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186 推しと竜の一族
しおりを挟む「あの…。ギル様。先程はありがとうございます」
部屋へ向かう途中、カグラにそう話しかけられる。
嬉しそうに頬を染めていて、可愛い!!
いや~俺って本当にメンクイだなぁと思いながら、笑顔を返す。
「気になさらないでください。それにしても、グリーンドラゴンの管理者はカグラ殿ですのに。カグラ殿に何かあればドラゴンがしっかり動くと言う事を、周りはもう一度しっかり理解しなくてはなりませんね」
俺がそう言うと、テオもそうだと大きく頷く。
「カグラ殿は自由を失い、国の為に努めてくれている。爵位を授けられたとは言え、どれ程大変な事か。未だに理解していない者もいるとは、頭が痛いな。騎士や魔術師達は理解のある者も多いだろうが、嫌な事があれば早めに報告する様に。ドラゴンの怒りは想像以上に恐ろしいからな」
テオにも告げられ、カグラは分かりましたと大きく頷いていた。
後ろに並んで歩くハンクの表情は分からないが、視線がとても優しいので、もしかしてもしかするのかと心の中でニヨニヨしてしまう。
そうして歩いていると、これまた大きな扉の前に着く。
扉の前には護衛もおり、テオを確認すると頭を下げ、すぐに中へ知らせてくれる。
「皇帝がお待ちです。どうぞ中へ」
扉が開かれると、中には大きなテーブルと椅子の他にもソファーテーブルのセットもあり、皇帝と皇妃、皇太子、魔術師や騎士達やらが話し合いをしていた。
「緊急の話しがある。皇妃と皇太子。宰相以外は隣室へ移動してくれ」
皇帝は俺達に気付くと、周りに指示を出して隣室へ移動させる。
扉が閉められると、皇妃が魔術で周りへの音を遮断させた。
「…ジャメル家の方々が、我が国のドラゴンの声も聞こえると聞いた。間違いないか」
皇帝の質問に、俺達は頷く。
「間違いありません。私と息子達三人共に」
父様がそう答えると、皇帝は難しい顔をする。
そりゃ、帝国のドラゴンだからね。
「まさか、竜の一族の言い伝えは本当だったのか…」
おお、やはり竜の一族って出てきたね。
でもその前に、モモルルから聞いた大事な話を伝えておこう。
「皇帝閣下。お話を遮って申し訳ありませんが、先にお話ししなくてはならない事がございます」
俺がそう切り出すと、皇帝は許可を出す。
「先程モモルル殿が、サンジカラの魔術師に気を付けよと申しておりました。入り込んでいるやもしれぬと」
「何だと!?」
皇帝がカグラに視線を移すと、カグラも大きく頷く。
「…ゼンドラル。ダイナレートを呼んでくれ」
「はっ!」
すぐに魔術師長のダイナレートが呼ばれ、取り敢えず俺達がドラゴンの声が聞こえる事は伏せて事情を説明する。
「サンジカラですか…。もしや、牢の魔術もそやつが何かをしたのかもしれません。今から内密に私が魔術を掛けて参ります」
「頼んだぞ」
俺はこっそりと、ダイナレートに魔術が掛かっていないか調べる。
あ、この人規格外に強そうだから、大丈夫そう。
「…皇帝閣下、ダイナレート殿。僭越ながら、こちらをお持ちください」
「こちらは?」
俺は、ダイナレートに小さな赤い紙を数枚渡す。
「私が作った魔道具の一つです。壁や牢の格子にこっそりと貼り付けてください。瞬時に貼り付けたものに同化します。何かあればすぐに周りに分かりますし、罠でもあります」
俺がそう言ってテーブルに貼って見せると、すぐにテーブルに同化して見えなくなる。
サッと剥がすと、また赤い紙に元通りだ。
まぁ、盗聴器とかそんなんも備えてるけど、そこは俺にしか使えないから黙っておく。
「何と…!これがトーレの賢者様の発明の一つですか」
「うむ、ギル殿の作ったものなら安全だろう。ダイナレート。気付かれぬ様にな」
皇帝の許可もおり、ダイナレートは急いで出て行く。
取り敢えず、急ぎの連絡は終わったので、竜の一族の話になる。
「さて、竜の一族だが。私も言い伝えとしか知らぬのだ。ゼンドラル。説明を頼む」
「かしこまりました」
そこから、竜の一族の説明が始まった。
竜の一族の出生は謎。
おいおい、謎なんかいと思いつつも、俺達は静かにゼンドラル公爵の説明を聞く。
竜の一族とは、名の通り竜と共に暮らしていた、竜と会話が出来る一族だと言う。
エルフ族の様に一族で固まって暮らしており、皆竜と会話が出来たのだとか。
しかし、他所から竜や権力を巡る争いが始まると、竜の一族は竜と身内を守る為にとひっそりと生きて行く事にしたそうだ。
「竜と共に生きる為、周りと一線を引き、関わりを絶ったと聞いている。それでも竜の力は魅力的で、その力を狙って誘拐なども起こり始めた。竜の一族との子供なら、竜と会話ができるはずだと」
しかし、攫って無理やり子を成しても、その子供は竜の言葉を理解出来なかったそうだ。
「悲しい事に、その渦中に巻き込まれた竜の一族は、迫害されたり命を落とした者も多かったそうです。その為、ドラゴンは一族を守る為にと離れて行ったと聞いております」
その後、竜の一族は完全に存在を消してしまったんだとか。
何百年も前の話らしいのだが、なぜまたドラゴンが人間と共存できる様になったのか。
それは、覚醒遺伝の様に、再び会話が出来る者が現れたからだと言う。
ゼンドラルは、まっすぐ俺を見た。
ん?
何だ何だと思っていると、衝撃的な事実を口にする。
「…ドラゴンの管理者は、殆どが記憶持ちなのです」
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