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125 推しと救世主
しおりを挟む「まぁまぁ。それじゃあ貴方がコリーヌ達の三番目のご子息ね。私はラッカルのジャクリ公爵家に嫁いだセフ・ジャクリです。先先代のリーナイト公爵の妹で、こちらのセルジオの大叔母なの。貴方のお母様のコリーヌとは、長く手紙のやり取りをしていたのよ」
ふんわりと笑うセフ夫人は、やはりフロル様に似ていた。
そして、コリーヌ母様と親交があったと聞き、俺もジェレミー兄様も初めての情報だったので驚いた。
そこに、お祖父様、父様達やホセ兄様達も合流し、他の貴族達も周りにちらほら見えた。
「あらあら。ジェレミー殿も本当にコリーヌに良く似ていらっしゃるけれど、ホセ殿もゼノン殿に良く似てらっしゃるわね。…懐かしいわ」
ホセ兄様を見て、懐かしそうに言うセフ夫人に、ホセ兄様は母とはどう言った関係だったのかと聞いた。
「コリーヌは美しく優しく聡明で、本当に殿方に人気があったのよ。それでもゼノン殿以外と結婚する気は、微塵もなかったのだけど」
そうでしょうねと俺がうんうんと頷いていると、お祖父様に視線で嗜められ、セフ夫人は笑う。
「それでもしつこい貴族もいたそうでね。思い悩んだコリーヌは、ラッカルに嫁いだ私を頼りに修道女についてお手紙をくれたの。彼女、ゼノン殿と結婚出来ず、他の貴族に嫁ぐくらいなら、全てを捨ててラッカルで修道女になりたいって言ったのよ」
お祖父様がそんな話をしていたなと思い出していたら、周り貴族はその話に驚いていた。
コリーヌ母様に懸想していた貴族達は、田舎者のゼノン父様が上手く騙して、コリーヌ母様と結婚したなど、と悪口を言っていた事も知ってるからね。
「私驚いてしまって。ラッカルで修道女になる道も悪い事では無いけれど、そこまで追い詰められているなんてと。兄や先代のドンク公爵にも相談したら、良い方向へ向かってくれて安心したわ」
「そうだったのですね。両親の為に、ありがとうございます」
ホセ兄様の言葉に、俺もジェレミー兄様もお礼を言う。
「その後もお手紙のやり取りを続けていてね。ホセ殿が産まれた事も、ジェレミー殿の病状の事も、ギル殿がヤンチャ過ぎる事も良く書いていたわ。…早くに亡くなってしまったのは残念だったけれど。でも、セルジオもフロルもこうやって素晴らしい伴侶に恵まれたわね。レッドドラゴンの事も聞きましたよ。こんなに立派なご子息達を残したんだもの。お二人の結婚は正しかったわね」
そうだったんだなと、俺達は母の知らない一面を見れた気がした。
母様のお手紙とかは、さすがに個人の物だからとしまい込んでいたけれど、確かに女性的でキレイな封筒が多かったなと思い出す。
ニコニコと、それでいてハキハキと話すセフ夫人はお喋りが好きな様で、周りと楽しく会話が続く。
「そうそう。ギル殿は賢者様なんでしょう?沢山のアイデアや発明があると聞きましたよ。ラッカルにも話が届いたんですけれど、どこかで違う人の名前に変わりはじめてね。トーレ王国の功績でもあるから、その間違いはいただけないと、ラッカルではあなたの功績ですとしっかり根回ししておいたから、安心してくださいな」
ラッカルでも俺の功績を、消そうと言う動きがあったのか。
「お気遣いありがとうございます」
俺が礼を言うと、テオが会話に入る。
「…実は帝国でも同じ様な動きがあるのです。セフ夫人。偽物の名前はご存知ですか?」
「あらまぁ。そうね、確かゴルって聞いたわ。金髪で黒い瞳の、貴族風の男らしいのよ。黒髪黒目のトールの賢者だと訂正したと言う話をお茶会でしたのだけど、帝国からのお客様もいらしたから、帝国にもすぐに広がると思うわ。コリーヌのご子息の功績を、他の者が名乗るなんてと憤慨してしまってね。帰ったらテオドール殿下の婚約者で、とても美しい青年だとも広めますわね」
セフ夫人たら、ナイスアシスト!!
訂正した上に、広めてくださってるとは。
手間が省けたなと思ったのはテオも同じ様で、近くに居たポートランス公爵に目配せしてた。
しっかりと頷いていたので、早速動いてくれるのだろう。
さて、俺の功績を横取りしようとした貴族風の男か。
どんな目に合わせてやろうか。
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