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93 推し達との祝賀会
しおりを挟む国民への発表が終わると、王城では祝賀会が開かれる。
ニルケス殿下の事などもあったけど、レッドドラゴンリーフやターン殿下の回復はお祝いだしね。
卒業パーティーより多くの貴族が参列し、国民達にはお祝いのお菓子やお酒が振る舞われるのだ。
ジャメル家は侯爵になって、シェル様は嫁いで来るし、そのお祝いもある。
一月もしないうちにセルジオ様とジェレミー兄様は正式に結婚式を挙げ、爵位を継ぐ。
そしてフロル様もホセ兄様に連れられて、ジャメルへ行く。
シェル様は、なんだかんだ言いつつ一年は行き来して、セルジオ様達を支えるのだ。
俺も今日はポーカーフェイスのツンデレを封印して、周りに愛想を振り撒いておこう。
「あの軽食スタイルも、ギル様の考案でしたのね!」
「アイール伯爵家のカフェで大人気ですもの。他のカフェでも真似したスタイルが流行っておりますわ。それぞれのお店の特徴が出て、皆さん好評なんですわよ」
早速、セーラ嬢とハイリ嬢お祝いをしつつ話しかけてくれる。
他にも元クラスメイト達が集まり、和やかな空気で会話が始まる。
父様とシェル様も旧友達に囲まれており、俺の周りはセルジオ様とジェレミー兄様。
そしてホセ兄様とフロル様も揃っている。
ニルケス殿下は妾腹とは言え、剣術は確かで成績も良く友人も多かった為、周りには安堵し叱責してくれる旧友達が集まって、ヨンジとの仲を祝っている。
「ギル殿。あのスタイルはどうやって思いついたんだい?今までも綺麗に飾られたデザートが好評だったけれど、少しずつの量で多くの味を楽しめるスタイルには感激したよ」
「ああ。甘味ばかりで無い所も気に入った。ケーキスタンドに素敵に飾られて来て、母にも好評だったよ」
クラスメイト達の評価に、ホッと胸を撫で下ろしつつ、俺は猫を被りつつ説明する。
「あれは…。ジェレミー兄様が回復した時に、多くの種類を少量で出して、食べたい物を食べやすい様に考えたのかきっかけなんだ。兄様が回復したら、アレコレと食べてもらいたい美味しい物が、王都や帝国には沢山あったからね」
「まぁ。お兄様の為でしたのね」
感動的な空気に包まれるけど、これは本当なんだよね。
王都や帝国で美味しいお菓子や軽食を口にする度に、ジェレミー兄様に食べて貰いたいリストに入れてたんだ。
回復したからって、すぐにアレコレは食べれないから、少しずつ出して食べたい時に食べれる様にしてみたんだけど、兄様にとても喜ばれたの。
俺もおこぼれを貰いつつ、少しずつでも沢山味わえて満足だったから、このスタイルのカフェは需要があるんじゃと思ったのだ。
そこに、セルジオ様とジェレミー兄様が会話に入る。
「ギルは本当に兄思いなのだな。確かにあのスタイルなら少量だし口に運びやすい」
「実際に、少しずつ口にする事が出来たので、体調に合わせて食べやすい物も分かりました。初めて口にした、柑橘のジュレは本当に美味しくて。喉越しも良く食欲の無い時に助かりました。ありがとうギル」
ジェレミー兄様にお礼を言われ、ニヤニヤしそうになるけど、微笑むくらいに抑えておく。
俺が本気でニヤニヤしたらきっと必ず気持ち悪いからね!
そのやり取りを、周りは優しい目で見ている。
「ギル様は、周りの方々の為に日々奔走してらしたのね。帝国のギルドに参加されていたのには驚いたけれど、そちらで鍛錬されていたって事ですものね」
「確かに。テオドール殿下と一緒に行動出来ていたのなら、中々の腕前だ。ギル殿はテオドール殿下をご存知で?」
皆が聞きたかった事だろうから、取り敢えず印象が悪く無いならない様に話す。
「実は、どちらも身分を隠していたので。ドラゴンをこちらに連れて来るときに、私の正体は話したのだけれど、殿下が皇帝閣下の弟殿下だとは先日のパーティーで初めて知りました」
お互いに知らなかったと告げると、周りは驚いていた。
ギルドで活動する時に、身分を隠す事は良くあるんだけどね。
「気が付かなかったのですか?」
「今思えば、殿下の行動はスマートで立ち振る舞いも上品でしたが。帝国のS級ランクとなれば貴族や王族と接する事もあるでしょう?その為にきちんとマナーを身につけているものだとばかり…。私は初めから平民では無いのでは?と思われていたみたいですが」
俺が恥ずかしそうに話すと、周りも納得してくれる。
「確かに、S級ランクの冒険者でしたら、貴族の方々とのやり取りも多いですわね。それにしても、ギル様が平民は少し無理がありますわよ。テオドール殿下はギル様の目的を知って、加護しながら協力なさっていたのでは無いかしら」
ハイリ嬢の言葉に、周りも頷いている。
確かにその通りなんだよね。
こっそり俺が他の冒険者とやり取りしなくて良い様に動いてくれていたし、目立たない様にもしてくれてたんだ。
「ならば、その時にはもう見そめられていらしたのね!例の令嬢の失態にわざわざ皇帝弟殿下がいらしたのも、ギル様に再会する為もあったんじゃないのかしら」
「そうそう!とても楽しそうにダンスを踊ってらしたし、テオドール殿下はギル様が卒業するのをお待ちになっていたのね」
周りに囃し立てながらも、取り敢えず照れていると、周りの評価も少しずつ変わっていく。
『ギル殿を優秀なだけで性悪だと言っていた貴族は、何を見ていたんだろうな』
『彼らは最優秀クラスでも無いからな。問題児が多い様だし、妬み嫉みがあったんじゃないか』
『ああ、コンダック家は息子は留年になったし、姉は例の観劇に夢中になって、罪人のキムートに連れ回されていたじゃないか。そういった輩の話だったんだろう』
『なんと。息子だけではなく娘もか。良い歳でも婚約もせずにあんな物語に夢中になるとは』
こっそり他の貴族達の会話も盗み聞くと、コンダック家の悪評のおかげで俺の評価も上がっている。
魔力が高く優秀なのを鼻に掛け、気が強く口の悪いギルから、家族思いで努力家で、開発や商才にも長けるイメージに今の内に変えておかないとね。
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