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185 推しとドラゴンの話
しおりを挟む「…カグラ殿。大丈夫ですか」
「あ…。はい。大丈夫です」
青い顔になったカグラを、ハンクが優しく支える。
何事かと、覗いていた騎士達の姿もチラホラ見える。
それを見たモモルルは、フンと鼻を鳴らす。
『案ずるなカグラよ。この者達が我と話が出来たとしても、お主が管理者だ。文句がある奴らは私にとっては害悪だ。また私が消し去るまでよ』
「モモルル…」
チラリと周りを見ると、先程の職員がニヤニヤと笑いながら、何やらコソコソ話して動こうとしている。
なるほどね。
カグラは可愛いし、愛国心もしっかりあるし、努力家な感じがするから騎士達にも人気なんだろう。
爵位も授けられた上に、良い縁談も多く来ているとなったら、帝都の貴族が妬ましく思って足を引っ張ろうと考えていても、おかしくは無いか。
「ええ、そうですね。私達が会話が出来たとしても、管理者はカグラ殿です。それに不満がある方は、モモルル殿のおっしゃる通り害悪でしょう。消し去られても仕方ありません」
「そうだな」
俺と父様がそう言うと、職員はビクリと体を震わせて固まっていた。
ワザと通る声で言ったからね。
「…なるほど。ジャメル家の方々はドラゴンと会話が出来るのですね。ですが、ドラゴンはカグラ以外は認めていないと」
ゼンドラル公爵の言葉に、俺達は大きく頷いた。
先程の職員にチラリと視線を流すと、真っ青な顔をして俯いていた。
外の騎士達も、厳しい視線を職員達に送っている様子から、日頃からカグラへの態度が悪かったんだろうな。
「なぜ私達が会話が出来るのかは分かりません。しかし、ドラゴンは自分で管理者を選ぶ事に変わりはありませんから…。モモルル殿。もしカグラ殿に害をなす者がいた場合、その者が住む場所全てが消えてしまうのですか?」
俺の質問に、モモルルは意図を理解した様で、グルルと怒りの唸り声を出す。
『ふん。無論』
「ああ、それは大変です。帝都の者でしたら、帝都が危険ですね」
俺とドラゴンのやり取りを、カグラは驚きながら聞いている。
「うむ。その時はどこか帝都から離れたところへ、その者達を隔離せねば危険だな」
テオも話に乗ってくれる。
しかも、それなら仕方ないとばかりに僻地へ送らねばと言ってくれるから、大好き!
「ギル様…」
カグラが安堵した顔で俺を見て来るので、俺は笑顔を向ける。
ゼンドラル公爵も話の流れが分かった様子で、ギロリと周りを睨みつけて溜め息をついた。
「…取り敢えず、皇帝へ説明が必要でしょう。今後カグラに害を及ぼす危険がある場合は、国家の危機です。カグラも、何かあれば早めに相談する様に。ドラゴンが動いてからでは遅いですから」
「はい」
ゼンドラル公爵は控えていた者に早速指示を出し、皇帝との話し合いの場を用意する為に、カグラをハンクに任せて、先にその場を後にする。
『ふむ…。話が早くて助かるな。案ずるな、帝都まで消し去ろうとは考えておらん。その者だけ消し去るまでよ』
「モモルル…」
『それにしても、お主らは竜の一族の末裔か?一族で言葉が分かる者達が、まだ残っているとはな』
竜の一族??
何その厨二病くすぐる言葉は!!
俺達は顔を見合わせ、取り敢えずここでは無く、皇帝との話し合いの時に聞いてみようと頷きあう。
『嫌な予感がする。赤いドラゴンの子供にはこちらから許可を出した。もしもの時は共闘を願う』
その言葉に、何か起こるのかと俺達に緊張が走る。
「もちろんだ。もしもの時は全力で対応しよう」
兄様が力強く言うと、周りに緊張が走る。
『…ふむ。カグラよ。こやつらは中々腕が良いぞ。遠慮せずに戦闘は任せておけば良いぞ。こやつらは人並みでは無い。ドラゴンも倒せるだろう』
「ええ!?ジャメル家の方々はドラゴンを倒せると!?モモルルったら、ドラゴンを倒す事は不可能と言っていたじゃない…。それに、私もしっかり戦いますよ。足手纏いになりそうでしたら、言ってくださいね」
ドラゴンを倒せると言う言葉に、周りの騎士達も驚愕していた。
いやはや、そんな訳無いじゃんと思いつつも、カーリンと稽古をしているなら有り得なくも無いのか…?
『サンジカラの魔術師には気を付けろ。もしもの時は私も全力で潰しにかかるが…。そう言えばお主らの名は何だ』
モモルルの言葉に、俺達はそれぞれ自己紹介をしつつ、サンジカラの魔術師とはと聞く。
『コソコソと悪い魔力が動いている気配がするのだ。ふむ。お主らの魔術なら十分蹴散らせるであろうが…。敵は味方の中に隠れているかもしれない。気を付けよ』
モモルルの言葉に、俺達は声を出さず目で合図を送りながら頷きあう。
聞こえていない方々も、何かあると分かっている様で、黙っていてくれる。
「分かりました。それでは、私達も場所を移しましょうか」
「分かった。私が案内しよう」
テオの言葉に、俺達はモモルルに挨拶を済ませて、カグラも連れて話し合いの場へ急ぐ事にした。
今は軍の上層部や魔術師長達と話し合いをしているそうだから、丁度良いかもね。
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