122 / 247
118 推し達とのアピール
しおりを挟む「…失礼した。情報が間違っていた様だ」
ポートランス公爵は、申し訳無さそうに頭を下げた。
「いえ、どうぞお気になさらずに。兄はすっかり回復しましたし、病気だったとは思えないでしょう?」
「ええ。とてもお元気そうですね」
俺は大きく頷いた。
「それでも、何年か前は私は兄に近付く事を禁止されました。魔力が強すぎて影響が出ると。今はそんな事もありません」
ジェレミー兄様を見て言うと、ポートランス公爵そうだったんですねと感慨深く頷いた。
「そうでしたか。レッドドラゴンリーフは本当に。本当に魔力拒否症を治したのですね…」
その呟きがどことなく重く、彼の周りにも同じ様に病に苦しんでいる人がいるのだろうかと思った。
国内では流通しているが、帝国にはまだそんなに流通は始まっていないからね。
「早く帝国へも流通が出来る様に、私たちも尽力します」
そこへ、テオと小競りあっていたニムラス伯爵が会話に入る。
帝国の代表的な薬関係の伯爵なら、ルートを確約したらすぐに広めてくれるだろう。
今回の招待もその線で選んだんだろうと思う。
テオの幼馴染だし、セルジオ様達が選んだと言う事は優秀なのだろう。
「こちらの第三王子殿下も、回復に向かっているそうですね。我が国でもグリーンドラゴンリーフがあるとは言え、やはり魔力拒否症は進行は止められません。多くの国民が待ち望んでいます」
ニムラスの言葉に、俺も大きく頷く。
帝国にはグリーンドラゴンリーフがあるから、国民でも魔力拒否症の進行を抑えられてはいるが、やはり長く生きる事は難しい。
成人前には亡くなる事が多いのはどこも同じなのだ。
「今回の式と祝いが終わり次第、ギルは私と帝国に向かう事が決まっている。今回のお二人とギルのご家族も参加される。その時にレッドドラゴンリーフの正式な販売を進めたいと皇帝には進言してある」
テオの言葉に、ニムラス伯爵は良かったと頷く。
ポートランス公爵も頷いており、隣のガルドル伯爵がにこやかに話に参加する。
「その時は是非、私の商会の衣装を…。と言いたいところですが、本日の衣装も素晴らしいですね。もしや話題のチンタック男爵の商会でしょうか?」
確かに俺とテオの衣装は、チンタックで仕立てたものだ。
話題とはと聞くと、ガルドル伯爵は大きく頷いた。
「ええ、帝国でも話題ですよ!デザイン性に優れ、何より防護魔法のかかった布を使用しているとか。平民向けも販売しているのでジワジワと人気になっているんです」
なるほど。
確かにチンタック男爵家のミーク令嬢のデザイン性は素晴らしいし、俺も一緒に開発した布は帝国でも需要がある様だ。
「ああ、ギルが開発に参加した布だな」
「なんと!ギル様はそちらにも関わってらしたんですね!いやはや、魔力を込められるジュエリーの話や、小型冷蔵箱の話は聞き及んでいましたが…」
テオが誇らしげに俺の名を出してくれるから、少しくすぐったくなるが、アピールの機会だからどんどん知ってもらわないとね。
彼らは顔も広いだろうから、俺の功績も広げてもらえるはず。
「あぁ。最近柑橘の料理が流行っているだろう?それも元を辿ればギルだ。病に臥せていた兄上の為に喉越しが良く、酸味がありさっぱりしたものを探していたんだそうだ。それと、最近帝国にも普及している栄養食品があるだろう?あれもギルの考案だ」
テオが俺の肩を引き寄せながら、胸を張って言うと、ポートランス公爵は驚いた様に目を見張った。
「アレもですか!?なんと。食の細くなった病人や、忙しくて食事を摂れない騎士達に好評で…。それもご兄弟の為に?」
うーん。
まだまだ俺の功績広がってないね。
誰か邪魔でもしてるのか?
「ええ…。本当に食が細くなり、少しでも栄養ををと考えまして。冷蔵箱も王都から送りやすくする為に考えたものが、普及しただけなんです。防護魔法の布は、討伐に行く父や長兄にと…」
照れながら言うと、帝国の方々は顔を見合わせていた。
「そうですか…。いえ、帝国にも広まりつつあるのに、ギル様の名前が広がっていないのはおかしいですね」
ガルドル伯爵の言葉に、ポートランス公爵もニムラス伯爵も頷いている。
「うむ。誰かが故意に隠しているのかもしれないな。私の商会の関係者は国で広く薬を扱っているので、その伝手を使って全国に普及させましょう」
「ああ、そうしてくれ。もし誰かが故意にギルの名を広めない様にしているのなら、私への反逆だ。分かり次第教えて欲しい」
テオの言葉に、ニムラス伯爵は苦笑しつつも必ずと言う。
「ふむ。それではギルが賢者だと言うのも隠されたのか?」
「「賢者!?」」
またも帝国の方々は驚いた声を上げる。
うーん。
誰が邪魔をしてるんだろう?
でも、レモルトの住民は知ってたから、国民から広げた方が良さそうな気がしてきたな。
343
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる