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137 推しへの協力
しおりを挟む「…あのね、ホセ様を狙っている令嬢がいらっしゃったでしょ?不穏な動きがあるって聞いたんだ」
カイトの話に、フロル様と俺は顔を見合わせて、詳しく話す様に促した。
「ゲラルド子爵家のマーミー嬢は、ご友人に紹介された男性とデートを重ねていて順調らしいんだけど。シンプラー伯爵家のアンルカ嬢はまだホセ様を諦めていないみたいで…。花祭りの三日目には花と踊りの催しが予定されているんでしょう?」
「ええ。踊りや音楽隊は貴族からの披露も予定されているね。シンプラー家は予定されて無いはずだけど」
踊りや歌が得意なお抱えの歌手や踊り子を、貴族が披露する場も用意されているのだ。
もちろん事前申請制にしたので、シンプラー家が参加する話は聞いていない。
「その時に自分こそがホセ様に相応しいのだと、何か事を起こそうとしているみたいなんだ。友人のお抱えの音楽隊に依頼が来たみたいで、もちろん皆さんお断りしたそうなんだけど。アンルカ嬢は確か歌を得意としていたから、もしかしたらご自分で何か披露される予定なのかもしれないけど、申請していない貴族が飛び入り参加ってよくあるでしょう?気を付けた方が良いかもしれない」
確かに、お祭りって盛り上がって来たら飛び入りが鉄則だよね。
その話を聞いて、フロル様も真剣な顔で頷いていた。
「心配してくれてありがとうカイト。ホセ様にも相談して、しっかり対策していくよ」
「もしもの時は、私も動きますから」
フロル様の言葉の後に、俺も力強く付け加える。
「アンルカ嬢は厄介ですわね。確か、例のサンジカラの令嬢をヨハン様に引き合わせたのは、アンルカ嬢の兄上のドドル様とお聞きしましたわ。ヨハン様ばかり責められて不公平だと言う声も出て来ていますし、王都でもそう言った話が広がってますの。シンプラー伯爵家はドドル様の娼館での悪行を糾弾されたばかりでしたし、爵位返上の噂も絶えないですから、焦っているのでしょうね」
さすがハイリ嬢は情勢に詳しく、俺が広めたアンルカ嬢の兄の話も知っている様だ。
ハイリ嬢が広まっていると言うくらいだから、凄いスピードで広がっているのが分かる。
きっとデラス侯爵だろうなと俺は思っている。
ヨハンの悪名を少しでも減らし、ヨハンへのヘイトを分散したいんだろう。
「兄より、優秀な妹に婿を取らせて爵位を守りたいのでしょうけど。だからと言ってフロル様と言う素晴らしい婚約者のいる、次期ジャメル当主を婿になどと、寝言は寝て言って頂きたいですね。さっさと嫡男を廃嫡して、適当に婚約者を充てがう方が早かったでしょうに」
俺がそう毒づくと、うんうんとハイリ嬢も大きく頷いた。
ハイリ嬢が少し不機嫌そうなので、どうしたのかと聞くと、ハイリ嬢は少し怒った様に話し出す。
「シンプラー家のアンルカ嬢のお相手にと、私の兄と婚約者であるケイクにも声が掛かっておりましたの。どちらもとっくに婚約者がいる相手ですのに。さすがに品の無い行動でしょう?その上、フロル様を溺愛なさっているホセ様を婿になどと、ジャメル侯爵家にもリーナイト公爵家にも失礼ですわ。アンルカ嬢は知的な美人として評されていますけれど、そう言った行動を繰り返している方が知的だとは思えませんもの」
おお、まさかプラム伯爵家とアイール伯爵家の嫡男達にまで粉を掛けていたとは。
アンルカ嬢は余程自分に自信がある様で、お相手に対する理想も身の丈に合わない程高いそうだ。
「シンプラー伯爵家は、現在は名ばかりの貴族の一つですけど、王都ではそう言った貴族同士で婚約なさるお家も多いと言うのに。アンルカ嬢には昔から婚約者がいらっしゃらない様ですし、現在の伯爵もお家の事を真剣に考えていなかったのでしょうね」
セーラ嬢の辛辣な言葉に、確かにと皆で頷く。
失礼ながら、伯爵家の令嬢で二十五を超えて婚約者が居ないと言うのは行き遅れと言われてもおかしくない。
王都の伯爵家なら、十歳前後で婚約者が決まっていてもおかしく無いからだ。
「アンルカ嬢が幼い頃は、セルジオ様やドンク公爵家のサフラット様にも婚約の打診をしようとしていたそうですわよ。もちろん周りから大反対されたそうですけれど」
「本当に?さすがシンプラー伯爵の考えが分からないな。どちらの公爵家とも繋がりは無いでしょうし。そう言った行動が失礼だとは思わないのかな」
ハイリ嬢の話に、カイトも眉間に皺を寄せた。
カイトの実家の様にリーナイト公爵家と繋がりがある訳でもなく、いきなり婚約の打診をしたって話だから、結構失礼だよね。
父様とシェル様みたいに繋がりがあった訳でもなく、高位貴族だったら誰でも良かったのかもしれないけど。
「もしかして、アンルカ嬢に婚約者が居ないのも、お家の考え方のせいかもしれないな。そう言った行動は、まともな貴族だったら嫌悪するだろうからね。下手にアンルカ嬢が知的で美人な評判が流れてしまったせいで、お家ごと勘違いしてしまったんでしょう。そうそう、話が変わるのですが、実はレモルトで温泉を観光に利用しようと考えていまして…」
俺がそう締め括りつつ、次の話へ振るとまた新しい話に皆で盛り上がる。
花祭りはもうすぐ。
俺達の秘密の作戦は、こっそりバッチリ実行出来るだろうと確信していた。
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