転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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70 推しと偽ヒロイン達

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食事を終えた俺達は、またも注目を集めながらレストランの外へ向かう。

途中で同じ様に食事を終えたハイリ嬢達にも挨拶をし、揃って店を出る。

既に到着している公爵家の馬車に、セルジオ様が満面の笑みで、ジェレミー兄様を恭しくエスコートしながら乗り込んだ。

「少し近くの馬車置き場で待機してください」

セルジオ様にこっそり告げ、馬車は走り出す。

ハイリ嬢達はデートと家が近い事もあり、歩いて来ているようだ。

「あら?ギル様も歩きですの?」

「いえ、今から悪い虫を懲らしめるんですよ」

俺がニッコリと笑顔で言い、先程の話を説明すると、ハイリ嬢とケイクは面白そうだねと俺に付き合ってくれる。

そこに、慌てた様にキムート達が現れた。

きっとリーナイト家の馬車を監視していたのだろうが、俺の目眩しに騙されたのだろう。

既に近くに馬車は居ないし、馬車置き場でも彼らには見分けが付かないはずだ。

「例の、最近評判の悪い子爵と取り巻きの令嬢達だね。このレストランやうちの洋菓子店は既に出入りを断っているよ」

ケイクの耳打ちに、素晴らしい判断ですと告げる。

「彼女達は劇場で拝見した事がありますわ。随分通い詰めているそうですわよ。役者はよろしかったですけど、私にはあの話は現実味が無さ過ぎて。一度で結構でしたのに」

ハイリ嬢の辛辣なコメントに、さすがですと頷く。

レストランの出入り口から少し離れつつ、俺とハイリ嬢達が会話をしていると、レストランを出た貴族も挨拶に来てくれ、少し人だかりができる。

皆、俺の開発を褒めてくれ、取り敢えず謙遜しつつ礼を言い、会話を楽しむフリをしておく。

そこに、焦った様に令嬢達が近付いて来た。

「ちょっと!セルジオ様は何処に!?」

いきなりの失礼な言葉に、俺もだが周りの方々の眉が顰められる。

時代遅れのフリフリの黄色が目に痛いドレスと真っ赤なハイヒール、クリックリに巻き過ぎてもはや爆発でもしたのかという茶色髪と、埋もれている黄色いリボンが痛々しい令嬢だ。

顔の作りは普通だが、メイクが悪いのか服装が悪いのか、性格が悪いのか全てが悪いのか、悪い意味で目立つな。

「…どちら様でしょう」

俺が少し冷たく聞くと、カッと顔を赤くしていたが、いやまずは名乗れよ礼儀知らずが。

「わ、私、あなたのせいで留年になってしまったメーデフの姉のダリョよ!」

家名も名乗れないのかこの女は。

呆れつつも、俺へのを訂正しておく。

「随分失礼ですね。弟君が留年したのは度重なる素行の悪さが原因でしょう?ナートラ先生やその他の先生。そして王城からもしっかり注意を受けたはずですが、コンダック伯爵家は理解も出来ていないのですか?周りの方々はしっかり理解できていると言うのに。嘆かわしい」

俺が言うと、周りの方々はうんうんと頷いていた。

王城での痴態は、結構な目撃者が居るからね。

「で、でも。弟はただ挨拶に…」

「許可も取らずに公爵家の控室に押し寄せるなど、挨拶とは言いませんよ。コンダック家は許可も取らずに目上の方の所へ、ズカズカと押し寄せるのですか?さすがに礼儀知らずにも程が…」

困った様に言い淀んでやると、周りは信じられないと言う目でダリョを見ていた。

「わ、私とセルジオ様は特別な関係なんですわ!運命なんですの!」

遂に変な事を口走るダリョに、俺は頭の中で拳を鳴らす。

お?

俺のジェレミー兄様に喧嘩売ったな?

買ったるわ。

「ご冗談も程々にして欲しいですね。私の兄。そしてセルジオ様への侮辱ですか?運命?最近流行っていると言う、現実離れしたお話のヒロインにでもなったおつもりで?」

俺がそう言いつつ、後ろで事態を見ているキムートに冷たい視線を送ると、ビクッとする。

「な、何を言っているの!私はセルジオ様に見初められて、選ばれるのよ!きっと宝石も送ってくださるし、お食事だって誘ってくださるのよ!」

おー、ご病気でしょうか。

周りの貴族の方々も、呆れて冷たい視線を送っていると言うのに。

「見初められて選ばれたのは兄ですが…。揃いのモノが欲しいと、セルジオ様に宝飾品を贈られたのも兄ですし、評判のレストランに一緒にと誘われたのも兄です」

俺がそう言うと、ダリョはショックを受けた顔をしていたが、俺の周りの貴族令嬢達は贈り物はなんだろうと騒ぎ出す。

それを感じ、ハイリ嬢とケイクが話に乗ってくれる。

「まぁ!最近指輪以外も、お相手の方と揃いのモノを持つのが流行っているとは聞きましたわ。確かにお二人で素敵なバングルをされていたわね。素敵だわ~」

「はい、兄は十分過ぎるほど贈り物を頂いているのでと遠慮したのですが、セルジオ様が揃いのモノが欲しいとおっしゃって。お互いの瞳の色の宝石を使って作られていました。離れていても、相手を感じられる様にと」

「セルジオ様は、本当にジェレミー殿を愛されているんだね。私もハイリに何か贈りたいな」

「あら、嬉しいですわ」

セルジオ様のジェレミー兄様への溺愛を広めつつ、ハイリ嬢達が仲の良い婚約者達の会話をしてくれるので、周りにもこれが最近の仲の良い婚約者同士だとアピールする。

「素敵ね~。セルジオ様は浮いた話は無かったですし、昨日のパーティーまでジェレミー様を隠していたくらい溺愛しているって本当なのね」

「そうそう!ダンスパーティーでも、ご家族以外には踊らせない様に徹底されていたわ」

少しずつ人だかりが出来始め、何事かと話が広がっていく。

そして、ダリョ達への冷たい視線が増えていく。





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