転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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110 推しと俺の歩み

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「ギル。君を可愛がりたい気持ちが溢れそうだが、今日は君とゆっくり話がしたい」

湯浴みも済んで、俺はテオと寝室のソファに横並びになって座る。

婚約者だし、ちょっとくらいイチャイチャも考えていたけど、テオが今後の事で話がしたいと言ったので俺も頷く。

「来月にはセルジオ殿とジェレミー殿の結婚式があるだろう?」

テオの言葉に頷く。

来月には、ジェレミー兄様達の盛大な結婚式が王都で行われる。

「その時に、私はギルの婚約者として出席する許しを頂いた。その後、君をマラサッタの貴族にお披露目する事になる」

テオの話を、俺は真剣に聞く。

ジェレミー兄様達の結婚式後は、父様とジェレミー兄様、セルジオ様も一緒に帝国の帝都へ行く予定だ。

トーレ王国の公爵家としての挨拶もあるし、帝国からテオが参列したお礼もある。

父様と一緒にレッドドラゴンリーフの発表もあるし、今回が良い機会なのだ。

「ジャメル侯爵達も一緒にお披露目になるが、その前に親しい友人達にだけギルを紹介しておきたい。この屋敷で小規模のパーティーを開きたいのだが、どうだろう」

テオの提案に、俺は考える。

親しい友人達への紹介なら、父様達がいる、かしこまったお披露目より先にしておいた方が、確かに良さそうではある。

テオの事だから、冒険者や堅苦しい貴族ではないだろうし。

「父様に許しを得られれば、俺は大丈夫だよ。でも、どんな方々を呼ぶのかは教えて欲しいな」

贈り物も準備したいしと言うと、テオは嬉しそうに頷いた。

「殆どが冒険者関係だ。後は貴族でも私に理解のある昔からの知り合い達だな。堅苦しいパーティーでは無く、ギルを友人達に紹介する形だ。兄達へのお披露目では、どうしても堅苦しくなるからな」

帝国の皇帝だもんね。

取り敢えず、帝国の厳しい目を向けられる準備って考えて、空気に慣れる為にも頑張らなきゃ。

そう思って快諾すると、テオは良かったと微笑んだ。

そして優しく抱きしめられる。

「…ギル。帝国の貴族には、私に大人しく帝都で嫁を娶り暮らせと言う派閥もいる。しかし、私は君以外を選ぶ事は無い。昔ながらの考えの連中で、例の令嬢の一族やその取り巻きが殆どだ」

テオの背に腕を回し、ゆったりと抱きしめ返しながら話を聞く。

テオに懸想する令嬢の家族なら、公爵関係だから色々面倒そうではあるが、問題を起こした今、当たり前だが立場が悪くなっているらしい。

「兄も随分と苦言を呈していたからな。長年皇帝の意見も聞かずに暴走し続けたとしても公表されたからか、民からの評判も悪くなっている。その裏で少しずつではあるが、テオの功績も普及し始めている」

おお、良いタイミング!

まぁ悪い話も流れるんだろうけど、それを払拭出来る様にしないと。

「テオと幸せに暮らせる様に、俺頑張るよ。取り敢えず貴族の情報とか教えてね。対策を取るから」

俺がそう言うと、テオは笑う。

そして、一層強く抱きしめられる。

「テオ?」

「…君の両親が亡くなった時。同じ現場に居合わせた冒険者もいる。彼が残されたサーディンを守り切ってくれた。私の師匠の様な人で、君のご両親とも親交があった」

俺の両親を知っている人。

そしてサーディンを守ってくれた人。

俺が視線でテオに続きを求めると、テオは苦笑いをした。

「その…。まぁ私の失敗談も沢山知っている人だ。私が冒険者を目指した人でもある」

「え、そうなの?それは気になる」

好きな人の若さ故の失敗談とか、興味ありまくりなんだけど。

俺の目が輝いた事に、テオは穏やかな笑顔を見せる。

「ドンガルバ・レモードと言う、元貴族の家系だ」

「元貴族…」

テオの話によるとレモードは子爵家であったが、二代前の当主が夫婦で流行病で亡くなった際、幼い子供が生まれたばかりであった為、領地は国へと返還されてしまったと言う。

僻地でありそこまで手は掛けられなかったが、元々当主が平民にも良くしていた事もあり、子供はそこそこの商家に跡取りにと引き取られんだと。

「商家を継いだ後も周りにも評判が良く、良い相手と結婚して産まれたのがドンガルバだ。本来なら彼が先々代の領地を統治しても良かったのだが、彼は騎士になり、その後冒険者の道を選んだんだ。元貴族の家系と言う事で皇城の剣術指導にも関わり、その際に私は指導を受けた。腕前は中々だよ」

テオより二十歳程年上で、現在は息子も同じ様に冒険者をしていると言う。

「実はな、レモード子爵家が治めていた領地こそ、このレモルトなのだ」

あ、そうなんだ。

この土地を盛り立てて行きたい理由の一つなんだね。

「親子で領主になる気は無いと言われ、結局は国の管理の領地だったから、シコリは無い。ゲールと言う息子も近くに住んでいて、サーディンとも親しく、今回の事も喜んでくれている」

なるほどね。

それなら俺が思う存分、レモルトを盛り立てて良い訳だ。

「その人もパーティーに呼ぶんだよね?俺が一旦ジャメルに帰る時は、テオはここに留まるの?」

「ああ。だが、料理人やサーディンをトーレへ連れて行って欲しい。あちらで料理や食材のルートの確保や、貴族のルールなども学ぶ必要があるからな」

確かにと大きく頷くと、テオは執事であるサンフルと料理長であるズークを半月程トールへと向かわせると言う。

その間はそれぞれの息子がこちらを取り仕切り、
あと半月は息子達と変わってこちらに戻る。

「どちらにもトーレの事を学んで欲しいからな」

「うん!ジャメル家とリーナイト家にも話をしてみるね!料理に関してはアイール伯爵家とかの、そちらに強い貴族にもお願いしてみるよ」

俺が仕事モードに突入すると、テオは苦笑しながら俺を抱きしめる。

「…サーディンを兄様達にも紹介したいから。皆きっと優しく受け入れてくれるよ」

「そうだな」

「きっと上手くいくよ。…次会えるのはジェレミー兄様達の結婚式??」

俺が甘える様にテオに抱き付くと、テオはとても色っぽい笑顔を見せる。

俺が目を閉じると、ゆっくりとテオの唇が降りてきた。


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