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76 推し達と決断
しおりを挟むコンヌル公爵一家と揃って登城し、俺は一旦テオに会いに行く許可を貰う。
「ギル。どうしたんだ?」
「テオ、あのね…」
先程の事を簡単に話すと、テオも話に参加してくれると言った。
テオならニルケス殿下とも連絡取れそうだし。
ケンとユウリの姿が見えないけど、何かあったのかな?
俺がテオを連れて行くと、オール殿下やシェル様と父様達も揃っていた。
父様達が居たのは、ターン殿下の回復が思った以上だったみたいで、陛下から労われていたみたい。
広めの謁見の間に、コンヌル公爵達の体調も考慮し、椅子が用意されていた。
「先日リーナイト公爵やセルジオから報告が来ていた件と、今回オールより報告のあった件が繋がっている様だな。そして、弟であるニルケスも関わっていると。先程キムート子爵も捕えられ尋問を受け洗いざらい話した。コンヌル公爵。何があったか話してくれ」
「はい」
コンヌル公爵は、ヨンジを見つめ、ヨンジが覚悟を決めた様に深く頷いたのを確認すると、今回の顛末を話し始めた。
キムートとコンヌル公爵の話はこうだ。
元々、キムート子爵の狙いは今は亡きコンヌル公爵夫人だった。
コリーヌ母様も狙っていたが、相手が屈強な辺境伯爵だし遠くに行ったから、近くにいるコンヌル公爵夫人に思いを寄せていたんだと。
しかし、あっさり公爵家へ嫁がれてしまい、勝手にコンヌル公爵を恨んでいたと。
次にその夫人に良く似た、昔から美しかったヨンジに、小さい頃から手を出したかった様だが、先にニルケス殿下と良い仲になってしまったのが面白くなく、邪魔をしようとしていたらしい。
そんな時、お忍びで観劇に来た二人を見て、キムートは子飼いしている流れの魔術師に術を掛けさせたと言う。
優秀な魔術師だったから、結構大きな気持ちになってたみたい。
そんな強い魔術師では無いかと思ったけど、結構実力があったんだね。
「…ひどい幻覚魔術だった様です。二人には何も不純な事は無かったと言うのに、二人は幻覚を信じてしまいました。ヨンジは心を病んでしまい、ニルケス殿下は国を出られてしまいました」
その後、ヨンジを心配したコンヌル公爵に魔術師が忍び寄り、公爵家を乗っ取ったみたい。
「幸い、ヨンジにはニルケス殿下が去る際、強い加護の指輪を頂いていました。その為ヨンジ自体に危害を加える事は出来なかったのでしょう。しかし、心を病み魔術に蝕まれ、オール殿下やリーカイ様にご迷惑を…」
キムートはヨンジに手を出すつもりだったが、ニルケス殿下の渡した指輪は強力だったんだろう。
陛下が指輪と聞いて反応していたので、もしかしなくても国宝レベルのモノなんじゃ。
キムートは、その後なんとかヨンジに手を出そうと試みつつ、お金儲けもしたかったみたいで、公爵家のお金を使いながら自分の劇団を大きくしていった。
良い役者達を集め、自分の好きな物語に自分を重ねて上演するのが楽しくなったみたいで、そちらに力を入れ始めたと言う。
モテない男がいつの間にかモテモテな話はあまりウケなかったみたいだが、令嬢達のお芝居はウケたみたいで、そっちの路線に走ったようだ。
意中の方々には全く相手にされなかったが、自分の芝居のファンだという令嬢達が周りに集まり、さながらハーレムの様になったのもキムートを思い上がらせたみたい。
「捕らえた魔術師は、サンジカラに仕えていた腕利きだった様だが、ギルにやられてがっくり来ていた。ギルはどの様な魔術を掛けたのだ?」
「相手の魔術を弾き飛ばしただけです。特に他の魔術は掛けていません」
急に陛下に話しかけられ、ついつい本当の事を話してしまう。
何だその魔術と言う顔で、城の魔術師の方々が見ている。
もしかして、魔術をパンパン弾き飛ばすのって、普通じゃ無かったのかな。
「ふむ。今は自信喪失しているのか。公爵家を我々に分からぬ様に長年操っていた男だ。屋敷にて集めた魔道具も、中々手が込んだモノだったな。油断ならない相手だ。強い術封じの枷はそのままに、追加した方が良いだろう。サーガルド。お主達が開発した術封じの器具を好きに使ってくれ」
「かしこまりました。ありがとうございます」
ありがとうございますって、それ実験体なんじゃね?
あの魔術師大変だね。
ま、長年コンヌル公爵家を苦しめたんだから、即極刑もおかしく無いんだし、まだ人間的な生活は出来るんじゃないかな。
それより幼い容姿に見えたけど、結構歳なんだな。
「陛下。私の不手際でもあります。どうか、私にも処罰を」
コンヌル公爵の言葉に、陛下は首を振る。
「いや、ニルケスが関わっている以上王家の不手際でもある。すぐにニルケスを帰国させよう。コンヌル公爵はしっかり体を休めてくれ。ヨンジ、そしてニージ。二人にも長い間術が掛かっていたのだろう。体に不調は無いか?」
陛下の言葉に、兄弟はありがたいお言葉ですと返す。
「先程ギル殿に回復魔術を掛けて頂きましたし、薬湯も頂きました。ずっと長い間頭に白いモヤが掛かっていたのが、すっかり晴れ渡り、ようやく落ち着きました」
ニージの言葉に頭を下げておく。
顔つきは父親似だか、こちらも綺麗な青年だ。
その時、言いにくそうにテオが話に入って来た。
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