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134 推しとぶっちゃけ話
しおりを挟む一通り商談が終わると、軽食をつまみながらの談話が始まる。
「本日は参加させて頂きまして、ありがとうございます。大変勉強になりました。やはりギル殿の発明は見事ですね。こうやって販売の許可を頂けたのですから、しっかり成果を出せる様に努めます」
「ええ、新しいものですが、生活に必要だと感じるものばかりですね。それも平民向けも考えられています。やはり国を支える根本は平民ですから、まずは彼らに良い評判を頂きたいですね」
アラミスとジェフの言葉を、他の貴族達も微笑ましそうに見ている。
うーんやっぱり、この子達は優秀だな。
そう思っていると、少し顔を強張らせたダイヤ公爵が、意を決した様に話し出した。
「…今回、我がダイヤ家にも声を掛けて頂き、誠に感謝している。我が愚息の愚行により、周りの方々には大変迷惑を掛けた。そんな愚息を貰い受けてくれたデラス侯爵家にも、大変感謝している。今後はこの二人にダイヤ家を引き立てて貰う予定だ。私よりもずっと優秀だろう」
あら、意外としっかりなさってるんですね。
そんな事を思いつつも、チラリと周りの顔色を伺うと、セルジオ様は気にしてないがアルミス達は一瞬暗い表情になり、デラス侯爵も少しピリついている。
うーん。
ヨハンは確かにフロル様を困らせたバカ坊ちゃんだったけど、色々調べていると同情してしまう部分も多かったんだよね。
やっぱり自分は悪くないですよって感じの、他の貴族達がムカついたってのもある。
「ええと、申し上げてもよろしいでしょうか」
「…構わぬ」
俺がそう言うと、周りも頷いてくれたので、ぶっちゃけ思ってる事を言っちゃう事にした。
「確かにヨハン様の行動は軽率でしたが、結果的に我が家にとってとても良い縁が巡って来ましたので、何のシコリもございません。フロル様が我が兄と婚約してくださったおかげで、兄はジャメルを治める事に本腰を入れ始めましたしね」
俺の言葉に、セルジオ様もジェレミー兄様もうんうんと頷いている。
「それに、例の令嬢と仲良くされていましたが、関係を持っていたのは他にも沢山いらしたんですよ?それなのにダイヤ公爵家のヨハン様だけが悪者かの様に言われるのは解せないですね。調べた所、まだまだ清い関係だった様ですし、体の関係まであった貴族が平然としている方が私は問題だと思っています。あ、こちらにそのリストがあるのでどうぞお持ち下さい。何か言ってこようものなら、糾弾して差し上げれば良いんですよ」
俺がサッと資料を回すと、こんなにとドンク公爵も眉を顰めた。
「デラス侯爵のところでも、十分反省なさっているのでしょう?それなら今後はデラス侯爵家の妻として立派に努めを果たすのならそれで良いと思うのです。確かに考えの足りない所がありましたが、それも愛嬌でしょう。社交の場に出にくいと言うのでしたら、今後私が間に入っても良いと考えています」
「しかし、迷惑が掛かるのでは?」
アルミスが心配そうに言うが、俺はまさかと笑う。
「例の令嬢を引き入れたのはパニ家ですし、ヨハン様の案内をした貴族も他にいる様です。ヨハン様だけが悪く言われる度に、またフロル様の事をとやかく言う貴族もいるでしょうから。その流れは断ち切りたいですからね。高位貴族としての自覚が足りなかったと言えばそれまでですが、だからと言って他の貴族が責任放棄するのは許せませんから。デラス侯爵も、そのリストをお持ち下さい」
「ああ、もちろん。活用させて貰おう」
真顔でしっかり頷くデラス侯爵は、結構ヨハンを気に入っている様だ。
実は、リリーをヨハンに紹介したのは、ホセ兄様を狙う令嬢の兄グループだったと突き止めている。
そう、シンプラー家令嬢アンルカの兄だ。
この書類を渡せば、デラス侯爵はそれなりに動くだろうと踏んでいる。
デラス侯爵と息子の目がギラリと光ったからね。
「私もギルの意見に賛同します。フロルの事は確かに問題ではありましたが、こちらも婚約を急ぎ過ぎたと反省しています。現在はホセ殿に嫁ぐことが決まっていますし、ダイヤ公爵家からはキチンと慰謝料を頂きましたので、どうぞ水に流してください。それに、このリストを見る限り、反省すべき者は他にもいる様ですから」
セルジオ様も意見を述べたので、これでこの話は終わりでも良さそうだな。
その後は他愛の無い会話を楽しみながら、俺は明日はジェレミー兄様のお茶会だなと思いを巡らせていた。
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