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94 推しとトラブル回避
しおりを挟む「セルジオ様。ホセ殿、ギル殿。この度は息子が迷惑を掛けたと言うのに、コーンを騎士団へ誘って頂いて。本当に感謝しています」
俺達が楽しく談笑していると、ポプル伯爵が長男と一緒に会話に入って来た。
メーデフの後輩の一人であり、俺の魔術に少し抵抗出来そうだった、コーンの父親だ。
あの後ポプル伯爵はすぐにセルジオ様の所に謝罪に行き、そしてお祖父様の屋敷にも謝罪に来てくれた。
メーデフ達の親とは違い、誠意ある人物だからね。
その時に、コーンの腕を見込んで辺境騎士団へ誘ったのだ。
ポプル家は代々化粧品関係の商売をしており、嫡男であるカーンも優秀であるが線が細く、騎士の婚約者を婿入りさせる。
その中でコーンは剣術の才能はあったのだが、お家柄とは違う為燻っていた様だ。
「ギルが見込みがあると言うのは珍しいので。まだまだ荒削りの様ですが、筋が良いと報告が来ています。卒業後は我がジャメル領へ騎士として務めて貰えばと」
ホセ兄様は、俺の話を聞いて謹慎している本人をジャメル領へ行かせた。
まだ学生だから、体験入団みたいな感じなんだけど、想像以上に水が合ったみたいで、のびのびと剣術に励んでいるんだとか。
「本当にありがたい話です。我が家は商家ですし、いずれは何処かの令嬢令息とご縁をと考えていましたが。本人はずっと騎士の道に憧れがあった様で。言い出せずに燻ってしまい、悪い上級生の輪に入ってしまいどうしたものかと思っていましたが」
「若い頃に悩んで躓く事は、誰しもありますよ。ご子息は反省し、自分の道を切り拓こうとしています。我が領地の騎士達も、中々の問題児だった者が多いですからね。問題児のままでいるか、更生するかは本人次第。彼は立派に更生すると私は信じています」
ホセ兄様の言葉に、ポプル伯爵とカーンはホッと胸を撫で下ろしている。
ちょっとやんちゃする位が可愛いのさ。
『コンダック伯爵家の子息は、パニ伯爵家の娘とも懇意だった様ですが、ポプル伯爵家の子息は見向きもしていなかったそうで』
『コンダック伯爵家の息子は本当に問題児だな。パニ伯爵家の娘繋がりで、例の令嬢とも仲良くしていたらしいぞ?』
周りのヒソヒソ話に、ポプル伯爵は体を小さくしている。
「恥ずかしながら、我が息子のコーンにも、パニ家の令嬢の接触があったそうなんです。あまりに支離滅裂な発言が多く、相手にしなかった様ですが」
「支離滅裂とは?」
「それが…。まずお家は橋の管理でしたでしょう?それなのに宝石が自由に手に入るだの、王都の水質が下がり疫病が流行るだの。また魔物が押し寄せて来るので、自分はそれらから国を守る聖女なのだとか」
おっと、エパは転生とか言ってたし、彼女の知る物語ではそんなストーリーなのか?
『気が触れていたのか?彼女も診断を受けているはずだから、聖女ならその時に発覚するだろうに』
『随分失礼な発言が多かったからな。思い込んでいたとしても、彼女の聖女像には疑問があるな』
生まれて来る家の商売が違ったり、俺達が生きてたり、別の男を誘惑しちゃったりして話が変わってるみたいだけど、ちょっとどんな話か聞いてみたいもんだな。
「聖女…。確かにそんな存在を聞いた事はあるが、それが自分だと風聴するとは…」
「はい。コンダック家の子息達は信じていた様です。自分達は聖女に選ばれた騎士になるのだと。さすがに息子や友人数人も距離を置き始めていた様なのですが、卒業パーティーでは上級者に逆らえず。とんだご無礼を致しました」
そうだったのか。
確かに、やる気のない感じでコンダックに従ってる数人には悪い事したね。
その後はポプル家とセルジオ様達が談笑し初めて、化粧品や香水の話で盛り上がっている。
特にポプル家を責める人は居ないからね。
「…聖女ですか。彼女の話には信憑性は無いですけれど、何処からそんな知識を手に入れたんでしょう」
「あら、ギル様気になりますの?」
「ええ。わざわざサンジカラの令嬢を引き入れたり、他の貴族をかき回したりして、余程の自信があった様に感じます。王都に疫病なんて流行ったら大変ですからね。それにまた魔物が押し寄せるなんて。彼女の虚言なのか、誰かの駒なのか。一度話を聞いてみたいものですね」
ちょっと不安そうに話すと、周りも頷いてくれる。
「確かにそうだな。サンジカラの令嬢も彼女を信じて動いたんだろう?彼女が信じた理由も謎だ」
「そうですわね。何かもっと大きなものが裏にあるとしたら、怖い話ですわ。我々貴族も注意しなくてはなりませんわね」
ハイリ嬢の言葉に、周りも賛同している。
『パニ伯爵も、なぜ娘の話を間に受けたのだろうな』
『昔は穏やかな方でしたのにね』
裏もなく娘の前世の記憶で突っ走ってたなら、大層な勘違いだけども。
ちょっと殿下やらに相談して、こっそり話を聞いてやろ。
俺はそう思い、挨拶のフリをしてこっそりオール殿下に接触する。
危険な芽は摘まなきゃな。
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