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85 推しと甘いデート
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アイール伯爵家のカフェに到着すると、ケイク一同に迎えられそのまま豪華な個室へ通された。
流行りのカフェだからか、沢山の貴族も利用しており注目の的だ。
テオがとても大切そうに俺をエスコートしてくれるから、嫉妬や羨望の目も気持ち良いや。
「本日のおすすめは、柑橘のムースケーキとチーズケーキでございます。軽食に爽やかなレモンチーズを使用したサンドウィッチもございます。そしてこちらのセットは、甘味と軽食が数種類、少しずつ提供されるものです」
「ふむ。ではこちらのセットを二つ頼む。私は葡萄酒を。ギルは?」
「私はミントのお茶を」
テオが注文してくれたのは、アフタヌーンティーのセットの様なもの。
ケーキが数種類とサンドウィッチやフルーツ、ハムやチーズといった塩味やパンなどが段になって運ばれてくる。
これも俺が提案し、少しずつ沢山の種類を食べれると好評なのだ。
「こちらもギルの考案なのか。確かに少しずつなら多くを楽しめるし、食べやすい。特に女性は好きそうだな。このスタイルも帝国へ広めていこう」
「ふふ。帝国でデートする時が楽しみだな」
テオに褒められて上機嫌になっていると、外の騒がしくなっている。
二人で席を立ち窓の外を見ると、人々が花弁を撒いたりして、音楽隊や踊り子達が盛り上がっている。
「何かの祭りか?」
「お披露目前のパレードの様なものだよ。正式な発表は無くても、祝い事だと伝えてあるから、お祝いムードなんだ。こう言った機会は、音楽隊や踊り子達のお披露目の場でもあるからね」
「なるほど」
こうやって貴族街を練り歩いて、目に留めてもらう目的もあるのだ。
見目麗しい踊り子や、素晴らしい演奏の音楽家は飲食店でも人気だからね。
平民向けの所もあるけど、貴族向けの方がお金も待遇も良いから。
「…何故この店の前だけ長く留まっているんだ?」
「貴族に流行りの店だからかな。それか俺達が来ているのを知っているのかも。魔術でこちらは見えない様にしているけど」
俺達がデートを楽しんでいる情報は、思ったより早く広まっている様だ。
隣国の皇族だし、繋がりが欲しい人は多いだろうからね。
お手振りでもするのかと思いったら、テオは興味が無い様で俺をエスコートして席に着く。
そこへ給仕達が軽食をセットしてくれる。
「今はギルとのデートだからな。踊り子や音楽隊を楽しむ気分ではない」
「同じ意見だよ。今はテオとのデートを楽しみたい。このレモンチーズは爽やかでおすすめだよ」
給仕達は静かに礼をして部屋を出て行く。
俺達のやり取りで察してくれた様で、ケイクが指示を出しパレードは店の前を通り過ぎて行った。
少しくらい留まるのは問題無いけど、長時間は周りにも迷惑が掛かるからね。
「顔くらい出した方が良かったか?」
「ううん。この先に広場があって、本来はそこで披露するんだ。長時間いても問題は無いし、そちらの方が目に留めて貰えるからね。パレードをして注目して貰ってから、広場に誘導するのが本来の筋だから、気にしなくて良いよ。テオが出てしまったら更に長時間留まったかもしれないから」
「ふむ。ギルは見に行きたいか?」
確かに賑やかな音楽や踊りは見ていて楽しいけど、俺の場合は気分が乗らない時は本当に乗らないから必要ないんだよね。
「うーん。どちらかと言うと明日が本番だから、俺は見るならそちらかな。テオが見たいのなら、こっそり馬車で通る?魔術でバレない様に通ればスムーズに行けるよ。広場をぐるりと貴族の馬車が通って催しを眺めるんだ。こういった催しが好きな貴族は何周もしていたりして、人気のデートコースなんだ」
広場をぐるりと囲んだ道は、こういった催しの時は貴族馬車専用の道になる。
音楽隊や踊り子達を、馬車の中から眺めるデートも人気だったりするのだ。
「ほう?それでは仕立て屋へ行く前に少しだけ見てみよう。この国のデートコースの様だしな」
デートと言う言葉に、テオは上機嫌になる。
本当に俺とのデートを楽しんでいてくれる様だ。
「このレモンチーズと、スモークされた魚のサンドウィッチは絶品だな」
「喜んで貰えて良かった。今度、このレモンのお酒が出来ないか考えているの。レモルトの名産にならないかな?」
「それは良いな。爽やかな香りだから食事にも合いそうだ。レモルトの名産を考えてくれて嬉しいよ。二人で開発していこう」
「うん!」
テオに優しく手を握られながら、二人で軽食を楽しむ。
その後正体が分からない様にと馬車に魔術を掛け、音楽隊や踊り子を軽く見ると、次の目的地へ向かう事にした。
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