102 / 247
99 推し達と俺の話
しおりを挟む「確かに。ギルの発明や提案は、新しいし斬新だな」
オール殿下まで不思議そうに俺を見るから、心の中で冷や汗が滝の様に流れて行く。
「転生ですか…。私の提案やらは、始まりは殆どが気まぐれなんです」
俺が少し戸惑った様に言うと、話の続きを促される。
テオったら余計な事言って!
取り敢えず、突っ込まれない様にしなきゃ!
「まず、魔術水道なんですが。王都に来た時に水道水が美味しくなくて…。領地は緑も多く田舎だから美味しかったのだろうと思い、お祖父様の健康も考えて、自分で色々開発してみたんです。それを水質に困っていたクラスメイトに話した所、オルネス伯爵が話を聞き付けて下さってああいった形に」
「なるほど。確かにジャメル領は自然が豊かで水質も良いからな。人の多い王都なら水質が悪いのだろうと思ったのか。オルネス伯爵は元々ウォーク家を疑っていて、調べて裏を取った後だった様で、ギルの発明した浄水魔術水道を見てこれならと、売り出す計画を立てたそうだ」
本当にたまたまだったんですよと、恥ずかしそうに付け加えておく。
実際たまたまだったしね…。
「柑橘類のデザートは、元々さっぱりした物を求めていたのもありますし、ジェレミー兄様が柑橘の香りが好きだったので。あまり菓子類には使用されていなかったですが、食べてみたら悪く無かったんです」
「食べてみたのか」
「何事も試してみたくなる性分でして」
セルジオ様に驚かれつつも、香りが良いなら大丈夫だと思ってとトボけておく。
実際レモンとかは酸味が強いけど、味は悪く無いからね。
「蜜と合わせたら十分美味しく頂けましたし、食事の間の口直しにもぴったりだと思って。それにジュレにしたらサッパリしていて、ジェレミー兄様にも喜ばれそうだと思ったんです。その後は、アイーク伯爵家やアドン子爵家が沢山考案してくださって、美味しい菓子や料理が増えたのです。栄養食品も、少しでもジェレミー兄様に栄養を取って欲しくて。ホセ兄様が遠征する時にも良い食料になると思って、提案してみたんです」
俺の話を、皆真剣に聞いてくれている。
ジェレミー兄様やフロル様は微笑ましく見てくれてるけど。
「冷菓は口にしやすいからと開発したんですが、ジャメル領まで運ぶには大変でしょう?そこで小型の保冷箱も考えたんです。そしたらレストラン等の仕入れにも好評だったみたいで。おかげで美味しい魚料理が味わえる様になりましたし。防護機能のついた布の開発は、父様やホセ兄様の甲冑もカッコいいですが、せっかくなのでスタイルの良さやそのままの格好良さが分かる服が作りたくて…。軽くて丈夫なら、ジェレミー兄様や私の洋服にも良いと思ったのがきっかけですね。その後はチンタック男爵家のミーク嬢の才能が遺憾無く発揮されたので、流行したまでです。魔力を貯められる宝石や装飾品は、ジェレミー兄様に危険があった時に防げる様にと、クラスメイト達に防護魔法を教えている時に良いのではと考えついたんです。貴族が狙われれる事件も多いですし…」
取り敢えずそこまで話すと、父様達はニコニコして、オール殿下もテオもそうかそうかと頷いている。
実際転生して前世の記憶で大儲けより、俺の好きな事を好きな様にしていた結果なんだよね。
「ふむ。ギルの発明は殆どが誰かの為のものだったのだな。今流行りの軽食スタイルも、ジェレミー殿の為だと言っていたな」
テオの言葉に、そうだと頷く。
俺の希望も沢山反映されているけど、確かに家族や周りの為に考えて、前世の記憶を使ってるのが多いのだ。
「転生と言うより、ギルは好奇心旺盛で、自分で探索したり探すのが好きなのだろうな。そして誰かの為に動く事も苦では無いのだろう」
オール殿下がそう締めてくれたので、ホッとしながら頭を下げておく。
そうです転生なんですなんて、口が裂けても言えない。
だって自分の事もあんまり覚えてないからね。
「ふふ。ギルは本当に家族が好きなのだな」
「そうだな。私やホセの服装も、ギルの好みに合わせて行った結果が大きいからな」
シェル様の言葉に、父様が笑いながら返すと、ホセ兄様も参戦してくる。
「王都の貴族に田舎者と笑われたと話したら、王都や帝国王都で流行りの服装や着こなしの資料を山程持ってきましたからね。父上に体を絞る様にお願いしたり、辺境騎士と言えど、そこら辺の流行にも敏感であれ。エスコートする相手の為にもスマートになれと怒られ、我が騎士団も随分流行に詳しくなりましたよ。おかげでシェル様やフロルの隣も堂々と歩けましたが」
「ホセ様ったら」
最後に惚気つつ、ホセ兄様の暴露に慌てる。
俺が作りあげた父様達のスマートなイメージが悪くなっちゃうでしょ!
「見た目や実力だって父様達の方がカッコいいんですから、服装や所作を完璧にしたら鬼に金棒じゃ無いですか。下手な陰口しか叩けない貴族を見返したかっただけです」
ちょっと拗ねた様に言うと、テオが楽しそうに俺を見ている。
子供っぽいかもしれないけど、大好きな家族を悪く言われたら腹立つでしょ?
結局、俺の家族バカ過ぎる一面を知られるだけの席になってしまった。
恥ずかしいけど、これで俺が家族や好きな人の為だけに動いてる貴族ってイメージも付いたよね?ね?
この国に害はありませんよと、アピール出来たよね?
さっき診断してみて、もし俺が今診断したら俺にも文字が浮かび上がるんじゃ無いだろうかと心配になる。
帰ったら、こっそり診断してみようかな。
367
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる