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90 推し達と報告の始まり
しおりを挟む王家が勢揃いしており、陛下の隣にニルケスがヨンジを支える様にして立っている。
「先に速報を出していた通り、我が弟であるニルケスはコンヌル公爵家のヨンジの婿として降下し、爵位を継ぐ事になった。我が王室の失態もあるが、キムート元子爵が雇っていたサンジカラ繋がりの腕の立つ魔術師により、強く恐ろしい魔術を掛けられ、ニルケスもヨンジも長年苦しんでいた」
陛下の説明に、周りはザワザワする。
取り敢えず簡単な説明は、新聞みたいな速報が出ていたんだけど、キムートがサンジカラ繋がりの魔術師を利用していたと言う情報は出ていなかったからね。
あえて出さずに、ここで非難がキムートに行く様にしたんだと思う。
魔術が解けたヨンジが、弱々しく保護欲をそそる見た目なのも、それをしっかりとニルケス殿下が支えているのも、印象は悪く無いんだろう。
魔法の内容も細かく説明され、余りの恐ろしさに観衆は絶句していた。
『まるで、奴隷具の様な魔法では無いか』
『恐ろしい…。そんな魔術師を雇っていたなんて…』
キムートにヘイトが集まる流れで、陛下は話を続ける。
「ニルケスの行いも軽率であったが、自らを罰する為にと多くの戦闘に参加している。帝国やラッカルでの功績が向こうで讃えられ、サンジカラとの抗争でも高く評価されている。コンヌル公爵家に降下し、ヨンジと共に我が国を守る事に尽力すると誓った為、今後はコンヌル公爵家の活躍に期待して欲しい」
外国での活躍や、サンジカラとの抗争もニルケス殿下のイメージアップにはなるね。
実際結構活躍してたみたいだから、帝国やラッカルからも表彰されてるみたい。
新しい爵位は作らないと言う説明にも、どうやら皆納得した様だ。
その分税金が流れないって事だからね。
「コンヌル公爵家のニージは、フーカ伯爵家への嫁入りも決まった」
その言葉にまた騒つくが、紹介され観衆の前に姿を出したフーカ伯爵の幸せそうな顔に、なるほどと納得している。
フーカ伯爵はジャメルとは別の辺境伯爵であるが、魔物の出現は少ない為、穏やかで小麦などの作物栽培が盛んな所だ。
大きくクマさんの様な見た目だが、顔立ちは良く心優しいのに、辺境な為か婚約者には恵まれていなかった。
そのフーカ伯爵が、とても愛おしそうにニージを見ているので、望んでいた様に見えるもんね。
『確かニージ様とフーカ伯爵は、同学年のクラスメイトだったな』
『ああ。お互い憎からず思っていたはずだ。良い形に収まったな』
貴族達のヒソヒソ話も好印象だし、こちらも白い目では見られないだろう。
公爵家の嫡男が、伯爵家へ嫁入りってだけでも結構反省が感じられるからね。
「キムート元子爵の行いは、国家反逆罪に値する。最近貴族の品性に欠ける下品な劇が話題となっていたが、そちらの劇団にも関わっていた事が判明している」
陛下の立て続けの発表に、貴族達はヒソヒソと話し出す。
『例の劇か。アレは確かに不快だった』
『勝手に不貞を働いたり、婚約破棄しておいて、被害者の令嬢が悪く描かれているんですもの。キムート元子爵の考えがああだったのでしょうね』
『あんな馬鹿げた話に、傾倒している令嬢も居たそうだぞ』
『まぁ。情けない』
貴族達のヒソヒソ話に、耳が痛い令嬢達は俯いている。
「作り話として理解し、楽しむ分には問題は無い。賢い者はきちんと、物語だと理解しているだろう。しかし、どうもそうで無い令嬢も居る様だ。貴族街などで婚約者や相手の居る者に、勝手に懸想し、自分と良い仲になると思い込んで迷惑を掛ける事案が多発していると報告を受けた。貴族以外でも迷惑を被った民からの声も届いている。問題を起こした令嬢達にも処分を検討している。キムートは自分の劇団の物語に現実味を帯びさせ、他の貴族へ嫌がらせを楽しんでいた様だ。全くもって情けない。今回爵位は剥奪され、処罰される事になった。サンジカラ繋がりの魔術師も、同じ様に重い罪が科せられる。強い力の持ち主ではあったが、王城魔術師達等の尽力により、殆ど力が使えない状態になっている。今後はラッカルへ移送され、厳しい罰が待っているだろう」
キムートは生涯幽閉ではなく、近日中に処刑が決まっている。
魔術師は、王城魔術師達の魔道具の実験台を一通りさせられ、サンジカラの件でラッカルへ送られ厳しく処罰されるらしい。
魔術師の処罰って大抵は、魔力をへとへとになるまで使って、回復薬や修繕とかに回るんだ。
ラッカルの魔術師軍団はとても強力で、その人達が作り上げた枷を付けられ、最後まで民の為スイレン神の為に祈りを捧げるみたい。
逃げようにも逃げられないし、最後は神への祈りが心の支えになるんだとか。
心を入れ替え、ラッカルの神父やらに可愛がられる囚人もいるみたいだけど…。
ラッカルって結構性に奔放なんだよねー。
神と結婚してる様なもんだから、結婚してなくてもエッチな事バンバンしちゃうの。
挿入もオッケーだし。
処刑される訳でもないし、周りは囚人だらけだけど、厳しい規律の中で生活するから嫌がらせも殆ど無いし、マッチョに性的に可愛がられるって処刑されるよりはよっぽど良いとは思う。
そう思いつつ、国民が納得した雰囲気になると、次は俺達の番だ。
さて、行きますか。
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