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127 推しとの時間
しおりを挟むセルジオ様とジェレミー兄様の結婚式は、つつがなく終了した。
俺は国内外の方々との商談の約束を取り付けられたし、ドンク公爵夫人のお茶会にも誘われた。
セフ夫人が帰国する前に、ジェレミー兄様主催の初のお茶会にも参加する事になったし、その後はジャメル領での花祭りも待っているし、テオとレモルトで身内だけのパーティーをする前に色々忙しそうだ。
式が終わると、セフ夫人、父様とシェル様、俺とテオはリーナイト公爵家の客間に宿泊する事になった。
ホセ兄様とフロル様は花祭りの準備があるからと、夕方には領地へ出発したので、俺とテオもお邪魔させて頂く事にしたのだ。
日を跨いでからお邪魔したのだが、執事の方々も皆揃っており、兄様達の結婚を心より祝福してくれていた。
軽くお茶を頂いて、それぞれ部屋で休む事になった。
とても広い客間で、重厚なテーブルとソファセットもあり、俺とテオは横並びに座る。
「とても良い式だったな。私達の時も良い式にしよう」
「もちろん!そう言えば、結婚式はレモルトで挙げていいの?」
帝国の皇帝弟殿下な訳だし、帝国王都でって決まりだったりしないのかな。
俺がそう言うと、テオはもちろんと頷く。
「レモルトで構わない。王都ではパーティーくらいは開く必要があるだろうが、基本的に私はギルの所へ婿に入るのだから。レモルトと言う名も変えても問題は無いのだが、ギルはどう思う?」
そっか、領地の名前が今後の姓になるんだもんな。
でも、俺はテオと一緒にレモルト公爵になる覚悟は出来てるんだよね。
「領民の方々もレモルトに愛着があるだろうし、今後も愛してもらいたいから、俺はレモルトを名乗りたいな」
レモルトを少しお邪魔した時に見たレモンは、本当に大きかった。
俺の顔くらいはあったかな。
収穫は大変そうだったけど、レモン畑の農夫達は、レモンが大きなだけの領地と言われて来たが、これが新しい名物になったら嬉しいと笑顔で話してくれた。
あれを見て、レモンと言ったらレモルトと言われるくらいにして行こうって決めたんだ。
レモンを使ったお酒やジャム、香料を使った製品も色々動き出しているしね。
「…私のダンスの時に、ドンク公爵と楽しそうにおしゃべしりていたな」
あ、やっぱり気付いてたね。
やだ~、テオったら嫉妬かな?
俺がスススとテオの膝の上に座り直すと、テオは片眉を上げて、俺を抱きしめてくれる。
「ふふふ。俺はレモルトに全力を尽くして行くから、こちらが手薄になるでしょ?兄様に悪い手が伸びない様にお願いしてたの」
「ほう?」
あ、それ以外にもあるだろって顔してる。
ふふふ~そんな顔も好き。
「後ね、ドンク公爵のマントを見た事があったの。魔物戦争後は初めて着たって言ってたんだけど…」
「ふむ。あのマントか?でもその頃はギルは随分小さい頃だろう?」
よしよし、話に乗って来てくれたね。
「実はね、両親が亡くなってすぐに、母様の墓前で見たんだ。親しい人や親族以外はお断りしていたんだけど…。ドンク公爵は母様に求婚して断られてから、父様と結婚出来る様に尽力してくださったから…。お祖父様が許可したのかも」
俺の話で、大体の話が掴めたテオは、なるほどと頷いた。
「セフ夫人が話していたが、本当にギルの母上は人気があったのだな。それならギルがジェレミー殿を異常に心配する気持ちも分かる。今回ダンスのお相手もしていたから、ドンク公爵はギルの見立てでは、安全な相手と言う事だろう?」
そうそう!
そうなのと俺は大きく頷いた。
「ドンク公爵はこの国の裏でも表でも力があるから、俺はもっと繋がりを作っておきたいんだ。それに俺に興味ない所も気に入ってるの」
にこにこと言うと、テオは難しい顔をする。
「…ジェレミー殿も美しいが、ギルに興味を持てないのは理解出来無いな」
だよねー!!
分かる!!
でも俺は、テオに愛されてればそれで良いんだよね。
「まぁ、学園でも好き放題だったし、警戒されてたのかも?あ、悪い事はしてないよ?」
「ふふ。ギルは大変優秀で、授業も免除されていたらしいな。それでも図書室にこもってレッドドラゴンについて調べたり、勉学に励んだり、学友に魔術指導をしたりしていたんだろう?…まぁ、高位貴族からしたら警戒はするかもしれないが。こんなに可愛らしくて美しいのに」
そう言って、テオは俺の額にキスをする。
えへへ~。
テオが俺を口説いてる!
きゅんきゅんしながら、確かに俺、何かしたっけと思い出していると、一つ思い当たることがあった。
「そう言えば、ドンク公爵家の次男は騎士なんだけど、剣術で手合わせした時に勝っちゃったんだよね。俺が十五歳の頃かな?ホセ兄様にも本格的に指導されていたから」
ドンク公爵家の次男は、独身貴族だが一応王都の騎士だと説明すると、テオは小さく笑って俺の唇をトントンと指で叩く。
「…多分それだと思うぞ。そうか、ギルは剣の腕も立派だったな。ギルは兄上の為、家の為に動いていたが、他の貴族からしたらこんなに美しく、魔術も優れ、剣術にも長けている人物は脅威だったのだろう」
確かに、何か大きな野心があると思ってたのかな?
結局は家族の為にと奔走していたら、異常に優秀に仕上がっただけなんだけどなぁ。
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