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101 推しと王城への報告
しおりを挟むテオが帰ってから、お祖父様に仮眠を取る様に命じられ、俺は三時間ほど寝る。
起きると、すぐさま身なりを整え、お祖父様と王城へ登城する事になっていた。
「取り敢えず報告は急いだ方が良いからな。ザーガルドにもう一度診断してもらい、軽く発表もされるが心配するな。他国では王のお付きのイメージが強いが、我が国では自由な冒険者のイメージの方が強い。今後は相談くらいはありそうだが、それくらいならいつもの事だろう」
確かに、学園では他国の賢者の存在の在り方には触れたけど、我が国での例はあまり無かったな。
そうか、平民だったからか。
今後は俺も貴族だし、王家から相談があったら応じるつもりではあるよ。
オール殿下やリーカイ様の事嫌いじゃ無いし。
「貴族の良い様に扱っては大損をする。それが我が国の賢者の捉え方だ。実際二人目の賢者は貴族に嫁入りさせられそうになって、激怒して国を離れているんだよ」
「え、そうなんですか?」
その子供達は国に帰って来たらしく、なんとかこの国で血が途絶えて無いんだとか。
「その時は帝国やラッカルに身を寄せていた様でな。いくつかの功績もあちらのものになってしまった。我が国にいてくれるだけで良いのだと言う考えは、そこから来ている。まぁ私の代で貴族に入ってしまっているから、今後は考えが変わってくるかもしれんし、ギルはテオドール殿下とご結婚するからな。それこそ子の縁談では揉めるかもしれんが…」
そうだよね。
多分賢者の血より、皇帝弟の血の方が重宝されそうだもんね。
俺がこの国で自由に出来ても、子供は厳しいかもしれない。
でも、俺ってワガママに自由に生きて来てるから、そこは譲る気は無い。
もし仮に賢者の血が他に流れてしまっても、それはそれで仕方ないと思うんだよね。
「確か、今現在の帝国の賢者も、元はサンジカラの血筋の方ですよね?」
「祖先はな。賢者は己の行き先を分かっていると言うから、賢者を国に無理やり縛り付けても意味は無い。ギルがテオドール殿下と出会ったのもそう言う事なのだろう。私が貴族になったのは妻に惚れ込んだからだが、貴族になって娘が貴族と結婚できた。それで良かったと思っている」
お祖父様の言葉に、俺は大きく頷く。
「お祖父様が貴族にならなければ、ジェレミー兄様に薬草は買えませんでしたし、私もテオドール殿下と婚約は難しかったでしょう。賢者と言う肩書きが増えた位に考えておきます。この肩書きなら、テオドール殿下の妻としても強力でしょう?」
文句がある奴は、賢者になってみろってね。
先程の俺の凹みっぷりを見ていたお祖父様は、その粋だと笑う。
そうしている間に、王城に着くと、事前連絡していたのかすぐ様謁見の間へ通される。
陛下とオール殿下、そして応急魔術師の方々が集まっていた。
「陛下、この度我が孫のギルに賢者の文字が現れた事をご報告に参りました」
「うむ。ザーガルド、診断を頼む」
サクサク進むね!
俺の本人証も事前に用意されていた様で、本当にすぐ診断される。
「…出ました。確かに賢者ですな」
あっさりしてますな!
俺が少し驚いていると、意外と陛下やオール殿下、ザーガルド伯爵は落ち着いている。
「ふむ、これでギルが賢者と発表されれば、ギルの事を危惧していた貴族達も黙るであろう」
「賢者ですからね。今までの行動も賢者だからかと納得するでしょう」
陛下とオール殿下の会話に、そう言う事かと納得する。
俺の開発やらの功績が大きすぎたのか、王城へ取り入れるべきとか、テオとの婚約を許して良いのかと言う貴族はやはりいるよね。
それを、賢者と言う事で黙らせる事が出来るんだって。
どれだけご先祖様は損害を与えたんだろうと、少し怖くなるけど。
「フォッフォッフォッ。まさかヘロルトの孫が賢者とはな。活躍や魔力を考えたら納得じゃ」
「うむ。どおりでギルドに通ったりする訳じゃ。血筋じゃったか」
ザーガルド伯爵とお祖父様は談笑始めてるし、席は準備されお茶は運ばれて来るし、リーカイ様も参加され、後から王妃やターン殿下も来るみたい。
これはただのお茶会だな。
そう思いつつ、俺も席についてお茶を楽しむ。
陛下とお祖父様達は別のテーブルで、俺はオール殿下達と一緒のテーブルだ。
「例の魔術師は早速ラッカルに送検された。王城の魔術師達が開発したモノのデータが取れたと喜んでいたよ」
周りの魔術師達はニコニコしているから、結構実験したんだろうなと思う。
あの魔術師の顔は確か可愛らしかった様な。
ラッカルで可愛がられる事を祈ってるよ。
「オール殿下、リーカイ様、ご成婚おめでとうございます」
俺がそう言うと、リーカイ様は花開くように微笑む。
実は昨日、会談の最後に二人の正式な婚約と成婚を知らされた。
明日の昼過ぎには一斉に国民に知らせが回るそうだ。
昨日の発表で言わなかったのは、色々被っちゃうからもあるけど、王家嫡男の婚約や成婚の発表は日が決まってたりするのだ。
明日は縁起の良い日だから、その日にするんだ。
縁起の良い日は季節ごとに決められていて、その日は学園が休みだったりするしね。
「ありがとう。これでリーカイを正式に相手だと発表出来る。セルジオや君達が羨ましかったよ」
嬉しそうに言うオール殿下に、リーカイ様は頬を染めて微笑んでいる。
「この国の為、そして殿下の為に少しでも役立つ様努力します」
この二人が新しい国のトップって事だよね?
わー俺って結構凄い位置にいない?
今更気付きつつも、俺は心から祝福しておく。
余談として、マクドル殿下との婚約話があったと聞かされたけど、テオが相手だったからその話も立ち消えたと言う。
マクドル殿下も素敵だけど、消えて良かったですとは言えないから、曖昧に微笑んでおいたけど!
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