転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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107 推しと皇帝子息の話

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マラサッタ帝国の皇帝エラード閣下には、三人の息子がいる。

エラード閣下とテオ達他の兄弟は随分と歳が離れており、子供の方が近いんだとか。

確かにテオは三十五位だけど、皇帝は五十代だったね。

子息の一人目が、優秀で魔力も騎士としての腕も立つ、次期皇帝のサンカール殿下。

現在は三十歳で、学園を飛び級で卒業した後は、帝国公爵家の優秀な子息を娶り、皇帝の勤めを手伝い、国を治める為日々奔走している。

二人目は穏やかな性格で、優秀な頭脳のドレード殿下。

現在は二十八歳で、既に帝国公爵家の嫡男に嫁入りされ、子を成し穏やかに暮らしている。

孤児院や平民の学園、治癒院に力を入れており、帝国の孤児や平民も高い学びを受けられると聞いている。

そして三人目が現在二十二歳になる、問題のネラ殿下。

皇后に良く似た美人で、美しいプラチナブロンドと黒い瞳はテオに似ているらしい。

魔術に優れているが世間知らずで、イケオジのマラソにゾッコンなんだと。

マラソの男女関係に心を痛めている様だし、周りからの忠告も聞いてはいるそうだけど、やはりマラソと別れる気は無いんだとか。

皇帝の息子を手玉に取るとは、本当に悪い男だね。

「…まさかこのまま、その伯爵とご結婚なさるおつもりじゃ」

「いや、兄上が許さないだろうし、次期皇帝のサンカールは、帝国に害になるのなら弟でも切り捨てる覚悟がある。私にとってはどちらも可愛い甥なのだが、もしもの時は私もサンカールの意見を押す」

お、さすが皇室だね。

その考え方は冷たいと思うかもしれないけど、正しいと思う。

テオ以外の兄弟も、結局は国の為の結婚だし、皇帝の子息達もそうだろう。

テオが俺との仲を許されたのも、俺が貴族でレッドドラゴンに関わった事と様々な開発に携わった事、テオが様々な事を成し遂げたからに過ぎない。

どちらも国の為になるからね。

普通はそれくらいの困難を成し遂げなければ、許されないのだ。

今回も下級貴族の俺との結婚は、歓迎されたものではなかっただろうけど、レッドドラゴンリーフの成功はそれくらい大きかったのだ。

賢者だと発覚もしたので、条件は更に良くなったし。

「…実は、ネラにはスノラリア王国から縁談の話が来ている」

「スノラリア?随分遠い雪国ですよね?」

帝国からも、ラッカルからも、その隣のエルフの国セイレートより遥か遠くの雪国であるスノラリア。

年中雪が積もっているが、地下に農園やらを築いており、地下では快適な温度が年間通して保たれている。

地上では寒さに強い家畜が飼われており、雪国でも海があるので海鮮豊富で資源には困らない国だ。

軍事力も強く、今回のサンジカラとの戦争でも、協力国になっている。

「本人は拒否しているが、兄上はそれを許さないだろう。話がまとまり次第、ネラはスノラリアへ嫁ぐ。その時にマラソとは終わるのだと何度も言われている」

関係が終わるだけで、糾弾されないって、やっぱりマラソ伯爵は何かありそうだ。

中々の行いでも彼がすぐ糾弾されていない理由は、きっと彼がハニートラップ的な事をしており、それに王室も関係してるんだろうと推測した。

沢山の令嬢令息や、貴族の夫人に手を出して色んな情報を集める、いわゆる裏の人間なのでは?

裏の人間のくせにこんな堂々と動き回るのも、何かしら理由があるのだろう。

俺の意見に、テオは両手を上げる。

「やれやれ。ギルには敵わないな…。その通りだ」

「こんな私は、可愛げがないですか?」

ちょっと甘える様に言うと、テオが頬を緩める。

「まさか。話が早くて助かるし、いつも美しくて可愛いよ」

勘の良い可愛い男でごめんなさいね。

「しかし、その男が何故ネラ殿下に手を出しているのに、許されているのか分かりません」

三男とは言え、皇帝のご子息だよね?

俺が不思議そうにしていると、父様がなるほどと呟く。

父様は何か知っている様だ。

「父様?」

「テオドール殿下。私は以前帝国の王都で、マラソ伯爵と呼ばれる男性を見た事があります」

「ほう?」

「そして、若い頃にスノラリアに訪れた際に、スノラリアの軍を治めるヒョール公爵家にて、彼に良く似た人も見た事があります。似ていると言うよりも、本人だと思うのですが」

どう言う事?

俺が父様とテオを交互に見ると、テオは諦めた様に話し出す。

他言無用で頼むと言われたので、執事達には席を外して貰い、俺は術を部屋に掛ける。

ジック達も聞いて良いんだって。

「…レス殿がスノラリアでお会いしたのは、ヒョール公爵家のホート殿。そして、我が帝国でマラソ伯爵を名乗っている男は同一人物で間違いは無い」

スノラリアの貴族が、帝国で皇室に仕えてスパイ活動してるって事?

益々意味が分からなくなると、テオは全てを話してくれる。


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