転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
147 / 247

143 推しと来賓

しおりを挟む

花祭り三日目になると、会場は大きく様変わりしていた。

広い円形の会場を音楽隊や踊りの会場に変化させ、貴族と平民をしっかりと分けて席を用意してある。

今日はオール殿下達もいらっしゃるので、最高貴賓席も準備されている。

円形の会場で、舞台も円形になっており、ご自慢の音楽隊や踊り事達の披露の場となっている。

もちろん花祭りだから、会場には花々が多く飾られていて、他の場所でも花祭りは続いているから、催し物はその中の一つって感じだね。

貴族が通る道も一気に広く確保して、花を綺麗に飾って歩道と分けてある。

平民達は歩道から、馬車や貴族の装いを楽しめるのだ。

「見て!あの馬車すごく大きいわ!」

「あちらの令嬢のお洋服素敵ね。花柄のワンピースドレスが王都の流行らしいわよ」

「花祭りにピッタリねぇ!チンタック男爵家の仕立て屋も今日は特別に出店してるんですって。見てみない?」

「柔らかい色のシルクシャツが、紳士の間でも流行っているんだな」

貴族はこぞって旅行先での服装を楽しんでいて、平民達も新しい流行を楽しんでいる。

チンタック男爵家が花祭りに合わせて、花柄の服や花の様な色の服を沢山発表したので、今回も花祭りに良く映える服装の貴族が多い。

今日はチンタック男爵家も平民向けに、少し生地の質を落とした商品を何サイズか作り、販売すると聞いている。

貴族はオーダーメイドが多いけど、平民はいくつかのサイズから合うものを購入するのが普通だからね。

「さ、俺達も音楽隊の会場に向かおう。テオは帝国皇帝の弟君だから、オール殿下の近くの席を用意してあるの。堅苦しいけど我慢してね?」

今日のテオの装いは、チンタック家で仕立てた俺と対のものだ。

黒字に金の刺繍が施されてあり、二人とも上着は無しでウエストコートのみだ。

シャツは今日に合わせて、薄い黄色のシルクシャツを揃いで着ている。

「ふふ。ギルが隣に居てくれるのなら何処でも良いさ。…例の伯爵家の姿はあったか?」

「伯爵夫婦の姿はあったね。アンルカ嬢は飛び入りで参加するつもりなんだと思う」

会場の貴族席も人で埋まり出している。

シンプラー伯爵夫婦だけ席についており、さすがに問題児である子息は連れて来なかった様だ。

アンルカ嬢が王都で数人音楽隊を雇った話は耳にしているし、音楽祭最後の飛び入り参加で、ホセ兄様への愛を歌う予定だと言う情報も掴んでいる。

「テオドール殿下、本日はご参加ありがとうございます」

そこへ、ホセ兄様とフロル様が挨拶にやって来る。

二人は結婚式ほど派手な服装ではないが、白いシルクシャツの上に、深い青のウエストコートを羽織り、そのウエストコートには美しい花の刺繍がされていた。

フロル様の美しい髪には花が飾られており、ホセ兄様のベストのポケットにも花が溢れて飾られている。

お揃いと言った感じで、とても良く似合っているが。

…。

うん。

フロル様、色気がマシマシで増してない?

これ俺の気のせいじゃないよね!?

そんな思いはお首にも出さず、俺は笑顔で二人に挨拶をする。

テオと俺に準備された席は、中央がオール殿下とリーカイ様で、ホストであるホセ兄様とフロル様が右側。

父様とシェル様も右側に座る。

俺達とジェレミー兄様とセルジオ様は、左側と言った感じだ。

「花々も美しく、民も大変喜んでいた。素晴らしい祭りに参加できて誇らしく思う。来年も開催されるのなら、是非帝国にも宣伝したい」

テオがそう言うと、ホセ兄様は満足そうに頷いて、フロル様の腰を抱き寄せる。

「ありがとうございます。毎年同じ時期に開催を考えています。…私とフロルの結婚記念日としてもアピール出来ますからね」

「ホセ様ったら…」

ホセ兄様とフロル様は、顔を見合わせて微笑みあった。

ごちそうさまですー。

目の保養を楽しみつつ、俺もスススとテオの隣にくっついて、テオに甘えておく。

テオが満更でもない顔で俺の腰を抱き寄せていると、オール殿下とリーカイ様が到着したとの知らせが来る。

「我々も出迎えよう」

「うん!」

ホセ兄様達と一緒に、会場入り口へと向かう。

「王家の馬車だわ!」

「キレイだけど、豪華ではないのね」

「陛下の意向らしいわ。無駄に豪華にする必要ではないって」

俺達が出迎えに出ると、立派な馬車が停まっていた。

「ホセ様~!フロル様~!」

「ギル様もいらっしゃるぞ」

「テオドール殿下だわ!」

群衆に手を振りつつ、オール殿下が降り立つのを待っていると、一人の平民の男が駆け出して来る。

慌てた様にリーカイ様も降りて来て、オール殿下を守る様に前に出た。

「止まれ!!」

警備隊が取り押さえるが、男は必死に手に持った書類を掲げている。

「オール殿下!!どうか嘆願書を見てください!!」

嘆願書と言う言葉に、俺はその男が昨日の群衆の中にいたと気付く。

オール殿下とリーカイ様は顔を見合わせて、悪人には見えない男に戸惑った様子だ。

「…私が預かりましょう」

スッと前に出て、俺が男から書類を受け取ると、警備隊に開放する様に促した。

「…よろしいのですか?」

警備隊がオール殿下やホセ兄様を見ると、俺の意向を受け入れてくれた。

「ギルが大丈夫と言うのなら安全だろう。さ、オール殿下とリーカイ様を中へ」

ホセ兄様はそう言って俺に目配せすると、オール殿下とリーカイ様、そしてテオを連れて貴賓席へと案内していった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...