転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
76 / 247

74 推しと怪しい魔術

しおりを挟む

三日目の治験が終わり、昨日コンヌル家にセルジオ様が出した招待状により、ヨンジは一人の執事を伴ってアイール伯爵家のカフェにやって来た。

「…お招きありがとうございます。コンヌル公爵家、ヨンジです」

何だこの美青年は!!

え!?年上!?

ジェレミー兄様には負けるけど、とても美しい容姿で、ふわふわな金髪と、白い肌に桃色の頬に赤い唇に、緑の瞳。

ニルケス殿下ったら面食い!

心の中でフンスフンスしながらも、俺達は簡単に挨拶を済ませて個室に入る。

「失礼ですが、私もご一緒してもよろしいでしょうか」

執事の男がそう言うが、お前さっきから変な魔術使ってんな。

ヨンジは視線が合わず、ふわふわした感じだから、もしかしなくてもコイツなんだろうな。

「…どうぞ。その前に、解かして頂きますね」

にっこり笑顔で言うと、パンッと音が鳴る。

「え、へ、あ…あの…」

どうやら流れの魔術師の様だね。

その程度の力で俺を騙せるとでも?

執事が慌て出した所で、強力な魔封じの枷を取り付け、変装を解くと意外と可愛い青年だ。

黒髪黒目で、白い肌に少しそばかすがあるが、幼さを残す風貌で何でキムートに使えてたんだろう。

控えていた王室からの騎士達が彼を捕らえて行く。

「ヨンジ殿。あなたに掛けられている魔術を今解きますからね」

「あっ…。あれ。…私は…?」

ふらつくヨンジをリーカイ様が優しくソファーに座らせる。

「ヨンジ殿。大丈夫ですか?私が分かりますか?」

「…リーカイ殿??どうしてここに??」

ふわふわした感じで、まだ理解が出来ていない様だ。

それでも先程と違って焦点は合っていて、瞳は不安で揺れている。

え~怯えてるお顔も可愛い~。

いけないいけない。

今日は俺がフンスフンスする日じゃ無い。

俺が自分を叱咤している間に、セルジオ様とリーカイ様が、ヨンジに説明をしていた。

少しずつ覚醒してきた様で、ヨンジは自分の行いを恥じて泣き始める。

リーカイ様が優しく背中を摩っている。

「どうして…。私は…」

「どうやら、長い間術を掛けられていた様です。先程の執事は?」

「…確か、キムート子爵の知り合いの…。それ以上は覚えていません…」

おっとキムートてめーか!!

こりゃ、公爵家も危ないぞ?

俺がチラリとセルジオ様を見ると、セルジオ様は大きく頷いた。

そして、すぐに控えていた騎士に指示を出す。

「…最近コンヌル公爵家が出資している所が、関係しているのかもしれんな」

ありえるね。

息子を不安定にし、その隙を狙って潜り込む。

ついでにちょっと王室へ嫌がらせして、他の公爵家にも嫌がらせしてって感じかね。

つまり、俺のジェレミー兄様を悪く言った奴らの根源もそれだね!

「セルジオ様。私もヨンジ殿とコンヌル公爵家へ向かいましょう。私ならおかしな術は全て消し去れます」

叩き潰す所存です!!

俺の笑顔に、セルジオ様がちょっと引いてる。

ジェレミー兄様はニコニコしてくれてるのに。

とりあえずヨンジが落ち着く様にと、アイール家の自慢のケーキでお茶をする。

ヨンジは、少しずつ回復している様で、ポツポツと話始める。

「ニルケス様は、私が十の時に私を見初めてくださったんです」

おっと思ったより幼い。

ニルケス犯罪者!!

「…何か、ニルケス殿下に不貞な事を?」

セルジオ様の言葉に、ヨンジは首を振る。

「いいえ。ありません。今はっきりと思い出しました。私とニルケス様は不純な行為はありませんでした」

お?ニルケス殿下やったんじゃなかったん?

そう思っていると、ヨンジは昔を思い出しながら話をする。

「…幼い私と二人で会うのは問題だったのかもしれません。それでも、こっそりお茶を楽しんだり、お芝居を見に行っていた位です。その時に、劇団を取り仕切る貴族が接触して来ました」

ん、キムートだな。

もしかして、二人とも術を掛けられてしまったんじゃ?

俺がそう思ってセルジオ様を見ると、セルジオ様も頷いていた。

「その後は、私は幼い為にショックを受けてしまいました。本当は何もされていないと言うのに。私が心を病んで、術を掛けられてしまっているうちに。…ニルケス様にお返事をする前に、ニルケス様は国を出られてしまいました」

さめざめと泣くヨンジに、同情的な空気が流れる。

皆お相手が居るから、同じ様な目に遭ったら本当に辛いと思う。

俺もショックで暴れてしまうだろうし。

街の一つくらい壊すし!

「ヨンジ殿。今、帝国から皇帝弟殿下のテオドール殿下がいらしています。お願いしてニルケス殿下に一度帰国して頂きましょう!テオドール殿下の口添えならすぐに動いて頂けると思います」

俺の提案に、ヨンジは驚いていたが、周りは賛同してくれる。

そうそう、使えるモノは使わなくっちゃだよね!

「とりあえず、落ち着いたらコンヌル公爵家へ向かい、術が掛かっていたらすべて消しましょう。セルジオ様とジェレミー兄様とリーカイ様は王城へ報告をお願いします」

俺は一人でも平気だから告げると、ジェレミー兄様が心配そうな顔をする。

「ギル。心配だから私も行きます」

「悪いヤツしかやり過ぎません!」

その言葉に、セルジオ様が外の騎士に数名指示を出していた。

結局ジェレミー兄様も、俺だけだと別の意味で不安だから付いてくるって。

解せぬ。




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...