転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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158 推しとしばしの別れ

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「…ふむ。ダイナレート迄出して来るとは。兄上も気合が入っているな。すまないギル。皇帝への謁見まではしばし離れる事になる。ホセ殿の馬車へ移動してもらえるか?」

魔術師長って事は、トーレで言ったらサーガルド伯爵って事か。

そんな方がわざわざお出迎えって、すごい事だよね。

寂しそうなテオに大丈夫と笑顔で返し、降りようとすると、テオが先にドアを開け降りて行く。

「て、テオドール殿下はどうぞそのまま…」

まさかのテオが降りて来たので、周りはザワザワしだす。

「私の婚約者を、私がエスコートするのは当然だろう?さ、ギル」

「ありがとうございます」

差し出されたテオの右手に、そっと左手を添えて馬車を降りると、感嘆の声が聞こえる。

どうだ!!

今日の日の為にと、テオが作らせた揃いの衣装と、磨き上げた俺の美貌(?)は!!

昨日は念入りに体を磨き上げ、肌も髪もトゥルットゥルにしてもらい、髪は右側の前だけ編み込んで貰っている。

父様達はトーレの正装で上はマントだけど、俺とテオは帝国に合わせた正装になっている。

まだ昼だけど、この世界じゃ昼も夜も燕尾服なんだよね。

ベストもジャケットも黒地に金と銀の刺繍が施されており、ボタンは金。

白いシルクシャツのカフリンクスは、揃いの金とブラックダイヤ。

クラヴァットも白地に銀の刺繍が入り、ブラックダイヤが輝いていて、靴は服に揃えた黒だ。

そして、テオの右腕と俺の右腕には、俺が贈ったバングルが輝いていていて、左の薬指にはテオから贈られた指輪が輝いている。

「まさか、テオドール殿下がエスコートをなさるとは…」

「いや、美しい方だな…。それに、その…スゴイ豪華なバングルと指輪だな…」

「…ああ。その、殿下は随分と婚約者様に贈り物をなさっているのだな」

「あれだけ若く、美しい方なら…」

ヒソヒソと話しているけど、俺、地獄耳だからね!!

俺的には、俺よりキレイな人は沢山いるから自分の容姿に特別自信は無かったんだけど、テオがいつもキレイだ可愛いだ言ってくれるし、兄様や父様も可愛いよキレイだよと言ってくれるから、最近は自分を良く見せる事も力を入れてるんだ。

ちょっと顔周りのお肉を落としてみたり、お尻が上がる様に運動したり、肌に良いモノも食べる様にして、自分でマッサージだってしてる。

魔術で何とかする貴族も多いけど、結局そう言った魔術を掛け続けると負担がかかるし、反動が大きんだよね。

ま、それにしても俺が美貌でいっぱい貢がせてるって思われるのは、心外だね。

苦笑してテオを見ると、テオは怒りを滲ませた笑顔になっていた。

「…指輪は私からの贈り物だが、このバングルは二本ともギルからの贈り物だ」

テオがそう言うと、また周りは騒ついていた。

「スゴイ宝石の数だが…」

「いや、トーレ王国の賢者様だ。開発に関わったモノも多いと伺っているから…」

サササーッと風の様に話が広がって行く様は、なんだか見ていて面白いけど、小さな隣国の田舎領の貴族の情報って、そんなに正確には伝わらないよね~と静観する。

テオにも、にっこり笑顔で大丈夫だよと促すと、テオも笑顔で返してくれた。

「しかし、あの赤い宝石はなんだろう…。強い魔力も感じるし、あの輝き方は見た事が無いな」

そこに、一人の魔術師がズズイと近付いて来る。

長い黒髪を後ろに三つ編みにして、黒い瞳の可愛らしい容姿の青年がこちらに近付こうとすると、ダイナレートがスッと道を塞ぐ。

「…ドムジン殿。大人しくしていてください」

「ええ~?ちょっとだけ~」

「不敬でしょう」

魔術師長であるダイナレートが敬語って、この人何者なんだろうと首を傾げていると、テオが苦笑していた。

「相変わらずだなドムジン。あまりダイナレートに迷惑を掛けるんじゃないぞ。…ギル。彼はドムジン。トルネの末の弟だ」

「ああ!失礼しました!私はドムジン・ガルバンと申します」

そう言って、ドムジンは頭を下げたが、目線はバングルに集中していて少し笑ってしまう。

ああ、ニムラス伯爵の旦那様の弟なのね!

確かトルネも伯爵家だったと聞いてるから、それなりの家の方だろうし、幼馴染の弟って事はテオともそれなりに近い関係って事ね。

だからダイナレートも、強く言い切れないのか。

ダイナレートは平民上がりで、爵位を貰った魔術師だと聞いてるからね。

「魔術の才能はあるのだが、昔から自由奔放でな。ダイナレートも遠慮せず、もっと強く叱って良いのだぞ」

「恐れ入ります」

テオとダイナレートのやり取りも気にせず、ドムジンはジロジロとバングルを見つめている。

「ドムジン。この赤いモノは宝石では無いぞ」

テオが苦笑しながら言うと、ドムジンは目をキラキラさせてどう言う事かと俺を見て来る。

「とても魔力を感じますよ?まさか、賢者様が作り出したモノでしょうか!?」

何か、俺に近い何かを感じるなぁ。

そう思いつつ、俺は笑顔でドムジンに話しかける。

「ドムジン殿、初めまして。ギル・ジャメルです。こちらの赤いモノは、レッドドラゴンの鱗ですよ」

俺がそう言うと、周りは一層騒ついた。

「レ、レッドドラゴンの鱗!?」

「ドラゴンは認めた相手に鱗を贈ると聞いていたが…!」

うちは、父様達が先に貰ってたけどね!

そう思いながら、俺はテオと鱗を貰った時の事を思い出していた。








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