転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
168 / 247

163 推しとの出会い(回想)④

しおりを挟む

「…そうか。分かった。レッドドラゴンの情報が来たら、すぐに君に知らせよう」

「!」

テオの言葉に、俺は驚いて顔を上げる。

レッドドラゴンの情報なんて、今考えれば極秘情報だろう。

それでもテオは、俺に教えてくれると言ったのだ。

その後は、一緒に行動を共にする様になった。

ギルドで俺が注目されたのは、テオが面倒を見ると公言していたかららしい。

もちろん、Sランクの冒険者と得体の知れない俺が行動すると、嫉妬やっかみもあったのだが、俺が魔術や剣術で相手をしたりしていたらそれも無くなっていった。

そして次第にテオに惹かれる気持ちが大きくなっていく。

テオは優しく紳士で、それでいてとても強くて頼り甲斐がある。

高価な薬草の依頼の時も、俺に多く渡してくれるし、俺の知らない薬草の効能なども詳しく教えてくれる。

学園の図書室より情報が多いなと、感心したものだ。

「この薬草は、遠い国の魔力拒否症に苦しむ平民が良く飲んでいる薬草だ。今はグリーンドラゴンリーフがあるが、以前は他の薬草に頼っていただろう?その中でも、貴族や王族しか使用出来なかった高価な薬草より、こちらを使った者の方が長生きしていたと分かったんだ」

「この薬草は知らなかった…」

国毎に、薬草の種類が違う事は知っていたが、初めて見る薬は錠剤で瓶に入っていた。

「こちらには自生していないし、風土に合わず育てる事は困難だ。だが、で薬が手に入る。この一瓶が約一月分と考えて、金貨一枚だな。グリーンドラゴンリーフと併用して使う者も多い」

一月で金貨一枚なら、確かに安価だと思い、俺はジェレミー兄様にこちらも服用してもらおうと、取り敢えず三ヶ月分を買い求める事にした。

この時に、テオは俺がただの平民では無いと確信したそうだ。

この世界の通貨は国毎に違うのだが、小切手、金貨、銀貨、銅貨が主に使用されている。

平民の一月の平均的な収入は金貨五枚程なのに、金貨一枚を安価だと納得したからだ。

まぁ、元々グリーンドラゴンリーフを買えている時点で、平民では無いとバレていたのかも知れないが…。

「…ギーは何か欲しいモノは無いのか?」

「え?」

欲しいモノ??

その日もテオに薬草や討伐の話を聞きながら、ギルド近くの食堂で食事をしていた。

平民向けであり、冒険者が良く使う食堂で、テオはSランクと言う事もあり、よく個室やパーテーションで区切られた場所を利用していた。

「うぅ~ん。欲しいモノかぁ…。今は、薬草以外は特に無いかなぁ」

レッドドラゴンリーフ以外に無いと言うと、テオは苦笑する。

だって、ジェレミー兄様が助かるかも知れない最後の頼みの綱だからね。

「それはもちろんだが、ギー自身が欲しいモノだ。…いや、最近冒険者の若者の中でも、組紐のアクセサリー等が流行ってるだろう?」

あー、なんか流行ってますね。

組紐にガラス玉などを通したブレスレットだね。

冒険者や平民には流行っているらしいんだけど、俺は当時アクセサリーに興味が無かった。

「俺は興味無いかな。欲しいと思ったら買うだろうけど、今はそんなに…。あ、木の実のパイは食べたいかも」

俺が食べ物に話を変えると、テオは苦笑しながら注文してくれた。

露店などでも何か欲しいモノは無いのかと聞かれたが、俺は食べ物以外は特に無いと言っていた。

兄様達への土産は、俺が買わないとと思っていた事もあるけど。

今思えば、テオは俺に何か贈りたかったのかもしれない。

「…ギー。今夜は冷える。こちらへ」

「うん」

二人で野宿する時も、俺が魔術で目眩しを掛けたので、襲われる事は無かったが、念には念をと二人で交代で見張をした。

寒い時はくっ付いて寝たり、小屋を利用できる時は、数が限られているから同じベッドに寝たりもした。

どんな時も、俺が寝るまでしっかり周りを確認してくれているし、テオはほとんど仮眠を取っていない時もある事を知っていた。

テオが仮眠をしないなら、もう行動を一緒にしないと怒ったら、一応仮眠を取ってくれる様になった。

その時はケンやユウリが居てくれたりして、過保護だなと思っていたが、皇帝の弟なら当然だったんだな。

一度、どちらも居ない時に俺が本気で防護魔術を使ったら、テオは驚きながらもちゃんと寝てくれた。

その時に見た寝顔に、俺は思わずときめいてしまったのだ。

いつも精悍で、カッコ良くて。

Sランクの冒険者で、しかも皇族だからか、どこに行くにも周りを良く見ていた。

その鋭い目が、俺を見る時は優しくなる事も、俺は気が付いていた。

俺がつい気を抜いて笑顔を見せると、テオはとても優しい、愛おしそうな顔を見せてくれるのだ。

俺はあの顔を知っている。

無くなったゼノン父様が、コリーヌ母様を見ていた時の顔に良く似ていたからだ。

そんなテオの、寝顔は俺くらいしか見られないのだろうと思うと、とても特別な人間になった気がしたのだ。

(この思いが恋なんだろうか…)

ジェレミー兄様の病気を治すんだと気を張りすぎている俺に、テオは優しく色々教えてくれ、助けてくれる。

そんな相手に、張り詰めた気が緩んでるだけなんじゃ無いだろうか。

(でも。この人の隣には俺が居たい。ジェレミー兄様の病気を必ず治して、この人と生きて行きたい)

そんな思いが芽生え始め、俺はテオへの思いを確信していく。

日に日に体調が悪くなっていくジェレミー兄様に、気が気じゃ無い俺に、テオがレッドドラゴンの話を持ってきたのは、共に行動してから一年がたっていた。

そして、俺はテオとレッドドラゴンの元へと向かうのだった。










しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...