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95 推しと転生少女
しおりを挟む「危険が無い様に、私が目眩しの魔術を掛けます。私とオール殿下以外は姿が見えない様にしますので。お話しされても相手には分かりませんので大丈夫ですよ」
俺がオール殿下に、罪人に話が聞きたいと言うと、オール殿下以外にマクドル殿下、ニルケス殿下、セルジオ様、ホセ兄様、父様とシェル様にドンク公爵とダイヤ公爵。
そしてテオも参加する事になった。
まさか三大公爵家が参加するとは思わなかったら、余計な事言わない様に気をつけないと。
ジェレミー兄様達も来たがったけど、危険があったらと言うことで、今はリーカイ様達とお茶をしてもらっている。
パニ伯爵家のエパは、貴族の牢獄である王城敷地内にある厳重な警備の地下牢屋に入れられている。
ここから、処刑される罪人以外の貴族はラッカルに送られるのが普通だ。
ラッカルに送られ、そこの囚人棟で神に使える信者として質素で誠実に変わる事が出来ない者は、自ら命を断つ事が多い。
ラッカルは囚人用の島を持っているので、そこに送られるのだが、そこでの暮らしに耐えられるかどうかなんだよね。
もちろん人道的な収容所だから、厳しくても衣食住はしっかりしている。
娯楽は無いし、美しく着飾る事も無いし、己を鍛える為の農業などが主な活動だからか、貴族には中々厳しい世界なんだ。
平民は王都外れの険しい山の中にある囚人棟に送られる事が多いが、我が国は犯罪率も低いし、厳重に警備されている。
「それでは、こちらになります。囚人達が悪さを企てない様、それぞれの牢は孤立しており接触は出来ない様に魔術も掛けられております」
看守長の説明を受け、俺たちはゾロゾロとエパの牢屋へ進む。
扉が開けられ、鉄格子の奥の質素な石造りの部屋の中の椅子に、エパは座っている。
俺達が来ると伝えられていたので、なんとか身だしなみを整えてはいるが、肌も髪もガサガサで俺を睨みつけている。
「何のご用かしら。オール殿下だけでしたら喜んだけれど、あなたがいると言うことは碌でも無い事でしょう」
あらあらご挨拶ですね。
そう思いつつ、俺はにこやかに笑っておく。
「いえ、あなたが転生して来たと言う話に興味がありましてね。どうやら疫病やら魔物戦争やらと話してらしたので。あなたは聖女様なんだとか」
聖女という言葉に、何か希望を感じたのかエパは立ち上がってこちらに近づく。
こっそり自白の魔術を掛けようかと思ってたけど、極限状態の今ならペラペラ話してくれそうだな。
「そうよ、私は聖女なの!」
鉄格子を握りしめながら、オール殿下に訴える。
「…どう言った理由で聖女なのですか?私や兄が生きていると不都合のある聖女とは」
俺が訝しげに聞くと、エパを俺を睨みつけた。
「私の物語では、あなたは存在していないのよ!」
ほほう。
やっぱり詳しく聞きたいね。
「そもそも、ジャメル家の今の当主とホセ様は歪みあっていて、当主は自分より優秀なホセ様の命を狙っていたのよ。それでも恩があるからと悩むホセ様に、私が癒しを与えるの。当主は太って醜い男で、王都の貴族に振られた腹いせに王都の水道を悪くして疫病が流行るのよ!それを私が浄化するの!」
ああ、乙女ゲーでありそうな展開ですが、父様とホセ兄様は仲良いし、父様はイケオジでマッチョですから!!
父様とシェル様とホセ兄様は静かに怒ってるけど、黙って話を聞いてくれている。
「そしてセルジオ様は、弟が命を絶った事で自分を責めるの。それを癒すのも私よ。ヨハンの相手はリリーではなくて娼婦の女だったのに、ドンク公爵家のジャカル様が全くリリーと良い仲にならずヨハンと上手く行ったのも予定外だったのよ。ダイヤ公爵家はヨハンの相手の女のせいで処刑され、公爵家は爵位返上になるはずだったのに」
ヨハンはタチの悪い女と詐欺行為を行い、駆け落ちでもする設定だったのだとか。
ダイヤ公爵めっちゃ怒ってるけど。
「王妃様とターン殿下は、帝国の悪い貴族に暗殺されるはずだったのよ」
「何だって?」
さすがにオール殿下が噛み付く。
確かにその情報は初耳だし、聞いときたい。
「帝国のガンタレ伯爵と言う悪い奴なんです!帝国でも悪さをしていて、国同士を争わそうと王妃様達を狙うんです!」
その話を聞きつつ、俺はおかしいと気が付く。
「…ガンタレ伯爵は、帝国でドラゴンの権利を自分の物にしようとして、ドラゴンに領地ごと消されてしまった方ですよね?」
「何ですって!?」
確か、帝国で消された伯爵だったはず。
テオをチラリと見ると、大きく頷いているから間違いない様だ。
「そんなはずないわ!ガンタレ伯爵の罪を謝罪する為に、帝国から皇帝弟殿下がこちらにいらっしゃるの。周りからも責められ辛い中を私が癒すのよ!」
「…ちなみに、どなたでしょうか」
「テオドール殿下よ!帝国でオシャレで流行を発信する方よ。婚約者である従姉妹の令嬢と一緒に華やかな生活をされているんだけど、婚約者がガンタレと繋がっていて裏切っていたの。その贖罪であちこち回っていて…。その時に魔物が活発になって国が危険に晒されるのよ。その時に手を取り合って私と魔物を倒すの!そして私は帝国へ誘われて新しい話が始まるのよ!」
テオも攻略者の一人だって言うのか!!
そう言えば帝国から皇子が来ないって言ってたな!
その物語では例の公爵令嬢が婚約者で、テオも一緒にインフルエンサー的な存在だったんだ。
なんかムカつく話だな。
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