118 / 247
114 推し達の立ち回り
しおりを挟む次はホセ兄様だろうと、周りは固唾を飲んで待つ。
そこに、ホセ兄様が馬車から登場する。
「あ、ホセ様よ。あら…?」
「素敵なお洋服ですけれど…」
ホセ兄様に気が付いた、ご婦人達が驚くのも無理は無い。
「とても深みのある青色ですわね」
「胸元から肩の後ろまで、金と赤の刺繍と、あのキラキラした物は何かしら?」
ホセ兄様の服は、光沢のあるロイヤルブルーの生地で出来ていた。
フロル様の瞳の色である。
「ほう。ホセ殿はフロル殿の色をメインに使用したんだな」
テオがそう言うと、俺は笑顔で頷いた。
「ええ。今までは赤を多く使用していましたけど、フロル様の色を全面に出したいと希望したみたいです。それに最近はレッドドラゴンが領地を良く飛んでいるでしょう?青空にレッドドラゴンが飛んでいる様にデザインしたそうですよ」
俺がそう言うと、周りの貴族も感心していた。
ホセ兄様のマントはロイヤルブルーの生地に、右胸から肩の後ろまで金と赤のスパンコールと糸と使用してドラゴンを模した刺繍が美しく施されている。
中のチェスターコートも同じ様に刺繍がされ、スラックスも同じ生地を使用している。
ブーツと剣用のベルトは黒で統一し、右の耳元には赤く透き通った鱗の様なピアスをつけている。
まさかの青い服装で現れたホセ兄様に、周りは大変驚いていた。
もちろん、例の令嬢達もだ。
ホセ兄様に合わせて赤いドレスを着て来たんだろうが、ホセ兄様は今後はフロル様の青を身に纏うと公言した様なもの。
それに合わせて今度は青を着るなんて、本末転倒だろうから、ホセ兄様の作戦は上手くいったと思う。
「フロル様の色に合わせられたのね」
「素敵ですわね~。ジャメル領の青空をドラゴンが飛んでいるイメージと掛け合わせたんですって?」
「ジャメル領の良いアピールも出来るし、何より婚約者への愛情も溢れていて素晴らしいじゃないか」
周りからの評価も良い様なので、これでホセ兄様に言い寄りにくくなったんじゃないかな。
ホセ兄様は赤いドレスの二人には視線も寄越さず、愛おしそうな笑顔で後ろに手を差し出した。
照れながら、フロル様が現れると、周りからは素敵と言う声が上がる。
フロル様の服装は、ホセ兄様と完璧に対で仕立てられていた。
刺繍は左側にあり、ピアスも揃いのモノを左耳に飾り、長く美しい金髪は右側に束ねられている。
そして、二人は揃いでルビーとサファイヤが美しく施された、ブレスレットと指輪をつけている。
ホセ兄様はフロル様を恭しくエスコートして馬車から降ろすと、腰に手を回して抱き寄せた。
「本当にお似合いですわね」
「あの衣装は、チンタック家にホセ様が自ら注文なさったんだとか」
「あの宝飾品もランデバス商会にオーダーしたそうよ」
周りの楽しそうな話し声に笑顔を向けながら、父様とシェル様、ホセ兄様とはフロル様は俺達の所に歩いて来た。
「お久しぶりです、テオドール殿下」
シェル様がそう言い、四人がテオに頭を下げると、テオは笑顔で顔を上げる様に言う。
「皆とも元気そうで。それにしても良い衣装だ。とても良く似合っている」
「ありがとうございます」
「そのペンダントやピアスはもしや…」
「ええ。レッドドラゴンの鱗です。新しい夫夫達にと頂きました」
父様がそう言うと、ホセ兄様とフロル様は、照れた様に見つめ合う。
どうやら、レッドドラゴンに今後の領主になる事を説明した時に、それならとドラゴン夫夫の胸元の鱗を貰ったのだとか。
俺が連れては来たけど、やっぱりホセ兄様や父様に懐きすぎじゃない?
「ぜひ二人もドラゴンに挨拶にいらしてください。二人にも譲りたいと申しておりました」
「それは楽しみだな。ギル」
お、俺達にも貰えるのね。
それなら良しとしましょう。
そう思いニッコリと笑いテオを見上げる。
「私達は何に加工しましょう」
「そうだな。またゆっくり考えよう」
ドラゴンから夫夫として祝福を受けたと言う話はあっという間に広がるだろう。
ホセ兄様達にちょっかいを出す貴族も、さすがにドラゴンの機嫌を損ねる事はしないよね。
「さ、教会へ入ろう」
シェル様に促され、俺達は教会へと移動する事にした。
三大公爵家の次期当主の結婚式だから、親族や王族、高位貴族も参列する。
他のゲストはパーティーが行われるまで、庭に用意されたお酒や軽食を楽しみながら社交を楽しむのだ。
いよいよ結婚式が始まる。
俺の涙腺は大丈夫だろうか。
319
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる