転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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104 推しとの再会と初めての話

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「ジャメル侯爵。ギル。大変待たせしてしまって申し訳ない」

俺と父様が談笑していると、テオが駆け足でやって来る。

周りも一緒に立ち上がり、それぞれ挨拶を交わすと、テオが俺を抱きしめる。

も~人前で。

そう思いつつも、笑顔で抱き返し席に着く。

「ヤンダーク殿、私の代わりの出迎え感謝する。ギル、こちらのヤンダーク殿は大変優秀な魔術師でな。現在は隠居されているが、ご子息も王城に勤めているんだ」

「そうなのですね。ヤンダーク殿は何故こちらに?」

会話の流れで尋ねると、ニコニコしていたヤンダークの顔が曇る。

おっと地雷でしたかね。

「いえ、こちらは静かで煩わしい権力争いも無いでしょう?我が孫の一人が心を病んでおりまして、その療養を兼ねて。暗い話になってしまい申し訳ない」

おおおおっっと地雷踏んだー!!

しまったと思っていると、父様がそうかと静かに頷いた。

「…ヤンダーク殿。お孫さんはサーディン殿ではありませんか」

え?父様知ってるの?

俺が困惑していると、ヤンダークは力無く微笑んだ。

どう言う関係なんだろう。

父様ったら、ニルケス殿下みたいに昔手を出してたりしないよね?

俺の視線に、父様は小さく息を吐いてから、俺に向き直る。

どうやらテオも知っている様子だから、何か俺に関係あるんだろう。

「ギル。サーディン殿は、兄上と義姉上が命を掛けて守った子供だ」

命を掛けて守った。

その言葉が、胸に広がる。

「…魔物戦争の時ですか?」

声が震えそうになるのを、必死で堪えながら、俺は父様を見る。

「そうだ。現在はあのスタンピートはサンジカラの仕業だと分かっているが、あの時は帝国にまで魔物が押し寄せ、兄上達はその討伐に参加していた。帝国の帝都で、逃げ遅れた小さな子供連れの婦人が魔物に襲われていて、兄上達は残された子を守る為に」

そうか。

俺達には、魔物に襲われたとしか伝えられたなかった。

きっと、その守られた子供を守る為でもあったんだろうな。

俺は静かに頷く。

周りも俺の言葉を待っている様で、緊張しているのが分かる。

「やはり、父様と母様は最後まで誇り高きジャメルの騎士と魔術師だったのですね」

「ギル…」

「二人とも、変わらず私達兄弟の誇りですよ」

俺がしっかりと告げると、父様はホッとした様な顔になる。

父様も長い間言えずに辛かっただろうな。

そう思いつつ、今度はヤンダークに向き直る。

「それで、なぜお孫さんは心を病まれてしまったのですか?」

すぐ様テンションが戻る俺に、周りは目を丸くしているが、テオも父様も大きく頷いてくれる。

これが俺の生き方だもの。

二人が死んでしまってとても悲しかったけど、今は目の前にある事が大事。

甘えられる家族やテオ以外の人前で、グズグズなんてしないの。

俺の勢いに押され、ヤンダークはおずおずと話し始めた。

「あの子の母親も亡くなり、トーレ王国の辺境伯爵夫妻まで。そのせいで、サーディンは父親と兄達から嫌われてしまいまして。黒髪で黒目なのですが、心を閉ざしたせいか魔術も上手く使えず。厄介者として扱われる日々を見兼ね、私が早々と隠居しこの地に連れて来たのです」

何てこったい。

ちょっと現オレント伯爵とは仲良く出来ないかも~。

静かに怒りが湧いてきて、俺はテオを見る。

「うむ。ギルの意見を聞こうか」

「まず、魔物はサーディン殿のせいではありませんよね?奥様や母君が亡くなられて動揺するのは分かりますが、幼い子供に全ての責任を負わすのはいかがなものでしょうか。それにジャメル家に対する冒涜です」

俺がスラスラ話し始めると、父様は止められない事を分かっているので静かに目を閉じている。

「冒涜…ですか?」

ヤンダークの言葉に、力強く頷く。

「両親は彼にそんな思いをして欲しくて、命を掛けた訳では無いはずです。魔術を使えなくなる程追い詰め、心を病んでしまうなんて。母君や両親の死を無駄にするつもりとしか。…ヤンダーク殿。サーディン殿にお会いする事は可能でしょうか?」

俺は猪突猛進だぜ?

俺の急なお願いに、ヤンダークも目を丸めているが、テオが小さく頷くと執事に呼びに行かせる。

近所に住んで管理してくれてるお孫さんが、サーディンなんだね。

「ギル。会ってどうするつもりだ?」

父様の疑問はごもっとも。

ヤンダークも心配だろうから、取り敢えず俺の話を聞いて欲しい。

「まず、ジャメル家の意向を伝えます。彼を責める事は絶対に無いですし、両親の事で苦しんで欲しく無いです」

「ふむ」

「その後は、彼の魔術についてですね。もし心を閉ざしていて何らかのブレーキを自ら掛けているのなら、それを取り除きます」

「ほう」

「そして、帝国王城勤めでしたヤンダーク殿のお孫さんなら、見込みがあると思うんです。彼に才能を感じたら、私の執事になってもらいたいですね」

そこまで言い切ると、ヤンダークは益々目を丸くしているが、テオは楽しそうに笑う。

父様は俺が言い出したら聞かないと分かっているから、やってみなさいと頷いてくれた。

だって、両親が命を掛けて守った子供がそんな風に扱われてるなんて、腹が立つよ。

それに、レモルトで俺専属の執事って欲しかったんだ。

贖罪っぽい関係は嫌だから、才能を見出してが望んでそばに置く形にしたら、サーディンの汚名も晴れそうじゃない?


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