガンタレ伯爵は、親から継いだ領地の経営悪化に苦しんでおり、悪い仲間と金儲けの為に色々と悪事を働いていた所、ドラゴンの情報を知り、権利に目が眩んだと言う。

相手は平民だから簡単に手に出来るだろうと考えたガンタレ伯爵により、その平和は壊されてしまった。

「まず初めに、ルルの婿であったビーマ家のサイフン殿に不幸が起こります。ドラゴンを乗っ取ろうとしたガンタレからルルを守る為に、走り回っていた彼が邪魔になったのでしょう。金を使って彼を襲わせたのです…」

カグラは、その時を思い出しているのだろう。

辛そうに目を伏せいている。

「すぐにこちらに使いが来ました。私は急いで皇帝に報告し、ルルを守る為に動きましたが…。ガンタレは息子であるカグラも邪魔だと考え、カグラも亡き者にしようとしたのです。ルルは、必死で息子を守りました」

それ以上は言わなかったが、ルルはカグラを守って亡くなったのだろう。

そして、モモルルの怒りが爆発したのだ。

「騎士団を派遣しましたが時既に遅く、ドラゴンの怒りを買ったガンタレとその領地は、本当に一瞬で消されました。寂れた採掘場ではありましたが、民への被害はゼロではありません。その後、ドラゴンはカグラを新しい管理者として指名し、私達は話し合いの末に帝都へと迎え入れたのです」

今カグラの親とされているのは、祖父母だと言う事だね。

彼らはカグラが帝都へ行く事を、とても心配して反対したのだが、両親を相次いで亡くしたカグラは、他の家族に被害が出る事を恐れて、帝都行きを決めたそうだ。

品があって柔らかい雰囲気は、良い所の平民だからでは無く貴族の親が居たからか。

「おりを見て、カグラの素性を明かそうと考えておりました」

ゼンドラル公爵の言葉に、皇帝は大きく頷いた。

「公表を早めた方が良いな。ドラゴンの声が聞けるとなれば、ジャメル家の方々にも良からぬ思考の者が近付く恐れもある。まぁ、ドラゴンと共闘出来る者を敵に回す度胸は無いだろうが」

確かにゼンドラル公爵の甥なら、周りの貴族も嫌がらせは出来ないだろうし、ジャメル家を敵に回すと言う事は、ドラゴンも敵に回るからねぇ。

それにしても、俺以外の家族は記憶持ちでは無いんだけども、なぜドラゴンと話せるのだろう。

それを問うと、ゼンドラル公爵は説明を続けた。

「恐らくですが、竜の一族が隠れ蓑にしたと言われている、数多い場所の一つがレモルト付近なのです。そこからジャメル領へ移動していてもおかしくはありません。ジャメル騎士団の強さは代々耳にしておりますが、レス殿のお父上の代から格段に強くなったと聞き及んでおります」

つまり、俺のお祖父様の代って事だね。

「その時に、覚醒遺伝の様に、竜の一族の能力が蘇ったのでは無いでしょうか。ですから、レッドドラゴンも無意識に一族の力を感じ、レモルトの外れに住み着いたのかと」

お祖父様は俺が生まれる前に亡くなっているけど、父様が勝てなかったと言う程の強さだったんだとか。

その時はドラゴンと接触していなかったから気が付かなかっただけで、息子の故ゼノン父様や父様は、竜の一族としての能力を受け継いで生まれて来たのかもしれない。

「ドラゴンは無意識のうちに、己の管理者の気配を感じ取ると言います。もちろん全てのドラゴンではありませんが。今回は記憶持ちであるギル様に惹かれてこちらに来たのでしょう。そして、ジャメル家が竜の一族だと気付き、ジャメルで子を育てる事を選んだのではないでしょうか」

ん?普通は子育てしないって事?














しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...