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159 推しと赤い鱗
しおりを挟む『おお、久しいなギル。その男は赤い葉の男だな』
『カーリンはレスの所に遊びに行っているよ』
俺とテオがレッドドラゴンの元へ出向くと、ファビとキャルが出迎えてくれた。
二匹は父様達が更にアップデートした寝床で、気持ち良さそうに寛いでいる。
もちろんジャメル家の領地だから、皆好きに出入りは出来ないので静かだ。
屋根もあるし壁もあるし、周りの魔物が減った事により、領民から貢ぎ物の果物や野菜も沢山ある。
厳しい旅をして来た二匹にとっては、ゆっくり出来る天国みたいで、とても気に入ってくれている。
「二匹とも元気そうで良かったよ。実はね、俺はこちらの彼と婚約するんだ。その挨拶に来たの」
『おお、そうであったか。…ふむ。良い縁だ。私とキャルの鱗を贈ろう』
『レスやホセやジェレミー達には贈ったからね。連れて来たのはギルだと言うのに、最後になってしまったな』
気にしないでと言いつつ、俺はテオに通訳する。
その様子を、二匹は頷きながら見ていた。
『やはりその男が番になったか』
『ふふふ。本当に良い縁を結んだな。さ、この鱗を持って行け。お前達を守る力を込めてある。身に付けていれば、体の疲れも取れるだろう』
やはりって、あの時にはくっつくって分かってたのかな?
レッドドラゴンの魔力やその他の力は、底知れないのかもと思いつつ、俺はありがたく鱗を二枚貰った。
親指ほどのサイズで、透き通った赤なのだが、光の反射でオパールの様な輝きをする。
その後は、昼寝の時間だと寝てしまったので、テオと二人で屋敷へと戻る。
「キレイな鱗だな。そして魔力も感じる」
テオの言葉に、先程のレッドドラゴン達の話をすると、楽しみだと笑った。
父様はペンダントで、ホセ兄様はピアス。
ジェレミー兄様はお揃いの髪留めに細工していたけど、俺達は何にしようかなと話し合い、俺が贈ったバングルと重ね付け出来るバングルにした。
王都に向かい、ランデバス商会で極秘に細工してもらい、二人で揃って身に付けると、体が軽くなった感覚になる。
「コレは…!すごいな。体が軽くなった様だ。それに、疲れが抜けていく感覚がある」
テオの言葉に、俺も大きく頷いた。
「うん。すごく守られている感じ。素晴らしいモノを貰ったね」
コレならちょっと無理しても、大丈夫そうだなと考えていると、俺の考えを見透かした様に、テオが迫力のある笑顔で近寄って来た。
「…ギル。この鱗があるからと言って、無理をしない様に」
あら~。
バレてるのねぇ~。
えへへと笑って誤魔化すけど、テオは心配そうな顔で俺を抱きしめた。
「ギルが周りの為に動くのを、止められない事は分かっている。君は誰かの為に必死になれるからな。だからそれを非難するつもりは無い。だご、無理して危険に飛び込む時は、私にも教えて欲しい。止められないのなら、共に戦おう」
「テオ…」
胸がギュッと締め付けられる。
そうだよね。
俺達、結婚して夫夫になるんだ。
俺がちょっと転生前の記憶があったり、チートだったりするからって、それに奢って行動したら、テオは心配するよね。
俺だって、テオに内緒で危険な事されたら心配しちゃうもん。
いけない、いけない。
反省だ。
そう痛感した俺は、テオの胸に頬を寄せて抱きしめ返す。
ちゃんと、テオに俺の事を話さないといけないね。
「…テオ。聞いて欲しい話があるの」
少し声が震えてしまうが、俺はしっかりしろと自分を鼓舞する。
「ふむ。大事な話なら、屋敷で聞こうか」
「うん。その方が良いかな…」
俺が答えると、テオは優しく肩を抱いてくれる。
そして、馬車に乗り込むと、静かに動き出した。
今日はジャメル家の離れに泊まるからね。
馬車の中にはお茶や軽食、お酒も用意されており、テオと話がしたいからと術を掛ける。
「レモンのジャムか。香りも良いし、酸味が程良くて美味いな」
「ね。コレを紅茶に入れて楽しんだりしてるんだ」
そう他愛もない会話を楽しみながら、俺は横並びに座ったテオの肩に甘える。
「…ねぇ、テオ。二人が会った日の事を覚えてる?」
俺がそう聞くと、テオはもちろんだと笑う。
「ああ。あれはゼラン領の外れだったな。あんな危険な所に、一人で居るなんておかしいし、多くの魔物を一気に吹き飛ばしたのには驚愕したよ」
「ふふ。周りに誰も居ないと思ってたから…。テオもキレイに気配を隠していて驚いたよ」
二人の出会いを思い出しながら、俺はテオの手を握った。
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