転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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78 推しと王子の回復

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昨日帰宅してから事の顛末をお祖父様に報告すると、お祖父様は頭を抱えてしまった。

「…ギルの魔力を隠し通す方が無理な話だったな。明日は私も登城し、ギルの安全性を訴えよう」

大袈裟じゃないかと思ったが、父様も黙って頷いていたのでやりすぎてしまったと反省する。

「王室使えの魔術師も断ったからな。害が無いとアピールはしなくてはならない。…まさか魔術を簡単に弾き飛ばしてしまうとは」

あ、やっぱりアレって普通は出来ないんだ。

俺の中では、邪魔な虫を薙ぎ払うみたいな感じなんだけど、本来は術式を解読してそれに合った魔術をぶつけて消し合うらしい。

俺の魔術は、術式を完全無視してパワーで消し去ってる感じなんだって。

習った気はするけど、面倒だからパワーで潰す方を鍛えたんだよね。

父様とお祖父様に軽くお説教をされ、一家で早めに登城する。

すぐさま陛下からのお呼び出しが一家に掛かり、リーナイト家と合流して謁見の間へ向う。

陛下とオール殿下が揃っているが、難しい顔をしている。

「早くにすまない。ニルケスが早朝に到着したのだが、やはり魔術が掛けられており、思った以上に強力であった。キムートの所の魔術師を尋問した所、力が強い者に掛けると日に日に自ら魔術を強くしてしまうモノで、ここまで年数が経っている為あやつでも解くことは出来ないと言われた。現在城の魔術師達とテオドール殿下が尽力してくれているが…。ギル、協力して欲しい」

何て最悪な魔術を掛けてんだ。

コンヌル公爵家はそんなに鍛えてたり戦ったりする貴族じゃ無いから、そこまで魔術が強くはならなかったんだろう。

しかし、ニルケス殿下は自分で鍛えて他国で戦って来たから、魔術も強くなってしまったんだな。

「全力を尽くします」

面白い。

俺がぶっ飛ばしてやる。

お祖父様を見ると、力強く頷いてくれる。

俺は一人で案内をしてくれる騎士に着いて行く。

案内された先は、ニルケス殿下が昔使用していた私室で、今現在はベッドに横になっているという。

「ギル。思った以上に魔術が強く掛かってしまっている。魔術師の方々も尽力し、今現在は少し回復してきたのだが」

俺を見つけたテオの額にも、汗が浮かんでいる。

サーガルド伯爵は高齢だが魔力が強く、今も必死でニルケス殿下に向き合っている。

「…一度試してみても?」

俺が声を掛けると、他の魔術師の方がサーガルド伯爵に休憩を取らせてくれる。

ニルケス殿下を初めて見たけど、こりゃまたイケメンだ!

テオとパーティーを組んでいただけはある位、がっしりとしており、顔は妾妃様似で綺麗だが男らしいイケメンだ。

そう言えば妾妃様は男性だったな。

黒い髪と、今は目を閉じてしまっているが黒い瞳だと聞くから、魔力も高いのだろう。

少し様子を伺うと、確かに公爵家とは非にならない魔術が掛かっていた。

でもこれ位ならいけるかな?

俺が魔術を吹っ飛ばして、こちらに返ってこないかを確認し、両手をニルケス殿下に向ける。

「テオドール殿下、皆様、少し下がっておいてください」

「分かった。無理はしないでくれ」

皆が下がったのを確認してから、ニルケス殿下の体を俺の魔術で囲う。

そして、一気に魔術を吹き飛ばす。

バンッッッ!!!

結構な爆発音がし、少し部屋が揺れちゃったけど、何とが魔術は吹き飛ばす事が出来た。

肩で息をするフリをしつつ、回復魔法も掛けとこっと。

さて、ここから俺の演技力の見せ所だな。

「テオ…」

「ギル!!」

ふらりとヨロけて見せて、テオの逞しい胸に縋る。

周りの魔術師達も、こちらを伺っている。

「…皆様が魔術を綻ばしてくださっていたので、力を送って吹き飛ばす事に成功しました。ですが、少し力を使い過ぎてしまいました…」

テオに体を預けつつ、しおらしく言うと、急いでサーガルド伯爵がニルケス殿下の容態を確認する。

俺はテオに支えられつつ、ニルケス殿下が起き上がるのを見ていた。

「うう…。サーガルド?」

「おお、ニルケス殿下…!お身体は大丈夫ですか?」

あ、やっぱり瞳も黒かったね。

ニルケス殿下がテオに気が付くと、テオが事の顛末を説明する。

「…ああ。何と言う事だ…。私は王家のみならず、コンヌル公爵家にも大変迷惑を掛けてしまった」

いや確かに、十歳のヨンジと逢瀬を繰り返すのは良く無かったけどさ。

でも周りも黙認してたんだから、今更だと思うんだよね。

そう思っていると、連絡を受けたであろう陛下と、前王が部屋にやって来た。

「父上。兄上。ご迷惑をお掛けしました」

ヨタヨタとベッドから這い出て、ニルケス殿下は膝を付く。

「おお、ニルケス…」

前王ったら、やっぱり最愛の妾妃そっくりのニルケス殿下には甘かったんだろうな。

涙目になってるもん。

陛下は些か複雑そうな顔をしているけど、ニルケス殿下に色んな魔術が掛けられていた事も理解しているから、必要以上に責めたりはしないだろう。

ニルケス殿下が妾妃の息子であり、負い目があったのも関係してるしね。

とりあえず、王族の話し合いだろうから俺達は席を外し、レッドドラゴンリーフの治験へ移る。

今回の騒動も、そろそろ落ち着いてくれそうだな。


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