転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
151 / 247

146 推しと貴族返上の足音

しおりを挟む

「本日はこの様な素晴らしい祭りに参加でき、大変嬉しく思う。皆も美しい花と音楽を楽しんで欲しい」

オール殿下の言葉に、会場は一気に盛り上がり、貴族に雇われた音楽隊や踊り子達が素晴らしい演奏や踊りを披露し始める。

あの後急いで皆に事の次第を説明し、しっかりオール殿下に嘆願書を渡した。

そして今日行おうと考えている作戦にも賛同を貰えたので、俺達はおとなしく催し物を楽しむ。

「あら、このチンタック男爵家って王都の仕立て屋さんよね?」

「音楽隊も雇っているのかしら?」

会場がザワザワしていると、チンタック家の催し物が始まる。

音楽隊の軽快な音楽に、チンタック家自慢の服で身を包んだ踊り子達が、軽やかに踊りながら舞台を一周する。

俺がそれとなく提案した、言わばファッションショーだ。

花祭りに良く似合う、花をモチーフにした服が多く、観客も大いに盛り上がる。

「あの花柄のワンピースドレス、素敵だわ!」

「大きな花の柄のスカートの優雅な事!花祭りにぴったりじゃない?」

女性だけでなく、男性も花祭りを彩る様な、柔らかなパステルカラーのシャツやパンツなどを披露する。

正直、この世界ではあまりパステルカラーって需要が無かったんだけど、こう言った色が似合う人だっている訳だし、花の季節っぽくてこの時期にはぴったりだと思うんだよね。

もちろんパステルカラーだけでなく、黒地や白地に花柄を刺繍した物や、モノトーンに仕上げたものも発表されている。

「柔らかな色だな。ジェレミーにも良く似合いそうだ」

「ふふふ。春らしい色ですね」

セルジオ様とジェレミー兄様が、楽しそうに話している。

でもパステルカラーって俺には何となく似合わない色~!

「柔らかい色も多いが、あちらの黒地に花の刺繍の施されたシャツや白地に黒と金の花柄のシャツは、ギルに良く似合いそうだな」

「あのグレーのシルクシャツに銀糸で刺繍されたシャツは、テオにピッタリだね」

テオは俺に似合いそうなのを良く分かってるね!

そんな感じで周りも楽しんでいると、後数組の発表となる。

進行をしている者が、飛び入り参加の提案を始めると、何組かが楽しそうに前に出てくる中、アンルカも真っ赤なドレスで登場した。

俺が密かに噂を拡散させているから、彼女の悪行は既に広まっていたりするんだが、彼女はその事にまだ気が付いていない様子だ。

それよりも、既にホセ兄様達が結婚式を挙げている事を知って、憎々しげにフロル様を睨み付けたのを俺は見逃さなかった。

それぞれが楽しそうに歌などを披露し始め、俺の手配通りにアンルカ嬢は最後に披露する事になった。

「さて、先程の方達をこちらに案内してもらおう」

父様がそう言って支持を出すと、俺達も始まったと目配せをする。

俺達の席の後ろには控え室の様なスペースがあり、護衛や執事が待機しているのだが、そちらにゴードン達を待機させる。

アンルカが名前を呼ばれると、周りは大きく騒ついた。

歓声と言うより戸惑った声が多かった為か、アンルカは不穏な空気を感じながらも舞台に上がると、オール殿下やこちらに恭しく頭を下げたまま話し出す。

「本日は飛び入りでの参加を認めて頂き、誠にありがとうございます。シンプラー伯爵家のアンルカと申します。私が熱く思いを寄せる方へ、愛の讃歌を披露させて頂きます」

彼女が名乗ると、周りは更に大きく騒ついた。

「アンルカって、例の?」

「ああ、間違いないな」

「!!見ろ!ホセ様達と一緒に…」

「ああ!本当だ!!」

平民達も、小声で話が広がって行き、アンルカは益々不穏な空気を感じつつ、頭を上げる許可を待っていた。

「…シンプラー伯爵家のアンルカよ。面を上げよ」

オール殿下の言葉に、ホッとした様にアンルカは頭を上げるが、同じ様に舞台に立つ人物達を見て、大きく動揺した。

隣には帽子を取ったココンと、そのココンの肩を優しく抱いたユータルが立っており、その後ろにはゴードン夫妻もいる。

そして、俺やホセ兄様とフロル様。

ジェレミー兄様も一緒に舞台に上がっているのだ。

「…な、どうして」

それ以上言葉の出ないアンルカに、音楽隊も開始して良いのか分からずに困惑している。

「あの傷を見ろ。あんなにキレイな子に、なんて酷い事を」

「ホセ様達がお隣にいらっしゃると言う事は、オール殿下も彼女達の見方なのかしら?」

周りは、これから何が起こるのかを察した様で、オール殿下の動向をしっかりと待つ。

「アンルカ嬢。あなたは王都外れの食堂でこちらの女性に暴力を振るい、この様にケガをさせたにも関わらず、自分の行いが露見しない様にと治癒院へ行く事を阻止したそうだな」

オール殿下の言葉に、貴族達は大きく騒つき、噂話が広がっている平民達は固唾を飲んで見守っている。

「アンルカ嬢が!?兄上が娼館で問題を起こしたり、例のサンジカラの令嬢をダイヤ公爵家の子息に引き合わせたりしていたから、シンプラー家はアンルカ嬢が継ぐと言われていましたのに」

「ああ。まさかアンルカ嬢まで問題を起こしていたとは!シンプラー家はもはや爵位返上しか道が無いのでは?」

「あんなに大きな傷を、顔に作っておいて。治癒院にも行かせなかったなど大問題だろう?アンルカ嬢は何がしたかったのだ?」






しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...