転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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164 推しへの秘密の告白

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「ギル?そろそろ屋敷に着くぞ」

ぼんやりと意識を過去に巡らせていた俺は、テオの肩で眠ってしまっていた様だ。

「…あ、うん。ごめん、話をしようと言ったのに。寝てたね」

慌てて体を離そうとする俺の肩を、テオが優しく抱く。

「このままで。疲れていたんだろう」

「ありがとう」

テオの言葉に甘えながら、俺達はジャメルの屋敷へ到着した。

少しテオと話がしたいからと、そのまま離れへ向かう事を告げると、馬車の軽食やらを部屋へと準備してくれた。

「もう少し休むか?」

「ううん。大丈夫だよ。ありがとう」

そう言って、二人でソファーに座り一息付く。

「ぐっすりだったな」

「ふふ。テオとマラサッタで過ごした時の夢を見てたんだ」

テオに揶揄われてそう言うと、テオは左の眉を上げて驚き、笑顔で俺を抱きしめる。

驚きつつ嬉しい時、テオは良くこの表情をするなと愛おしく思う。

「それで、話とは何だ?」

テオに促され、俺は覚悟を決める。

テオから少し体を離し、体ごとテオに向けると、テオも背筋を伸ばす。

「…あのね。俺の卒業パーティーで、自分は聖女だと騒いだ令嬢を覚えてる?」

「ああ。ギルは存在しないなどと、随分と失礼な者だったな」

テオは、思い出したのか嫌そうな顔をする。

王子達の事など、もっと失礼な事を言ってたんだけど、テオにとって一番嫌だったのが俺の話だと知り、少し気持ちが高揚する。

「うん。あの令嬢、転生とか言ってたでしょ?自分の知っている話と違う!って」

「そんな事を言っていたな」

それがどうしたのかと、テオは不思議そうな顔をした。

あの令嬢ことパニは、既にラッカルヘ送られたと聞いている。

自分の思い描いていた世界とは、全く違った事に茫然自失で、げっそりしていたとも報告が来ている。

父親はどこかホッとした様子でラッカルヘ向かったそうなので、もしかしたら父親も薬物を使われていたのかもしれないな。

「うん…。あのね、父と母が亡くなった時。俺は三歳だったんだ」

唐突に昔の話をする俺を、訝しみながらもテオは静かに話を聞いてくれる。

「とても悲しくて。あまりにも衝撃が大きかったんだ…」

「両親を二人ともだからな。三歳などまだまだ親に甘えたい歳だ。当然だろう」

そう言って、俺の頬を優しく撫でる。

ああ、なんて優しい目をするんだろう。

テオの目を見て、胸がギュッと締め付けられる。

もし。

もしテオが俺の秘密を知って、もし俺との結婚がダメになったとしても、この人にはちゃんと伝えないといけない。

「…その時。その時に、昔の記憶が甦ったんだ」

俺がしっかりテオを見つめながら言うと、テオは少し驚いた顔をしたが、そうかと小さく呟いた。

「今の世界とは違う世界の記憶なんだ。俺の覚えている日常に魔術や魔力は無くて、魔物も存在しないしドラゴンも居なかった。皆ドレスや礼服じゃ無いし、基本的には恋愛も自由で…。もちろん貴族階級がある所もあったけど、俺の暮らす所はそうでも無かった」

黙ってしまったテオに、俺は焦りながらも説明を続ける。

「学校も六歳から十五歳までが義務教育で、その後に三年学校に行って、さらに四年から六年大きな学校に行くんだ。俺の記憶だと、大きな学校に通っていたんだと思う。名前も容姿も覚えていないんだけど、あちらの世界で体験したものや事が、俺の発明のきっかけになってるんだ」

テオは真剣な顔で聞いていた。

「その、あちらの世界では同性同士では子供は産まれないんだ。だから同性同士では結婚できない国が多かった。俺の国もそうだったよ。それでも同性同士で恋人になる人達も沢山いた」

こちらとあちらの違いを説明する為にそう言うと、テオはとても驚いた顔をした。

「ギルは?ギルは同性同士の結婚は嫌だったのか?」

そう言って俺の両肩を掴む。

「ああ、すまない」

全く痛く無いのに、心配そうな顔をするテオに、俺は笑顔で首を振る。

「ううん。俺、昔の自分の記憶は無いんだけど、男性が好きだったって事だけは覚えてるの」

「そうか…」

ホッとした顔のテオを見て、ああ、大丈夫だなと確信した。

そして、テオの胸に甘える様に飛び込んだ。

「テオ…。こんな俺と結婚して大丈夫?」

「ギル…」

ギュッとテオにしがみ付くと、テオは優しく抱きしめてくれた。

そして、俺の頭を撫でながらキスをする。

「ギル…。一人で抱え込んで辛かっただろう?」

「テオ…」

テオの優しい言葉に、鼻の奥がツンとしてくるが、今は泣いている場合じゃないな。

「ギル。話してくれてありがとう。そうか、ギルの発明や開発は、前世の記憶が関わっていたんだな」

「うん…」

テオは、俺を横抱きにして膝の上に乗せる。

そして、また優しくキスの雨を降らす。

「心配はいらない。この世界では、前世の記憶を持って生まれて来た者の文献も少しは残っているんだ」

「え!?」

いや、初耳なんですけど?

俺が驚いてテオを見ると、テオは苦笑する。

「国家機密に近いからな。王族の中でも知っているのは限られているだろう。ギルが賢者と聞いた時も、もしかしてと頭に過ったくらいだ」

パニ令嬢が転生って言ってたくらいだから、他にもいるだろうとは思っていたけど。

テオは俺の頬を優しく撫でながら、前世の記憶を持つ者の話をしてくれた。
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