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157 推しと帝都の中心部へ
しおりを挟む貴族街の門番には、既にテオの件が伝えられていた様で、特に留められもせずに門を潜る。
すると、馬に乗った騎士達がキレイに並んでいた。
皆、黒と金を基調とした制服に身を包んでいる。
豪華さからして、皇城の騎士なのだろう。
「護衛?」
「…そんな所だろう」
テオに確認すると、少し眉を顰めて答えたので、テオの希望では無いのだろう。
スッと、前に一人の騎士が出て来る。
長い金髪を一つ結びにした、碧眼で長身の美青年だ。
お目目もパッチリだし、小顔だし。
結構、いやかなり美人だな!!
体付きは細身だが、腰の剣を見る限り騎士だろう。
「テオドール殿下。お帰りなさいませ。ここから城まで我々が護衛させて頂きます。不自由をお掛けしますが、ご理解ください」
これまたキレイな声でそう言うと、グルリと馬車を騎士達が囲う。
そして、馬車は静かに動き出す。
「…もしかしてだけど。彼って」
容姿と動作と雰囲気からして、良い所の子息って感じがプンプンするし、この美人っぷりは噂の彼なのでは。
「ギルは勘が良いな。そうだ。ニムラス伯爵の弟のハレだ」
あ、やっぱり?
長兄も騎士なんだよね?
「一番上の兄は、皇帝付きの騎士だからこちらまでは来ない。…しかし、ハレが来るとは思わなかったな」
苦笑するテオに、俺は大丈夫だよと伝える。
諦めたって聞いてるし、まぁ、俺の値踏みもあるんだろうけど。
「街もすごくキレイだったけど、貴族街もとてもキレイだね。店も大きな建物が多くて、またゆっくりテオとデートしたいな」
馬車が余裕ですれ違える広さの道の両側には、大きな建物の店が並んでいる。
さすがに出店スタイルの店は見当たらないが、持ち帰りなども流行っている様で、このスタイルは見習いたいなと感じる。
「結婚したら、お忍びでゆっくり見て回ろう。ギルに見せたいモノが沢山あるからな」
「楽しみにしてるね」
テオに優しく肩を抱かれ、テオの肩に甘える。
外からの視線も感じるから、ここでキスはダメだけど、仲睦まじいアピールは大事だよね!!
「テオドール殿下ですわ」
「お隣の方が婚約者様かしら?お美しい方ね」
「確か、トーレの賢者様なんだとか…」
「まぁ!賢者様を娶られるのね。さすがですわ」
貴族街だからか、野次馬も品があるなと感じつつ、城へと馬車は進む。
「わぁ…!大きな城壁…!!」
「門ばかりで面倒だが、皇帝が住まわれているからな。中には皇帝家族の住む城と教会。魔術師や騎士達の寮、大臣たちの家もある。クセのある者も多いが、ギルに何か嫌な事を言って来る輩もいるだろう」
テオの言葉に、俺は笑顔で大きく頷く。
「うん。あまりやり込め過ぎない様に、気をつけるね」
俺がハッキリそう言うと、テオは楽しそうに声を出して笑う。
「ハハハッ!さすが私の婚約者だ。その意気だよ。それでも嫌な事や辛い事があったら、すぐに相談して欲しい。君や君の家族を侮辱する事は、私を侮辱する事と同じだからな」
最後は真剣な顔で言うテオに、真顔もカッコいいなと笑顔で返しておく。
事前にテオが色々と教えてくれた事は、頭にキチンと入っているし、父様達にも共有の許可を貰ったから、嫌な奴らの顔を見るのが楽しみ。
俺に喧嘩売るのは自由だけど、潰すのも自由だよねぇ?
「大丈夫。ちゃんとテオと情報は交換したいから、嫌な奴がいたらしっかり報告するね。父様達の護衛に騎士も来てるからやり込められる事は無いだろうし。…父様とホセ兄様が剣を抜いたら大変だけど」
止められる気がしないもの。
今日は護衛でドンガルバとゲールも参加してくれてるけど、父様達って桁違いに強いんだよねぇ。
「そこまで馬鹿な奴は、斬り捨てて構わないさ。ん?城でも出迎えがある様だな…」
城門の前で、静かに門が開くと、ズラリと騎士やら魔術師やらが並んでいる。
さすが皇帝弟殿下だなぁ。
そこに、黒いマントをした魔術師らしいが、とても体格の良いイケオジがスッと前に出る。
短く刈り上げられた黒髪短髪と口髭、黒い瞳からして、魔力の高い魔術師だろう。
「テオドール殿下、お帰りなさいませ。ギル様。並びにご家族の方々。トーレ王国代表の方々。ようこそお越しくださいました。皇帝閣下がお待ちでございます。ギル様並びにご家族の方々、トーレ王国代表の方々はここから客室まで、皇室魔術師長であるダイナレートがご案内いたします。テオドール殿下はこのまま、皇帝閣下の元へとお進み下さい」
おや、ここからテオとは別行動になる訳ですな。
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