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169 推し達との移動
しおりを挟む随分記憶が過去に戻ってしまっていたな。
そう思いつつ、赤い鱗に湧く帝国の方々に笑顔を向けておく。
「さて、もう馬車に乗せても良いな?さ、ギル」
「はい。それでは失礼します」
周りの方々に挨拶をしてから、俺の執事であるサーディンと共にホセ兄様の馬車へ移動する。
「ふむ。ここからは別行動か。何が起こるか分からないから、しっかりと剣は持っておこう」
「うん」
まぁ、ホセ兄様がいたら、何かあっても大丈夫だとは思うけどね。
そう思っていると、馬車がテオを乗せた馬車とは違う道を進み出す。
流石と言うか、やはり帝国の城は庭も馬鹿でかいなと感心する。
だって、馬車で悠々と移動できるくらいだからね。
馬車は、そのまま美しい花の咲く道を進み、白い大理石が敷き詰められた美しい停車場に停まる。
こちらもずらりと騎士や魔術師が並び、こりゃ凄いなと感心する。
そこに、黒ずくめの黒髪黒目の、風格あるおじいちゃんが、護衛を付けて現れる。
「ここからご案内させていただきます、宰相のマル・ゼンドラルです。よろしくお願いいたします」
おお、この人が帝国の宰相ゼンドラル公爵か。
皇帝の右腕で、切れ者として有名だな。
俺達はそれぞれ馬車から降り、ゼンドラル公爵の前に立つ。
父様とホセ兄様が降りると、周りの騎士達が騒つくのが分かる。
「これこれ。全く。ああ、失礼。お二人の活躍は予々聞き及んでおりますからね。申し訳無い。こちらが皇城執事代表のカフェールトでございます。皇帝閣下がお呼びになりますまで、こちらでおもてなしをさせて頂きます。どうぞ、先の応接間へご案内いたします」
紹介されたシルバーグレーの背の高い執事は、ピシッと背筋を伸ばし頭を下げる。
「ありがとうございます」
ここでは、トーレの代表であるリーナイト公爵の、セルジオ様を先頭に付いて行く。
ゾロゾロと、護衛の騎士や執事も一緒だ。
セルジオ様にエスコートされるジェレミー兄様に、周りの騎士や護衛達が騒つく。
「…美しい」
「ギル様の兄上だそうだ…」
「つまり、ホセ様の弟君…?」
驚愕した空気に、ホセ兄様も苦笑する。
ちょっとー!!
失礼しちゃうなぁ。
ホセ兄様もカッコいいでしょ!?
そりゃジェレミー兄様は特別に天使な美人で、ホセ兄様とは系統が違いすぎて驚く気持ちは分かるけどさぁ。
そう思いつつ進むと、カンカンと剣が交わる音がする。
「こちらは騎士の訓練場です。皇城内にあり、いつでも駆け付ける事が出来る様になっております」
ほうほう。
やっぱり、人数も多いし広さもトーレの倍以上あるなぁ。
俺達が立ち止まって見学していると、こちらに気が付いた騎士達が騒めき始めた。
「と、トーレの守り人じゃないか?」
「本当だ…!ジャメル騎士団だ」
ふふふ~ん。
父様とホセ兄様は、近隣諸国でも腕が立つ騎士として有名だ。
なんだか鼻が高いぞ~。
俺がニコニコしていると、テオの護衛でケンとユウリの姿が見える。
今回はドンガルバとゲールがテオに同行してるから、二人はこちらで騎士達に稽古を付けているそうだ。
「ギル様、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
二人と言葉を交わすと、ゼンドラル公爵がお知り合いですかと聞いてきた。
そりゃ、テオの護衛ですからね。
「何度かテオドール殿下と同じパーティーで活動をさせて頂きました。宰相。ギル様はテオドール殿下の剣を、受ける事が出来たんですよ。私やユウリも何度か手合わせしましたが、中々の腕前です」
「なんと…!」
ケンの言葉に、ゼンドラル公爵は驚き、周りの護衛や騎士達が騒つく。
「ふふ。一応は父や兄から剣の指導を受けておりますので、少しは覚えがある程度です」
「いやはや。ケンやユウリが申すのですから、間違い無いでしょう」
ゼンドラル公爵の手放しの賞賛に、テオの婚約者だから、余計に褒めてくれるのかなと思いつつも気分が良い。
「…テオドール殿下の婚約者様だ」
「美しい方だが、やはりジャメル騎士団だな…」
ヒソヒソと話す騎士の中から、ずいっと一人の騎士が前に出て来る。
体格の良い、金髪を短く切り上げた碧眼の、まぁまぁキレイな顔をした青年だ。
「宰相!是非ともジャメル騎士団の方々と手合わせを願いたい!!」
おや、こりゃ失礼な騎士だね。
随分と自信がある様子だし、若手のホープって感じなのかな?
俺がそう思っていると、ゼンドラル公爵はピクリと顔を引き攣らせつつ静かに叱責する。
「マーカトラ。ジャメル騎士団が素晴らしい腕前で、己の腕を試したい気持ちは良く分かるが、今回はテオドール殿下とのご婚約の為に、ギル様のご家族としてお越し頂いておるのだ。それが帝国の騎士の迎え方か、良く良く考えて行動せよ。失礼であるぞ」
おお、さすが帝国の宰相。
父様達を褒め、相手の気持ちも分かるとフォローしつつ、帝国の騎士として振る舞えと言う言葉は、中々反論しづらいだろう。
ゼンドラル公爵の言葉に、マーカトラと呼ばれた騎士は怯む。
「マーカトラ、下がりなさい。宰相、客人の方々。我が息子が無礼を働き申し訳無い」
そこに、マーカトラの父親だと名乗る中年男性が現れる。
金髪碧眼で、マーカトラを鋭くした感じのおじ様だ。
ガタイの良さから、この人も騎士だろう。
「皇城騎士団で団長の一人をしております、センフラ伯爵です」
ゼンドラル公爵が紹介し、センフラ伯爵は頭を下げるが、雰囲気からしてこちらを下に見ているのが良く分かる。
確か、テオに聞いた話だと、娘とテオを結婚させたがってた貴族の一人のはずだ。
まぁ娘は十五歳くらいで随分と若い為、本人も乗り気じゃ無さそうだったみたいだけど、俺も若いからねー。
さて、父様達が相手をしても良いんだろうけど、祝いの席で剣を交えるなど失礼だしね。
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