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182 推しと警戒の始まり
しおりを挟む「大変です!!ザラムゼフ伯爵家のチョントが脱獄したとの知らせが入りました!!」
「何だって!?監視はどうしたのだ!!」
あらら。
まぁ、大人しく引き下がるとは思ってなかったけど、早かったねぇ。
俺の功績をゴルと名乗って捕まっていたチョントは、牢獄に入れられていたはず。
タニアの手先だから、やはりタニア派が動いてるんだろう。
「それが、監視の中に裏切り者がいた様です。何でも、最近流行っている観劇を主催しているワークが裏で糸を引いていた模様。サンジカラとの繋がりも分かりました」
「何と言う事だ」
観劇の主催…。
やっぱり、サンジカラ関係だったんだね。
「あの観劇はサンジカラの手によるものか…!」
「おかしな話ばかりでしたものね。しかし、若い者を取り込む手腕は恐ろしいモノがありますわ」
おかしな文化をじわじわと拡げて、流行り物が好きな令嬢令息から操るつもりだったのか。
…頭弱い子しか引っ掛からなくない??
賢そうな子は堅実に婚約者から見初められてたりするし、今後はこっちの話劇を作っていけば良いのに。
「やはりサンジカラ繋がりか。タニア嬢にもその疑惑があるな」
「ええ。しかしどうやって脱獄を企てたのでしょう」
話によると、何と劇のファンである令嬢達が、ワークに唆されて秘密事項を喋っていたんだと。
しかもまだ学園に在学中の令嬢らしい。
先程の子達もだろうか…。
学園の令嬢なら多少頭が弱くても、周りも微笑ましく見ている年齢かもしれない。
いや、そんな事無いな。
俺はバリバリ動きまくってたし、俺と同じクラスの方々は品行方正で素晴らしかった。
他のクラスだと、ちょっとおバカさん位が可愛いわよって親もいたみたいだけど。
教育って大事だな。
「それが。令嬢達が先程、親と共に自供したのだとか」
「何とまぁ嘆かわしい…。しかし早くに間違いに気が付けたのなら、まだ救いがあるのかもしれんが…」
おお、それは良い進歩だよ。
それに、脱獄後すぐに自供したなら、案外早くチョントは捕まるかもしれないね。
そう思っていると、俺はテオと共に別室へ移動するかどうか提案される。
「もう少し事態を把握しておきたいな」
「そうだな。少し待ってみよう」
パーティー様に用意されていたソファーに座り、俺はテオや家族と今後について話し合う事にした。
「我々は明日にでも帰国予定であったが、万が一を考えて、こちらで行動する事にしたい。もし戦闘が始まるのなら協力は惜しまない考えだ」
「私も同意見ですね。少し問題がありますが…」
「ああ。その場合は私が一時離れるしかあるまい」
父様とホセ兄様は難しい顔をしている。
何か予定があったっけ?
「…実はな。カーリンが一緒に行くと騒いでいたんだよ。何とか留守番をさせて来たが、帰りが遅くなったら乗り込んで来るかもしれん」
レッドドラゴンの心配か!
子供のカーリンは、俺より何より父様兄様に懐いているから仕方ないけど、こちらにはグリーンドラゴンもいるから、気を付けないといけないよねぇ。
ナワバリ争いとかってあるって聞くし。
確かに大変だなと考えていると、周りの貴族達も話に加わる。
「ご家族の方ですか?」
一人の騎士にそう尋ねられ、父様は首を振る。
「いえ。…いや、家族と言えば家族なのですが。我が領土のレッドドラゴンの子供です」
「レ、レッドドラゴン!?」
「ドラゴンがついて来ると!?」
トーレではレッドドラゴンの子供が父様達に懐いているのは知られているから、そんなに驚く話では無かったけれど、帝国では驚かれて当然だったね。
こちらのドラゴンの管理をしている方にも、話を通しておかないといけないな。
テオをチラリと見ると、テオも同じ事を考えた様で、近くの貴族にドラゴンの管理者の所在を尋ねる。
「ああ、カグラ殿ですね。確か別室で控えているはずですので呼んで参ります」
「いえ、私が迎えに行きましょう」
「いやいや、私が…」
ドラゴンの管理者はカグラって人なんだね。
それにしても、誰が迎えに行くかで争うのは何故だ?
「…カグラ殿は平民の出ではありますが、容姿も性格も可愛らしいので、騎士達に人気なんですよ」
そこに、婚約者を送ってきたガルドル伯爵が、苦笑しながら俺達に説明する。
この人が可愛らしいと言うのなら、相当なんだろうな。
容姿も性格も可愛くて、伯爵位でドラゴンの管理者だったら、嫁にって思う貴族がいてもおかしく無いよね。
それにしても、別室で控えていると言うことは、もしもの時に備えてるって事かな?
「カグラ殿には帝都の隣の領土が提供されているんだ。そちらでドラゴンリーフは栽培されている。栽培自体は国の優秀な魔術師達が管理しているが、ドラゴンの世話はカグラ殿が行なっているんだよ。そしてもしもの時は戦える様にと、ドラゴンは皇城騎士領の近くにドラゴン用の住まいを準備されている。カグラ殿も一緒に暮らしており、足手まといにならぬ様にと訓練を受けているそうだ。元々魔術の才があった様で、腕前も中々だぞ」
テオの説明に、俺は感心した。
「それはそれは。立派な方ですね」
平民だったのにドラゴンの管理者と言うことで爵位を授けられ、覚える事や学ぶ事も多く大変だっただろう。
帝国に囲われているなんて言うけど、自分の立場を理解してしっかり努められる人って、貴族平民関係無く立派だよね。
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