転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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141 推し達の噂話

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「ねぇねぇ!テオドール殿下とギル様よ!」

「お似合いだわ~。花祭りを楽しまれてるのね」

俺とテオが花祭り会場を歩くと、周りが騒がしくなるが、こう言った場で和かに対応しておくのも貴族の勤めだ。

「ギル様!ホセ様とフロル様のご結婚おめでとうございます!」

「ありがとう。新しい当主達をよろしくね。花祭りを楽しんで」

話しかけて来る領民にも、にこやかに笑顔で返す。

「ギル。良い香りだが、この店は何を作ってるんだ?」

「ああ。香水だよ。自分の好きな香りを調合できるんだよ」

「花祭りの花を使うのか。贅沢だな」

「そうなの。ここでしか出来ない特別な香水だよ」

そんな会話をしつつ、周りにもアピールしておく。

平民向けなので瓶は質素だが、若い女性に人気の様だ。

「あちらは食べられる花だね」

「ほう?花も食べられる種類があるのか」

俺が示す屋台には、食用の花を砂糖漬けにしたものや、冷菓に使用したものが売っている。

「これは綺麗だな。ケーキの飾りにしたらとても良い。帝国にも紹介したい」

小さなカップケーキに、バタークリームと砂糖漬けの花が綺麗に飾られたものが並んでおり、こちらも大人気だ。

「これ、おばあちゃんにお土産にしようよ!」

「素敵ねぇ。私は青が良いわぁ」

沢山の人に人気の様で、俺もホクホク顔だ。

「あちらは?」

「ああ。ゲンドフ領からの出店だね。夏になったらゲンドフ領の湖の周りでも祭りを行うんだ。その前に宣伝もかねて出店しているんだよ。あちらは最近養殖に成功した、湖の中に生息する特殊な貝から採れる真珠が人気だからね」

ゲンドフ領でも、夏に真珠にちなんだ祭りをはじめると言うから、その手伝いみたいな感じでこちらに出店を申し出てみたんだ。

宣伝しつつ、こちらの祭りも楽しんでもらおうと思ってとテオには説明しておく。

実はそれだけでは無いのだ。

「あら、夏はゲンドフ領に行ってみましょうよ。真珠祭りですって」

「あちらは涼しいからね」

今日は小さな真珠のアクセサリーと、夏に開催される祭りの案内が主なのだが、それ以外に重要な役目がある。

「ホセ様とフロル様の出会いが、ゲンドフ領って本当?」

「ね。何年か前の魔物騒動の時って聞いたけれど…」

ゲンドフの店の前で、客が店主に聞くと、逞しいが優しい感じの中年の店主は、大きく頷いた。

「ああ、本当だよ!だって俺はあの時、フロル様に治癒して貰っていたからね!」

「えぇ~!?本当に!?」

店主の言葉に、周りは一気に盛り上がり人垣が出来る。

「本当さ!俺は仕事で大怪我をしていてな。治癒院にいたんだ。その時に夏季休暇だって言うのにフロル様は治癒院や孤児院、教会を回って奉仕活動をされてたんだよ」

「そうそう。私の息子も治癒院に居てね。大変な作業も、文句も言わずに手伝ってくださっていたそうなのよ。突然魔物が現れた時も、怪我人を置いては行けないって残られて」

店主や他のケンドフ領の人々が、そう言って話をすると、皆があの話は本当だったんだなと興奮しだす。

「その魔物を倒してくださったのが、ホセ様だったんだよ。鎧を着ていたし、他にも魔物が暴れていたから急いでその場を後にしたから、顔は見えなかったんだけどさ。なんでもフロル様と再開した時にお互い分かったそうじゃないか」

「ケンドフ伯爵も探してらしたからね。ケンドフ領にもあの時の騎士がホセ様だったと御触れが出たんだよ」

「魔物の処理も完璧だったみたいで、あれ以降は平和だからねぇ。それにしても、お二人の出会いの場がケンドフなんてロマンチックじゃない?」

ホセ兄様とフロル様の出会いと再開を、ドラマチックに話しながら、ケンドフのアピールも欠かさない。

俺の狙いはコレだった。

ケンドフの祭りの手伝いをアピールしつつ、ホセ兄様達の話もそれとなく聞いてみたら、当時を知る人が祭り関係者に数人いると知ったのだ。

後は、上手い具合にその人達にフロル様の話を振ってみた。

もちろん結婚の話は伏せていたが、あの時助けて貰った貴族が、ジャメルの時期当主の婚約者だと言う話はケンドフに広がっていたので、一目見たいと出店に参加して来たのだ。

そして初日に結婚を知り、ケンドフのアピールと一緒に興奮しながらこうやって二人の話をしてくれていると言う訳。

「素敵!あのお話は本当だったのね!」

「お二人共、再開した時に直ぐに分かったそうだよ」

「あら、どこか惹かれ合ってたのかもしれないわね!」

皆こう言った話が好きだからね。

テオと顔を見合わせながら、微笑み合う。

「これは良い傾向だな」

「でしょう?貴族より、民の方が話の広がりは早いからね」

俺とテオはバレない様に目眩しをしつつ、コソコソ話しながら成り行きを見護る事にした。






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