転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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168 推しの心配事

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「ふむ。皇帝には一応知らせておいても良いか?」

「もちろんです」

ジャメルに帰宅後、すぐにテオとの話し合いが行われた。

テオには、俺には前世の知識だけがあり、昔の記憶は無い事は説明してあったので、スムーズに話が進む。

「もしギルに昔の記憶が戻ったとしても、私がギルを愛する気持ちに変わりは無い。困難かもしれないが、必ずギルを支え、ギルと共に生きて行きたいと思っている。もし、帝国が難色を示すのであれば、私は皇族から抜けるだけだ」

テオが家族にハッキリとそう言ってくれて、俺は胸が熱くなる。

父様達も、ホッと安心していた。

帝国の皇族がここまで言うのだからと、俺とテオの婚約は継続で問題は無いと一同安堵したのだ。

「それでは、婚約の挨拶の話し合いに移りましょう」

父様がそう切り出すと、テオも頷き、ホセ兄様が説明を始める。

「護衛については、我が騎士団を数名同行する予定です。ギルも、剣を携帯する様に」

数名で良いのかと聞かれそうだけど、要らないくらいなんだよね。

なんせ父様とホセ兄様が居るからねぇ。

「馬車は四台ですね。テオドール殿下とギル。私達夫夫と、父とシェル様。そしてリーナイト公爵夫夫ですね。レッドドラゴンリーフの治験についても、進めればと」

「ああ。何人か候補を集めてもらっている。それについては…」

何とか帝国へ挨拶に行けそうだな。

内心ホッとしていると、ふとテオの表情が硬い印象を受ける。

どうしたんだろう。

一通り話し合いが終わると、テオが疲れているかもと思い、俺とテオは離れで過ごすと告げる。

「私とシェルは、また王都で今後の調整を行う予定だから、今日はリネーの屋敷に帰ろう」

「ああ。それなら、ジェレミーに届けて欲しいものが…」

父様達も色々忙しい様子だったので、俺とテオはそのまま離れへ引っ込んだ。

「お風呂は仕度が出来ております。こちらに何か軽く軽食を準備いたしますね」

「ありがとう」

メイドのララに礼を言いつつテオを見ると、やはり少し表情が硬い。

「テオ?どうしたの?」

「あ、ああ。…すまない」

テオは、おれを心配させてしまったなと苦笑する。

うーん。

これは何かあるぞ!

「テオ、お風呂に入ろ?」

「!」

いきなりのお誘いに、テオは驚いた顔をするが、俺は腕を引いてグングンと脱衣所へテオを押し込んだ。

軽食を持ってきてくれたララに人払いを頼み、俺もいそいそと脱衣所に入る。

テキパキとテオの脱衣も手伝い、広い浴槽に二人でゆったりと浸かる。

「ふぅ~。…で。どうしたのテオ」

「…ギルには敵わないな」

テオにピッタリとくっつくと、テオは肩に腕を回し俺を抱きしめた。

何かに困っているのか、傷付いている様にも見えるけど。

心配そうにテオを見つめていると、

「…ギルに昔の記憶が戻り、もし誰か想い人がいたらと思ってしまった。もし、今世でもその者が現れた時、私はギルを手放すつもりは無いと」

「テオ…」

テオが、そんな事を考えてたなんて。

俺は大丈夫だと言いかけて、記憶が無い事でそれも言い切れないと唇を噛む。

「帝都に記録のある記憶持ちは、前世の記憶を持っており、死に別れた恋人に会えたらと各地を探し回ったと記述があった。結局その者は探し出せず、一人で生涯を終えたとあった」

テオの話を、俺は静かに聞く。

「しかし、別の記憶持ちは恋人を見つけ出し、相手も記憶持ちであったと。二人はこの世界で結婚したと記述もあった。生まれ変わっても相手を愛していたのだ。もちろん、そうで無い者も多くいた様だが…。もしギルに記憶が戻り誰か他の者への恋心が蘇ったらと思ったら。情けないな…。それでも私は君を手放せないと強く思ったんだ」

「テオ…」

まさかの記憶持ちの弊害に、俺は深呼吸をして考える。

確かに、前世で愛し合った人がいて、その人がこちらの世界にいたとしたら、きっと俺も探し回るだろう。

だけど、俺には記憶が無いんだ。

知識しかないから、記憶持ちって言うより、知識持ちだしね。

「ね、テオ。俺の話を聞いてくれる?」

「ああ」

俺はテオと向き合う様に体制を変える。

「確かに俺は前世の知識と言う記憶を持っているけど、この世界で成長する上で構成された性格や記憶達は、ギル・ジャメルなの。家族が大好きなのも、いろんな事を考えて周りを少し幸せにするのが好きなのも、嫌いな奴らを打ち負かす事が好きなのも、魔術や剣術に優れているのも、全部ギル・ジャメルが培ってきたモノなんだ」

テオは、頷きながら静かに俺の話を聞いてくれる。

「だから、生まれて初めて恋心を抱いて、愛しいと言う感情を抱いたのはギル・ジャメルのモノなの。もちろん相手はテオだよ。もし、昔の記憶が蘇って来たとしても、今の俺を築き上げた年数と記憶と感情達が、その記憶に負けるとは思えない。テオ。俺が逆の立場だったら同じ様に不安だと思う。でも、あなたを愛しているギル・ジャメルを信じて欲しい。そして、手放さないで欲しい」

俺が力強くそう言うと、テオは優しく俺を抱きしめる。

この言葉は、テオだけに向けたモノではない。

俺に向けた言葉でもある。

前世の知識はあるけど、男性が恋愛対象だったとか、推し活してたなって記憶しか無かった事に、何の疑問も持っていなかった。

ジェレミー兄様の病気を治す事が第一だったし、テオに出会ってからも彼一直線には行けなかった。

でも、今は違う。

俺が今後一生を共にと決めたのは、テオだ。

もちろん家族と縁を切るなんて絶対に無いけど、第一に愛して行くと決めたのはテオだ。

そんな相手を不安にさせてしまったなんて、なんたる失態。

「テオ。これからは、ちゃんとテオと秘密を共有して行くね。だから、不安にならないで。俺が家族以外で愛しているのはあなただけ。胸が締め付けられるくらい想ったのもあなただけ」

「私も、生まれて初めてこんなに強く想ったのは君だけだよ」

テオの背中に腕を回し、俺達は強く抱き締めあった。

「愛してるよ」

「ああ。愛している」

そして、やっと笑顔になってくれたテオに、俺はキスをした。








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