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124 推しの子供達
しおりを挟む「…亡くなった事は幸せでは無いです。それでも母は父と共に逝けた事は本望でしたでしょう。父は、あまりにも危険だからと、一人で戦地に行くと母を説得したそうです」
俺がそう言うと、ドンク公爵はそうかと小さく呟いた。
「…聞かなかったのだな」
「ええ。もし父が自分を置いて亡くなってしまったら、母は後悔で自らを責め続け、最後には命を絶つだろうとの想いがあったそうです」
優しく朗らかで、いつも笑顔で明るい人だった。
ゼノン父様の帰る家庭を、明るく朗らかにしたいと言うコリーヌ母様の愛だった。
もちろんコリーヌ母様は、俺達を愛してくれていたが、それも全てはゼノン父様に通じる位、ゼノン父様を愛していた。
だから魔物戦争へ参加すると聞いて、魔術に長けるコリーヌ母は、少しでも愛する人を支えられる様にと同行したのだ。
それでも、魔物の急激な増大により、俺と同じ黒髪黒目の子供を、庇って亡くなってしまった。
「母は腕の良い魔術師だったのでしょう?私も、もし愛する人が一人で戦に向かうと告げられたら、何としてもついて行くでしょうから」
もちろん、信用する人間に家族を任せて行く。
コリーヌ母様も一緒だったのだろう。
「ああ。彼女は、最初から最後までゼノン殿を想っていた」
少し寂しそうな声に、俺はテオとジェレミー兄様のダンスを見ながら小さく頷く。
「母の想いを尊重してくださり、ありがとうございます。こうやって兄弟が皆幸せでいられるのも、ドンク公爵が両親の結婚を後押ししてくださったからです」
「…レッドドラゴンを導いたのは君だろう」
「私が生まれなければ、レッドドラゴンリーフは手に入らなかったかもしれないでしょう?自分で言うのもなんですが、あんな危険な場所に乗り込んで行く貴族は、私位ですよ」
俺がそう言うと、確かにとドンク公爵は小さく笑う。
「私は両親の子として。賢者としてこの国に貢献して行きます。大切な人達の安全を守りたいですからね。それでもレモルトで生きて行くと決めましたので。…ドンク公爵。私の目が届かない王都で、兄達をよろしくお願いします」
「…無論だ」
「あ、悪者退治には是非とも参加させてくださいね。面白そうなので」
その言葉に、ドンク公爵からは呆れた視線が飛んでくる。
「…君は誰に似たんだろうな」
ええ~?
前世の記憶ってあまり覚えてないけど、多分元々こんな性格だったんじゃ無いかな?
「どうでしょう?もしかしたら初代の賢者かもしれませんねぇ」
うん、そう言う事にしておこう。
聞いた話では、自分の道を突き進む自由人だったみたいだし。
「そうか。そうだな。記述にあった賢者が貴族であったら、君の様になるだろうな」
意外にもドンク公爵は納得した様だ。
トーレ王国の賢者って、便利だなぁ。
そう思っていると、ダンスが終わりホールは拍手で包まれる。
テオはジェレミー兄様をセルジオ様にエスコートし、そのままセフ夫人を連れて皆でソファへと移動した。
そちらにはオール殿下やリーカイ様の姿もあり、リーカイ様に良く似た方も一緒だった。
「我々もあちらへ行こう」
「はい」
ドンク公爵の夫人だと気づき、俺はドンク公爵についてその輪に加わる事にした。
俺達が合流するとすぐにダンスの音楽が流れ始め、来客達はダンスを楽しみ始めた。
「セフ夫人。お久しぶりです」
ドンク公爵がセフ夫人に挨拶すると、立ち上がろうとするセフ夫人にそのままで、とうながした。
「ありがとうセラバート様。お久しぶりね。ご子息も立派になられましたわね。オール殿下とお話しさせて頂いて、ご子息達の活躍もお聞きしましたよ。奥方はマルモス公爵家のご出身でしたわね。代々品行方正で優秀な方が多かったから」
「ありがとうございます」
にこやかに会話が始まり、俺はスススとテオの隣に立つ。
「セフ夫人。こちらは今回セルジオ殿に嫁いだジェレミー殿の弟君で、テオドール殿下の婚約者であるギルです」
おっとドンク公爵が紹介してくださるなんて、新鮮だね!
「初めまして。ギル・ジャメルです」
そう言って、俺はセフ夫人に挨拶をした。
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