転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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100 推しと診断の行方

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家に帰ってから、俺はこっそり診断を行ってみた。

本人証には日本語は出なかったのだが、賢者と言う文字が浮かび上がってしまう。

「賢者…。俺が?嘘でしょ…」

いや、この肩書きなんなの?

王族にも付いてなくない?

賢者と言ったら、この国には居ないけど帝国には皇帝付きの仕事だったはず。

ラッカルにも教皇のお付きだった気がするんだけど…。

これが知られたら、俺どうなるの!?

どうしようと悶々として一夜を過ごしたら、国に帰るテオが挨拶に来る。

急いで支度をして行くが、俺の顔色が悪すぎる。

「…ギル?顔色が悪いが何かあったのか?」

「眠れなかったのか?」

応接室でお茶を飲んでいたテオが、心配そうに俺に駆け寄り頬を撫でる。

お祖父様も心配そうだ。

「…昨日、自分の診断をしてみたんですが」

おずおずとテオとお祖父様に本人証を見せると、テオは驚いていたがお祖父様はなるほどと頷いた。

「賢者はギルに出たか」

どーゆー事!?

俺とテオが驚いていると、お祖父様はお茶を飲みながら話し始める。

「元々、リネー家は祖先が賢者であったからな。その方は爵位を拒否したので貴族では無かったが、偶に賢者が生まれる家系だと言い伝えられていたのだ。その方以降に一人いたぐらいだが、そろそろ出るのではと思っていたが、ギルであったか」

納得だなと落ち着いて話すお祖父様に、そんな話初耳ですと呟く。

「すまない。悩んだだろう?あまりに生まれないものだから、ただの言い伝えとなっていたのだよ」

賢者の子孫って。

そりゃお祖父様も俺も兄様達も優秀な訳だ。

「これは、報告しないといけないのでしょうか…」

面倒な事にならないよね?

不安そうに呟くと、お祖父様は頷く。

「一応はな。しかしながら、王家に使える必要も無い」

え、いいの?

賢者って王族に使えるイメージなんだけど。

帝国とかラッカルも、上の方に付いてるよ?

俺とテオが不思議そうにしていると、お祖父様はご先祖様の話をしてくれた。

「祖先はギラルドルフと言う賢者で、それは優秀で王都の発展に尽くしたのだが、貴族嫌いでな。好きなだけ発展に協力はするが、貴族とは関わりを持たない男だったのだ。まぁ、冒険好きの自由人だったのだよ」

あ、元々が冒険者だったんだね。

そりゃ貴族より自由に生きたいかもね。

「無理やり貴族に取り入れようとした際に、国を出ると宣言してな。当時の王はそれは困ると。自由に生きたいと言う、ギラルドルフの意思を尊重する法律が出来たのだ。その法律は後々の賢者にも適用されているからな。賢者でしたと発表した方が、ギルが制限される事は無いだろう」

なるほどね。

その人が賢者の力を発揮していたのは、王城で働く同じ平民の女性と恋仲だったからなんだって。

その人を助ける為に色々働いていたみたいで、その後はその人と結婚したんだと。

お祖父様が爵位を頂くまで、平民だったのはそう言った理由があるんだね。

「まぁ、わしは妻と結婚したからったから、爵位を頂いたのだがな」

お祖父様も愛ゆえだったんだね!

でもそのおかげで、両親が結婚出来た訳だから、良かったんだよ。

貴族だったから、ジェレミー兄様に高価な薬草を買えたんだもん。

やっぱ時代によって考えは変わるもんね。

「賢者か。私は賢者を娶る事が出来るのか。誇らしい」

テオが嬉しそうに俺の手を握ってくれたので、肩書きも良いかもと思う。

どうも単純です!

「私は一旦帝都に帰るが、この事は兄や周りに話しても大丈夫だろうか?」

「構いません。こちらもすぐに発表する様に手配致します」

お祖父様があっさりとオッケーを出すので、俺が賢者だと知られるのは本当に問題が無いのだと分かる。

「良かった。この肩書きでテオとの婚約が流れてしまったらと、不安だったんです」

正直に話すと、テオはとても嬉しそうに笑う。

「ギルはいつも自身に溢れているのに、私の事でこんなにも悩んでくれるのだな。もし反対されても必ず道を探すさ。約束は違えない」

テオ~!!

キュンキュンしていたら、お祖父様は少し席を外すと言って外に出て行く。

執事に報告書を、と言う声が聞こえたので、テオとの一時的お別れの時間をくれるのと、俺の代わりに王家への報告をしてくれるみたい。

「テオ…。ごめんね、もっと元気な姿で送り出したかったのに」

「ふふ。俺の事を思って悩んだギルの顔はとても素敵だ。いつも気を張ったり周りに気を遣っているだろう?こういった無防備な顔を見れて嬉しいよ」

「テオったら」

家族以外に弱みを見せるなんて、初めてかも。

俺はそのままテオの胸に飛び込んで、熱く抱擁し合う。

「離れるのは辛いが、すぐに報告を終えレモルトに戻ろう。私が住むのは元領主の屋敷だが、敷地内を整備して新しい屋敷を建設している。ギルの意見も聞きたいから、内装は二人で考えたい」

皇帝弟のお屋敷って凄そう…。

「元のお屋敷はどうするの?」

「ふむ。近くに使用人の家もあるしな。取り壊しを検討しているが」

もったいなーい!

今現在テオが住めるなら、十分立派な屋敷のはず。

「状態が良いのなら、少し手を加えてお客様用の離れにしたら?温泉が引けるなら、お風呂も改装して。俺の家族やテオの家族も呼びやすいでしょう?」

再利用出来る物はしていこうと提案すると、テオは嬉しそうに笑う。

「そうか。その手もあるな。本宅とは少し離れて作る予定だから、要人も呼びやすいだろうし、そう伝えよう。ギルと新しい家の話をするのが楽しみだ」

「俺も。お風呂は広いのが良いな」

ジャメル家は広めだけど、王都は土地がそんなにあるわけじゃ無いから、少し狭いのだ。

都会のマンションのお風呂が狭い感じ。

「ふふ、もちろん」

あ、いやらしいこと考えてるな。

そう思いつつも、降りてくるテオのキスをうっとりと受け止める。

俺も早くこちらを落ち着かせて、テオの元に行かないとね。



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