転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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111 推しとの領地開拓に向けて

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「さ、こちらがジャメル領だ。あ、今上を飛んでいるのがレッドドラゴンの子供のカーリンで、よく父の屋敷とジャメルの屋敷を良く行き来しているから気にしないで」

馬車から見上げた頭上を楽しそうに飛んでいくドラゴンに、サーディンやテオの屋敷の方々は目を見開き驚いていた。

「あの子は特に父が好きで。元リネー領で暮らす父の所によく遊びに行くんだ。今日はこのまま着いてくると思う。そのおかげで魔物もすっかり近寄らなくなったから、安心して欲しい」

皆口を開いてこくこく頷いているけど、さすがにドラゴンは刺激が強かったかな?

父様は先に帰宅してリネーに帰った後、ジャメルの屋敷に来る事になっている。

俺はレモルトから数人の使用人達を連れ、テオが準備してくれた馬車でジャメルに帰って来ている。

半月ほどでジェレミー兄様の結婚式が執り行われるので、それまでは執事長のサンフルと料理長のズークがこちらで色々学び、結婚式を終えたら息子達が代わりにやって来る。

俺の執事として色々覚えてもらう為にサーディンと、一人の大男も一緒だ。

「すごいな!あれがレッドドラゴンか!」

「…ゲールったら」

レッドドラゴンに感嘆の声を上げる男に、サーディンが注意する。

ゲールと呼ばれたのは、テオの師匠であるドンガルバの息子で、今回俺達の護衛としてついて来てくれたのだ。

短く切り揃えられた茶髪と、焦茶色の瞳で、精悍な顔立ちに体格はがっしりしており、剣の腕も申し分無いとテオが言っていた。

サーディンがレモルトに身を寄せた時から、何かと面倒を見てくれているらしく、サーディンが俺付きの執事になると聞いた時も大変喜んでくれていた。

どうやら、サーディンの事を憎からず思っているみたいだけど、サーディンは心を痛めて自分に自信が無く、ずっと塞ぎ込んでいたから思いは伝えていないみたい。

中々お似合いだと思うから、早くサーディンには一人前の執事になってもらわないとね。

「ギル様。こちらは道がとてもキレイですね。周りの花々も素晴らしいです」

「ああ。王都から離れていると言うのに、とてもキレイに整備されている。これなら食材の輸送も安全でしょうね」

サンフルとズークの言葉に、俺はにっこりと笑顔を見せる。

「レッドドラゴンのおかげで安全な観光地だとアピールして、人が増える前に道を一掃したんだ。魔力を込めて花々をキレイにしたり魔物避けをしたりと、平民の仕事も増えたし、乗合馬車も一日に何本も出ている。今後はレモルトでも温泉地やレモンを売りにして行きたいから、道の整備から始める予定だよ。王都から離れているからこそ、お忍びでゆっくりしたい方々も居るだろうからね」

そう言うと、皆感嘆した様に頷いていた。

「レモルトは帝国とは言えやはり端ですからね。トーレになると聞いた時は驚く者も多かったですが、テオドール様が自ら開拓に乗り出すと聞き喜んでいるんです。冬は厳しく住人も少なくなって来ていましたので」

「働き先が増えれば、住民も増えるでしょうから、楽しみですよ。サンフルは先代が、そして私は曽祖父の代からレモルト出身なんです」

田舎とは言え故郷だもんね。

やっぱり賑やかになったら嬉しいんだろう。

皆に喜んでもらえる様に頑張らないとな。

俺はそう思いながら、レモルトの今後について少し話す。

「温泉は立派な観光地になると思うから、周りを貴族用と平民用と分けて開発しようと思うんだ。お互い気を使わなくて済むだろう?貴族用は少し離れた所に作って、静かにゆったり過ごせるとうたえば良い。流行り物やらは王都で楽しむだろうからね」

「なるほど。それなら辺鄙へんぴな場所を逆手に取って利用できますね。少し豪華に、それでいてお忍びな感じで作れば、貴族にウケると思います」

サーディンや周りが頷いてくれるので、俺は話を続ける。

「温泉と宿で贅沢にゆったりを貴族向けのテーマにして、平民向けにはお手軽で楽しめる感じにしたいんだ。温泉は下方になるけど、行き来しやすく、その周りに娯楽施設やお土産屋。食事処を作ろうと思ってる。平民向けと言っても、やはり観光で来てもらうから、少し強気の値段設定にしても問題は無いだろう。特産のレモンを使った料理も開発して、お土産の定番にして行きたいんだ」

旅行先でお財布が緩くなるのは、良くある話だしね。

それに、レモルトと言えばと言うお土産が出来れば、それだけで価値が出るはず。

寒くても温泉なら喜ばれそうだし、夏は涼しくレモンの爽やかさで売れると思うんだ。

「素晴らしいですね。確かに冬は寒いですが、あの温泉なら暖かく過ごせます。そう言えば、昔は冬場に氷を仕込んで、夏場に利用していたんですよ」

ズークの言葉に、俺は目を輝かせる。

それってアレが出来るじゃん!

「その事業は今は誰もやっていないの?」

「ええ、今は魔術で冷蔵できますからね…。険しい山の麓の池の氷を、洞窟で保存していたんです。もう作り手も居なくなってしまって。でも、自然に出来た氷は本当に美味しいんですよ」

それは使わないと勿体無いね!

美味しいなら尚更だ。

「かき氷ができるな」

俺がポツリと呟くと、サーディンは何ですかそれはと首を傾げた。

そうか、確かにトーレにもかき氷って無かったな。

ジャメルでは、たまに俺が魔力で水を凍らせて作ってたんだけど、それ以外で食べた事無かったかも。

この世界は氷を食べるって習慣が無いのか。

「ええと、氷を細かく削って果物の蜜を掛けて食べるんだ。夏場にぴったりじゃ無いかなって」

「氷を!?」

料理長のズークも驚いているので、やはりかき氷は無いんだと知る。

ジェラートとか冷たい飲み物はあるけど、魔力で冷やすから氷ってあまり生活に馴染みがないんだよね。

「そう。私は暑くなったら魔術で氷を作って、粉々にして蜜を掛けて食べていたんだ。騎士団にも振る舞っていたけど、そう言えば他じゃ見た事無かったな」

でも、俺の魔力で作るから、ジェレミー兄様には危険だと食べさせてあげる事は出来なかったんだよね。

他の魔力が弱めの人に作って貰っても、やっぱり凍り切らずに断念したんだった。

「どんな蜜をかけるのですか?」

ワクワクと言った様にズークが前のめりで聞いて来る。

「木苺や、ブルーベリーかな。でも、レモンもすごく会うと思うんだよね!甘くしても酸味を残しても、どちらも美味しいと思う」

「確かに!一度試してみましょう。夏場にはレモルトの名物になるかもしれません」

さすが料理人。

ズークのやる気に圧倒されながら、俺達はジャメルの屋敷へと進んで行く。






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