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156 推しと帝都へ
しおりを挟む「わっ…!凄い立派な門だね。文献では知っていたけど、やっぱり大きいなぁ」
マラサッタ帝国の帝都はとても広く、周りを防壁で囲われいる。
そんなに高い防壁では無いのだが、多くの見張り台が存在しており、中には更に高い防壁で囲われた貴族街が存在し、その中に城があるのだ。
城は森側に寄っているのだが、森との間には騎士団の寮や訓練所などが存在しており、不審者等にも気が付きやすい構造になっていると聞いた。
門の前には行列が出来ており、一般市民用と商人用、貴族用と分けられていた。
人数も多く設置されているから、スムーズに人の行き来がされている事に感心する。
「はい、どうぞお気を付けて~。はい、次の方。通行証を…。て、テオドール殿下!」
ゆったりしていた門番は、テオに気が付くと気が引き締まった様で、ピシッと敬礼する。
「うむ。こちらが私達の通行証だ。後ろの馬車も私の客人だ」
テオがそう言って、後ろの馬車三台を差す。
今回は正式な婚約者としての訪問だから、父様とシェル様。
ホセ兄様とフロル様。
そしてセルジオ様とジェレミー兄様も立ち会って貰う事になっている。
父様とホセ兄様は家族として、セルジオ様はトーレ王国の代表としての参加なのだ。
「ハッ!畏まりました!どうぞお通り下さい!」
滞りなく審査が終わると、俺達は遂に帝都へ足を踏み入れる。
やはり貴族が多く出入りする場所だから、馬車用の道が広く取られており、二台がすれ違っても十分に余裕がある。
貴族街でも無い外で、これだけ道が取られているのはさすがと言える。
街は活気に溢れており、周りもキレイにしてある。
建物は三階建と決められているのか、同じ様な建物がずらりと並び、景観が損なわれない様に配慮されている。
沢山の商店もあり、人々の服装も華やかだ。
帝都で流行っているのであろう、色鮮やかな帽子をかぶった女性が多く見える。
「とても活気付いているね。あの花は初めて見るな…。あれ?テオ、あの行列のある屋台は何?」
「ああ、あれは牛の肉を塊で焼いて、焼けた所を削ぎ落として、野菜などとパンに挟んだ物だ。パンばさみと呼ばれていて、他にも魚や果物などの種類がある。こちらでは人気の食べ物だ」
おお、ケバブ的なやつね!
こっちにもこう言ったのがあるんだなぁ。
街のグルメも楽しんでみたいと思いつつ、馬車は貴族街へとまっすぐ進む。
繁華街と民家は分けられている様で、裏には同じ様な作りの家がずらりと見える。
「あら。ねぇ、ほら!テオドール殿下の馬車じゃない?」
「本当だわ」
周りもチラホラ気が付いてきた様で、テオは馬車のカーテンを開けても良いかと確認してくれる。
もちろんだと笑顔で答えて、俺はテオと一緒に外に笑顔を振り撒く。
「ね、テオドール殿下の婚約者様じゃ無い!?」
「キレイな方だなぁ」
テオと一緒にお手振りをしつつ、笑顔を振り撒いておく。
「ね、レッドドラゴンリーフ以外にも、あの柑橘のお菓子や、少しずつ食べられるティーセットの考案をなされたのも、婚約者様なんでしょう?」
「ええ、そう聞いてるわ。防護機能のある布の開発や宝飾品。小型の冷蔵箱もそうだって聞いてるけど…」
「あら。最近流行っている、香り付きのクリームもそうだと聞いたのに。お若いのに凄い方なのね」
よしよし!
やっぱり平民に話を広げた方が早かったみたいで、今では俺の話は浸透してるみたいだ。
「あの方の功績を、自分のものだと吹聴して回っていた方が、皇帝の命で捉えられたと聞いたわよ」
「ああ、ゼラムニフ伯爵家の子息だろう?タニア嬢を崇拝している一人だとか」
俺の偽物の話も、皇帝がしっかり広めて訂正してくれている様で、平民達にも正しい話が広がっていた。
「それにしても、タニア嬢にはがっかりだわ。子供もテオドール殿下の子では無かったのでしょう?」
「…実は、全く違う種族の特性が出ていたんだとか。ラッカルの神父様が診断をなさったから確実だろうな」
「まぁあ!…でも、私。彼女が色んな男性と親しくしているのを見た事があるから、不思議でも無いわね」
「お父上は立派な方なのにね。娘の愚行に激怒なさってるとか」
おお、タニア嬢の話も正確に伝わってるんだね。
今までは父親である公爵に遠慮していたんだろうけど、その父親が激怒してるから話が流れやすくなってるんだと。
「タニアは謹慎中だ。このまま、ラッカルの厳しい修道院へ送られると聞いている。子供は折を見て、セイレート王国にて診断が行われる予定だ。エルフの特徴が顕著に現れているからな」
タニアの産んだ子供は、弟の所で育てられてはいるが、エルフとしてセイレートで生きていく事になるだろうとテオが話してくれた。
タニアの悪行により、弟の評判にも影が落ちる事を危惧した弟の夫が、子供を手放したがってるんだとか。
弟自体は夫に大事にされているそうなんだけど、やはり得体の知れない子供はこれ以上面倒は見られないって事なんだと。
「セイレートも初めは苦言を呈していたが、エルフの血が濃く出ているからな。診断後はセイレートの教会で暮らす事になるだろう。子孫を残す事も難しいだろうからな」
「エルフの掟だね」
「ああ。エルフ族で子孫を残せるのは選ばれた者のみ。掟を破り子を成したとしても、その子は子孫を残せない事が多い。エルフの掟だから、我々が口を出して良い問題では無いしな」
文献でも知っていたけど、エルフは親が子供を育てるのでは無く、周りと一緒に育てるのだ。
子を成して良い者も決まっており、大抵が村などを治める村長の息子だったり、村で優秀な者だったりするんだって。
人と一緒になっても、その間に生まれた子供が子孫を作る事は難しいと聞く。
その為、エルフと人のカップルは少ないのだ。
まぁ、生きる長さも違うからね。
何でタニアはエルフとの子を孕ったんだろうか。
これにも何か裏がありそうだなと思いつつ、馬車は貴族街へ続く門へと近づいて行った。
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